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23、城の中で
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「くそが! あの野郎、ふざけるんじゃねえよ!」
その頃、ラルファスト王国の城の中では玲児がそう叫んで部屋の壁を蹴り飛ばしていた。
激しい激突音がして壁の一部が崩れ落ちる。
「佐倉木の野郎、前から気に入らなかったんだ。下級庶民のクズのくせに、選ばれたこの俺たちに意見なんてしやがって! 何様だと思ってやがる!!」
気に入らない奴は平気で苛め抜く。
クラスの、いや学園の絶対的な支配者。
彼らの親を恐れて教師さえもその行動に目を瞑ってきた。
そんな中で唯一彼らに逆らったことがあるのが裕樹だ。
「許さねえ……」
玲児はそう言って首筋を押さえた。
疾風迅雷を放った瞬間に、逆に蹴り飛ばされ惨めに失神させられた。
その時のことを思い出し怒りに震える。
すべては自らが招いたことなのだが、そんなことは振り返ることもなく傲慢な顔が裕樹への怒りに燃えていた。
「あんな奴が俺より強いなんてことがあっちゃいけねえんだよ! そうだろうが、光一、結衣!!」
今、彼らは勇者たちの為に用意された部屋の一つにいる。
結衣は玲児の言葉を聞いて爪を噛んだ。
「そうよ、あいつのせいで昨日は眠れなかったわ! この私に剣を突き付けて、あんな奴が私の体に傷をつけたのよ!!」
自慢の美貌が怒りに歪んでいる。
傷などと言っているが、裕樹が首もとに剣を突き付けた時に僅かに触れた浅い傷で、もうとっくに治っている。
だが、彼女の肥大した自尊心がそれを許さないのだろう。
(許さない、あんな奴がこの私に! 誰よりも美しい私を傷つけるなんて!)
確かにその美貌は際立っているが、高慢さに満ちている。
裕樹への理不尽ともいえる怒りに眠れなかった玲児と結衣。
結衣は部屋に用意されたステータスを映し出す水晶を眺める。
そして、唇を噛んだ。
そこには結衣のステータスが映し出されていた。
名前:麻宮星結衣
種族:人間
レベル:レベル1262
職業:聖女
力:871
体力:935
魔力:2278
速さ:1527
器用さ:1621
集中力:2175
幸運:1532
魔法:全属性Sランク
物理スキル:杖技Sランク
特殊魔法:魔力増加
特殊スキル:限界突破
ユニークスキル:【裁きの雷】
称号:召喚されし勇者
力や体力は二人に劣るが、魔力や集中力はこのレベルにして二千を超えている。
それを見て苛立ったように言う。
「見て、私は聖女よ? 召喚された勇者に相応しいわ! あのクズなんて職業すらなかったじゃない。あんな奴に聖女として崇められるべきこの私が、恥をかかされるなんてあっていいはずがないのよ!」
その横には玲児と光一のステータスも描き出されている。
名前:獅童院玲児
種族:人間
レベル:レベル1257
職業:勇者
力:1927
体力:1871
魔力:981
速さ:1872
器用さ:1653
集中力:1582
幸運:1432
魔法:なし
物理スキル:格闘技S
特殊魔法:全身強化
特殊スキル:限界突破
ユニークスキル:【疾風迅雷】
称号:召喚されし勇者
名前:美堂崎光一
種族:人間
レベル:レベル1278
職業:勇者
力:1827
体力:1631
魔力:1178
速さ:1772
器用さ:1752
集中力:1532
幸運:1527
魔法:全属性Aランク
物理スキル:剣技Sランク、槍技Sランク
特殊魔法:武器強化魔
特殊スキル:限界突破
ユニークスキル:【光の剣】
称号:召喚されし勇者
それを見て結衣は言った。
「聖女に相応しい私と、勇者が二人。あんな奴に負けるはずがないのよ! そうでしょ? 光一」
今まで黙っていた光一は、自分たちのステータスを眺めながら静かに口を開く。
「……当たり前だ」
その口調は静かだが、瞳には二人以上の怒りと憎悪が満ちているのが分かる。
裕樹に手した剣を弾き飛ばされあっけなく敗北した時のことを思い出す。
(この俺があんな奴に負けただと? そんなことがあるはずがない。選ばれた美堂崎家の跡取りであるこの俺が)
美堂崎家といえば政界でも名門中の名門だ。
将来を約束されたその家の跡取り。
そのプライドが、敗北を受け入れることを拒絶する。
「あいつは勇者でも何でもない。只のクズだ。あんな下らないスキルしか持ってない奴に、俺が負けるはずがない。絶対にな! それを直ぐに思い知らせてやる」
光一のその言葉に結衣は問いかける。
「どうするつもりなの? 光一」
結衣の問いに光一は答えた。
「簡単な話だ、俺たちのレベルを上げる。高レベルの勇者になってしまえば、あんなつまらないスキル一つしか持っていない奴なんて俺たちの敵じゃない。そうだろ?」
その言葉に玲児と結衣は頷いた。
「ああ、当たり前だ! 無職でくだらないスキル一つだけしかないクズ。こちらのレベルが上がっていけば俺たちの敵じゃないぜ!」
「当然よ。でも、どうやって? こんな恥をかかされたまま、いつまでも黙っているのは嫌よ! 少しでも早くレベルを上げて、早くあいつを始末してやりたいわ!!」
その時、部屋の扉が開かれて多くの侍女や魔導士、そして騎士たちを引き連れた国王が入ってくる。
そして満足そうに笑みを浮かべると結衣たちに言う。
「勇者殿たちの勇ましいお言葉、部屋の外まで響いてまいりましたぞ。どうやら、我がラルファスト王国の勇者としてさらにお力をつけていただくご決心が出来たようですな」
それを聞いて光一は大きく頷く。
「ああ、俺たちの力をあいつに思い知らせてやる。レベルさえ上げてしまえば、あんな能無し俺の敵じゃないはずだ」
「もちろんですとも、コウイチ殿! 貴方がたが勇者に相応しい力さえ手にしてしまえばあのようなクズ、相手にもなりますまい」
傲慢な国王の言葉に、周囲の魔導士や騎士たちも大きく頷く。
玲児と結衣は国王に言った。
「当然だ。俺たちがあいつに負けるはずがねえ。あちらの世界でも、こちらの世界でもな!」
「でも、あまり時間がかかる方法はお断りよ? あいつを早く私の前にひざまずかせてやらないとこっちの気が済まないのよ! 必要なら魔族だろうが魔王だろうが先に片づけてあげるわ!」
国王はそれを聞いて笑みを浮かべた。
「これは勇ましいことですな、ユイ殿。ですが、それならば魔族と戦うよりもいい方法がありますぞ」
「いい方法?」
問い返す結衣に国王は答えた。
「ふふ、実に良い方法でしてな。初めから勇者殿たちにはまずはそれをやっていただきたかったのですが。丁度いい、お話するとしましょう」
国王はそう言うと傲慢な笑みを浮かべた。
その表情はとても民の為に魔王を倒そうという男の表情とは思えない。
光一はそんな国王の姿を眺めながら口を開いた。
「まずはやって欲しかったことだと? いいだろう、教えてもらおうか。その方法とやらもな。あいつがクズで、俺たちが勇者であることを証明してやろう」
その頃、ラルファスト王国の城の中では玲児がそう叫んで部屋の壁を蹴り飛ばしていた。
激しい激突音がして壁の一部が崩れ落ちる。
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気に入らない奴は平気で苛め抜く。
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「許さねえ……」
玲児はそう言って首筋を押さえた。
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その時のことを思い出し怒りに震える。
すべては自らが招いたことなのだが、そんなことは振り返ることもなく傲慢な顔が裕樹への怒りに燃えていた。
「あんな奴が俺より強いなんてことがあっちゃいけねえんだよ! そうだろうが、光一、結衣!!」
今、彼らは勇者たちの為に用意された部屋の一つにいる。
結衣は玲児の言葉を聞いて爪を噛んだ。
「そうよ、あいつのせいで昨日は眠れなかったわ! この私に剣を突き付けて、あんな奴が私の体に傷をつけたのよ!!」
自慢の美貌が怒りに歪んでいる。
傷などと言っているが、裕樹が首もとに剣を突き付けた時に僅かに触れた浅い傷で、もうとっくに治っている。
だが、彼女の肥大した自尊心がそれを許さないのだろう。
(許さない、あんな奴がこの私に! 誰よりも美しい私を傷つけるなんて!)
確かにその美貌は際立っているが、高慢さに満ちている。
裕樹への理不尽ともいえる怒りに眠れなかった玲児と結衣。
結衣は部屋に用意されたステータスを映し出す水晶を眺める。
そして、唇を噛んだ。
そこには結衣のステータスが映し出されていた。
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称号:召喚されし勇者
力や体力は二人に劣るが、魔力や集中力はこのレベルにして二千を超えている。
それを見て苛立ったように言う。
「見て、私は聖女よ? 召喚された勇者に相応しいわ! あのクズなんて職業すらなかったじゃない。あんな奴に聖女として崇められるべきこの私が、恥をかかされるなんてあっていいはずがないのよ!」
その横には玲児と光一のステータスも描き出されている。
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魔力:981
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魔法:なし
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称号:召喚されし勇者
名前:美堂崎光一
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職業:勇者
力:1827
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「……当たり前だ」
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「あいつは勇者でも何でもない。只のクズだ。あんな下らないスキルしか持ってない奴に、俺が負けるはずがない。絶対にな! それを直ぐに思い知らせてやる」
光一のその言葉に結衣は問いかける。
「どうするつもりなの? 光一」
結衣の問いに光一は答えた。
「簡単な話だ、俺たちのレベルを上げる。高レベルの勇者になってしまえば、あんなつまらないスキル一つしか持っていない奴なんて俺たちの敵じゃない。そうだろ?」
その言葉に玲児と結衣は頷いた。
「ああ、当たり前だ! 無職でくだらないスキル一つだけしかないクズ。こちらのレベルが上がっていけば俺たちの敵じゃないぜ!」
「当然よ。でも、どうやって? こんな恥をかかされたまま、いつまでも黙っているのは嫌よ! 少しでも早くレベルを上げて、早くあいつを始末してやりたいわ!!」
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そして満足そうに笑みを浮かべると結衣たちに言う。
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それを聞いて光一は大きく頷く。
「ああ、俺たちの力をあいつに思い知らせてやる。レベルさえ上げてしまえば、あんな能無し俺の敵じゃないはずだ」
「もちろんですとも、コウイチ殿! 貴方がたが勇者に相応しい力さえ手にしてしまえばあのようなクズ、相手にもなりますまい」
傲慢な国王の言葉に、周囲の魔導士や騎士たちも大きく頷く。
玲児と結衣は国王に言った。
「当然だ。俺たちがあいつに負けるはずがねえ。あちらの世界でも、こちらの世界でもな!」
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「いい方法?」
問い返す結衣に国王は答えた。
「ふふ、実に良い方法でしてな。初めから勇者殿たちにはまずはそれをやっていただきたかったのですが。丁度いい、お話するとしましょう」
国王はそう言うと傲慢な笑みを浮かべた。
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