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388、フェロルクの守護神
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「その意気さ。さあ、行くよ! みんなのところに」
ジーナの励ましの言葉と共に彼らは、また迷宮の奥へと進み始めた。
ライアンは地下におりるほど広くなり、変わった作りになっていく迷宮を眺めながら肩をすくめる。
「にしても、フェロルクの大迷宮の深層がこんな風になってたなんて驚きましたよ。ジーナ隊長」
「ああ、なんでも古代文明の遺跡らしいけど、私はそんなものに興味ないからね」
シェリルも、猫耳をピンと立てて周囲を見渡している。
「ふにゃ、大迷宮って言われるだけあるにゃ。地上で見るよりも地下のほうが大きく感じるにゃ」
シェリルの言葉にジーナは頷いた。
「ああそうさ、ルイーナから下の迷宮は広い。何か月も白王の薔薇を探しても見つからないのも道理だろう?」
ジーナのその言葉にライアンもシェリルも頷いた。
もちろん、指揮をとっている公爵にその気があるのかは別問題だが。
ジーナはそう思いながらも、仮に国王派が中心になって探したところで易々と見つかるとは思えなかった。
簡単に見つかる物なら、エリスを王宮に呼んで王女としての名乗りを上げさせる必要もないだろう。
ライアンもシェリルもジーナの言葉に同意する。
「こりゃ無理だよな。ここまで馬鹿でかい場所に、たった一輪しか咲いてないっていうんだろ?」
「偶然見つかるのを待つしかないにゃ」
ジーナは肩をすくめると。
「そもそも、ここまでの深層に潜れる冒険者自体が限られている。Sランクっていったって精々80階層どまりの連中も多いからね。60階層から80階層はあらかた調べたんだろうけど、そこから先はね」
(まあ、見つけたところで公爵は陛下には渡さないだろうさ)
万が一、見つかったとしても病床の兄に渡すような男ではない。
ジーナたちはそんな話をしながら迷宮をさらに進んでいく。
彼らの先を進む黄金の蜘蛛。
その小ささゆえにライアンやシェリルは中々その姿を捕らえることが出来ないが、ジーナの目にはハッキリと見えていた。
キーラの精神体から作られているそれが放つ光を、ジーナの第三の瞳が捉えているのだ。
キラキラと輝くジーナの体。
それは彼女の魔力と闘気が昇華された霊気である。
ライアンは思う。
(やっぱジーナ隊長は強ええ。地上ではこれ程とは思わなかったぜ。フェロルクの守護神って呼ばれる理由が分かる)
ジーナは自分を見つめている少年を眺めると首を傾げた。
「どうしたんだいライアン。私の顔に何かついているかい?」
「え? へへ、何でもありませんよ」
シェリルはあきれ顔でライアンに言う。
「ふみゃ、ジーナ隊長はモテるからにゃ。ライアンなんて相手にされないにゃ」
「ば、馬鹿そんなんじゃねえって!」
ジーナは悪戯っぽく笑う。
そして言った。
「ふふ、頑張ってる子は嫌いじゃないよ。私は昔から年下には弱いんだ」
「ま、マジっすか! お、俺頑張ります!!」
張り切って足取りも軽くなるライアン。
シェリルはふぅと溜め息をついた。
「ふみゃ、ライアンお前からかわれてるのが分からないのかにゃ」
二人の会話にジーナは笑う。
年下に弱いのは嘘ではない。
ロイとフィアーナの息子のエフィンを、ジーナは弟のように可愛がっていたからだ。
そして、亡くなったエフィンによく似ている少年を思い出す。
「あの子がどこまで強くなったのか、会うのが楽しみになってきたね」
89階層に降りると、目の前からまた新たな魔物がやってくる。
今までよりも大きなヒュドラに、ライアンとシェリルは思わず後ずさる。
「でけえ……」
「ふにゃ、もう勘弁だにゃ!」
ジーナは右手の剣を構える。
だが、それを静かにおろした。
「た、隊長! どうして剣を!?」
「ふみゃ! こっちにくるにゃ!!」
思わず目をつぶる二人を眺めながらジーナは言った。
「安心しな、あいつはもう死んでるよ。へえ、やるもんだ。これは私の予想以上だね」
ジーナの瞳は、ゆっくりと倒れる魔物向こうからやってくる人影を見つめていた。
ジーナの励ましの言葉と共に彼らは、また迷宮の奥へと進み始めた。
ライアンは地下におりるほど広くなり、変わった作りになっていく迷宮を眺めながら肩をすくめる。
「にしても、フェロルクの大迷宮の深層がこんな風になってたなんて驚きましたよ。ジーナ隊長」
「ああ、なんでも古代文明の遺跡らしいけど、私はそんなものに興味ないからね」
シェリルも、猫耳をピンと立てて周囲を見渡している。
「ふにゃ、大迷宮って言われるだけあるにゃ。地上で見るよりも地下のほうが大きく感じるにゃ」
シェリルの言葉にジーナは頷いた。
「ああそうさ、ルイーナから下の迷宮は広い。何か月も白王の薔薇を探しても見つからないのも道理だろう?」
ジーナのその言葉にライアンもシェリルも頷いた。
もちろん、指揮をとっている公爵にその気があるのかは別問題だが。
ジーナはそう思いながらも、仮に国王派が中心になって探したところで易々と見つかるとは思えなかった。
簡単に見つかる物なら、エリスを王宮に呼んで王女としての名乗りを上げさせる必要もないだろう。
ライアンもシェリルもジーナの言葉に同意する。
「こりゃ無理だよな。ここまで馬鹿でかい場所に、たった一輪しか咲いてないっていうんだろ?」
「偶然見つかるのを待つしかないにゃ」
ジーナは肩をすくめると。
「そもそも、ここまでの深層に潜れる冒険者自体が限られている。Sランクっていったって精々80階層どまりの連中も多いからね。60階層から80階層はあらかた調べたんだろうけど、そこから先はね」
(まあ、見つけたところで公爵は陛下には渡さないだろうさ)
万が一、見つかったとしても病床の兄に渡すような男ではない。
ジーナたちはそんな話をしながら迷宮をさらに進んでいく。
彼らの先を進む黄金の蜘蛛。
その小ささゆえにライアンやシェリルは中々その姿を捕らえることが出来ないが、ジーナの目にはハッキリと見えていた。
キーラの精神体から作られているそれが放つ光を、ジーナの第三の瞳が捉えているのだ。
キラキラと輝くジーナの体。
それは彼女の魔力と闘気が昇華された霊気である。
ライアンは思う。
(やっぱジーナ隊長は強ええ。地上ではこれ程とは思わなかったぜ。フェロルクの守護神って呼ばれる理由が分かる)
ジーナは自分を見つめている少年を眺めると首を傾げた。
「どうしたんだいライアン。私の顔に何かついているかい?」
「え? へへ、何でもありませんよ」
シェリルはあきれ顔でライアンに言う。
「ふみゃ、ジーナ隊長はモテるからにゃ。ライアンなんて相手にされないにゃ」
「ば、馬鹿そんなんじゃねえって!」
ジーナは悪戯っぽく笑う。
そして言った。
「ふふ、頑張ってる子は嫌いじゃないよ。私は昔から年下には弱いんだ」
「ま、マジっすか! お、俺頑張ります!!」
張り切って足取りも軽くなるライアン。
シェリルはふぅと溜め息をついた。
「ふみゃ、ライアンお前からかわれてるのが分からないのかにゃ」
二人の会話にジーナは笑う。
年下に弱いのは嘘ではない。
ロイとフィアーナの息子のエフィンを、ジーナは弟のように可愛がっていたからだ。
そして、亡くなったエフィンによく似ている少年を思い出す。
「あの子がどこまで強くなったのか、会うのが楽しみになってきたね」
89階層に降りると、目の前からまた新たな魔物がやってくる。
今までよりも大きなヒュドラに、ライアンとシェリルは思わず後ずさる。
「でけえ……」
「ふにゃ、もう勘弁だにゃ!」
ジーナは右手の剣を構える。
だが、それを静かにおろした。
「た、隊長! どうして剣を!?」
「ふみゃ! こっちにくるにゃ!!」
思わず目をつぶる二人を眺めながらジーナは言った。
「安心しな、あいつはもう死んでるよ。へえ、やるもんだ。これは私の予想以上だね」
ジーナの瞳は、ゆっくりと倒れる魔物向こうからやってくる人影を見つめていた。
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