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238、迷宮の奥へ
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(彼には、私には見えていない世界が見えている。直にAランクの領域を超えるでしょうね。Sランクの冒険者、いやもしかしたらそれ以上の存在になるかもしれない)
「しかし、困りましたね。これほどあっさりと討伐任務が終わってしまうとは。もう少し時間がかかると思っていたのですが」
思わずそう口にしたエリク。
傍に立つリアナが首を傾げる。
「どうしてですか? エリクさん。早く討伐が終わって困ることでもあるんですか?」
「はは、いえこちらの話ですよ。リアナ」
そう言ってエリクは頭を掻いた。
これは討伐任務でもあるが、王女であるエリスに警備隊が同行すると言う任務でもある。
エイジたちにもそれは話してはあるが、あくまでも討伐任務を手伝ってもらうことが優先ということが建前だからだ。
(ジーナ隊長や私にとっては殿下の護衛任務の方が優先なのですが、そうとは言えませんからね。さて、どうしたものか。エイジの力量を考えれば十分な護衛役はこなすでしょうが、やはり警備隊と同行していることは大きいですからね)
そんなことを考えていると、前衛役の四人が戻ってくる。
エリクはまずは彼らの労をねぎらった。
「よくやりましたね。四人とも見事でしたよ」
ライアンは得意げに大槍を肩に担ぎながら指で鼻の頭をこする。
「へへ、楽勝だって! なあエイジ」
そう言ってエイジの肩を叩く。
それを見てシェリルが溜め息をついた。
「全く、一番働いてない奴が一番偉そうだにゃ! ライアンは、フェロモン入りの魔具を群れの上に投げただけにゃろ?」
その言葉に全員顔を見合わせて笑う。
「ちぇ! 簡単にいいやがるぜ! あんな殺戮マシーンの群れに近づくなんていい気分じゃねえぜ」
「はは、全くだ。にしてもアンジェとオリビアは流石だな」
エイジはライアンに同意しながらアンジェたちを眺める。
華麗に舞ったダークエルフの舞姫と白い翼の女騎士。
二人の働きと攻撃に翻弄されて、大きな隙が生まれたのが短期決戦になったゆえんでもあるだろう。
「へへん、そうでしょ? エイジ」
クルクルっと鮮やかに『紅』を回転させると鞘にしまうアンジェ。
『ソード・オブ・エンジェル』をしまい、広げていた魔力の羽を閉じるオリビア。
お互いを少し意識したようにチラッと見ると、アンジェがコホンと咳払いをして右手を差し出した。
「気取り屋の騎士にしてはやるじゃない。少しは認めてあげるわ」
オリビアはその手を握ると、澄ました顔で答える。
「元々私たちだけでこなせた任務だけれど、足を引っ張らないでいてくれたことだけは感謝するわ」
「ちょっと! ほんと可愛くない女ね!」
結局ツンとそっぽを向く二人を見て、エイジは肩をすくめて苦笑した。
それにしても、とエイジは思う。
(さっきの戦いでレベルが上がって、これで中級クラスのレベル32だ。この討伐隊の任務で一気にレベルが上がったな)
魔物の数もそうだが、宿主と寄生体の事を考えれば討伐した魔物の数は単純に二倍である。
同士討ちになった魔物の数は除いても、この巣にたどり着くまでに30体以上のリザードドラゴンとパラサイトアントを倒している。
合計60体以上の魔物。
そしてエイジの加護を考えれば600体近い魔物を討伐したことになる。
さらには女王の討伐。
だが……、とエイジは思う。
(俺たちの目標はあくまでも白王の薔薇を手に入れることだ。それには、もっと強くならないと)
そのためには、迷宮の奥へと進まなくてはいけないだろう。
今のレベルで更に強い魔物を倒せば、より早く強くなれるはずだ。
エイジは広間の先に通じる通路を眺めた。
アンジェも同じ意見なのだろう、エイジを見つめている。
「エイジ、どうするの? 討伐任務は終わったけど、まだ時間も早いわ」
「ああ、そうだな。アンジェ」
エリスとリアナも、二人の言いたいことを察して頷いた。
エイジはエリクに願い出る。
「エリクさん、ジーナさんには後で警備隊の事務所に向かうと伝えてもらえますか? 俺たちは、このまま迷宮の奥へ進んでみたいと思います」
「しかし、困りましたね。これほどあっさりと討伐任務が終わってしまうとは。もう少し時間がかかると思っていたのですが」
思わずそう口にしたエリク。
傍に立つリアナが首を傾げる。
「どうしてですか? エリクさん。早く討伐が終わって困ることでもあるんですか?」
「はは、いえこちらの話ですよ。リアナ」
そう言ってエリクは頭を掻いた。
これは討伐任務でもあるが、王女であるエリスに警備隊が同行すると言う任務でもある。
エイジたちにもそれは話してはあるが、あくまでも討伐任務を手伝ってもらうことが優先ということが建前だからだ。
(ジーナ隊長や私にとっては殿下の護衛任務の方が優先なのですが、そうとは言えませんからね。さて、どうしたものか。エイジの力量を考えれば十分な護衛役はこなすでしょうが、やはり警備隊と同行していることは大きいですからね)
そんなことを考えていると、前衛役の四人が戻ってくる。
エリクはまずは彼らの労をねぎらった。
「よくやりましたね。四人とも見事でしたよ」
ライアンは得意げに大槍を肩に担ぎながら指で鼻の頭をこする。
「へへ、楽勝だって! なあエイジ」
そう言ってエイジの肩を叩く。
それを見てシェリルが溜め息をついた。
「全く、一番働いてない奴が一番偉そうだにゃ! ライアンは、フェロモン入りの魔具を群れの上に投げただけにゃろ?」
その言葉に全員顔を見合わせて笑う。
「ちぇ! 簡単にいいやがるぜ! あんな殺戮マシーンの群れに近づくなんていい気分じゃねえぜ」
「はは、全くだ。にしてもアンジェとオリビアは流石だな」
エイジはライアンに同意しながらアンジェたちを眺める。
華麗に舞ったダークエルフの舞姫と白い翼の女騎士。
二人の働きと攻撃に翻弄されて、大きな隙が生まれたのが短期決戦になったゆえんでもあるだろう。
「へへん、そうでしょ? エイジ」
クルクルっと鮮やかに『紅』を回転させると鞘にしまうアンジェ。
『ソード・オブ・エンジェル』をしまい、広げていた魔力の羽を閉じるオリビア。
お互いを少し意識したようにチラッと見ると、アンジェがコホンと咳払いをして右手を差し出した。
「気取り屋の騎士にしてはやるじゃない。少しは認めてあげるわ」
オリビアはその手を握ると、澄ました顔で答える。
「元々私たちだけでこなせた任務だけれど、足を引っ張らないでいてくれたことだけは感謝するわ」
「ちょっと! ほんと可愛くない女ね!」
結局ツンとそっぽを向く二人を見て、エイジは肩をすくめて苦笑した。
それにしても、とエイジは思う。
(さっきの戦いでレベルが上がって、これで中級クラスのレベル32だ。この討伐隊の任務で一気にレベルが上がったな)
魔物の数もそうだが、宿主と寄生体の事を考えれば討伐した魔物の数は単純に二倍である。
同士討ちになった魔物の数は除いても、この巣にたどり着くまでに30体以上のリザードドラゴンとパラサイトアントを倒している。
合計60体以上の魔物。
そしてエイジの加護を考えれば600体近い魔物を討伐したことになる。
さらには女王の討伐。
だが……、とエイジは思う。
(俺たちの目標はあくまでも白王の薔薇を手に入れることだ。それには、もっと強くならないと)
そのためには、迷宮の奥へと進まなくてはいけないだろう。
今のレベルで更に強い魔物を倒せば、より早く強くなれるはずだ。
エイジは広間の先に通じる通路を眺めた。
アンジェも同じ意見なのだろう、エイジを見つめている。
「エイジ、どうするの? 討伐任務は終わったけど、まだ時間も早いわ」
「ああ、そうだな。アンジェ」
エリスとリアナも、二人の言いたいことを察して頷いた。
エイジはエリクに願い出る。
「エリクさん、ジーナさんには後で警備隊の事務所に向かうと伝えてもらえますか? 俺たちは、このまま迷宮の奥へ進んでみたいと思います」
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