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43、氷と炎

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「今度は俺の番だと? ふざけやがって! この俺が、負けるはずがねえ! 喰らいやがれ!!」

 アンドニウスが手にする魔氷剣レオベウスの紋章がさらに輝きを増すと、氷剣封殺陣で作り出された魔法陣がそれに呼応するかのように、より強い魔力を宿していく。

 その瞬間──

 先ほどは校庭に向かって放たれた無数の氷の剣が今度は天空に舞う俺に向かって放たれた。
 それを見ていた観客たちは悲鳴のような声を上げる。

「おい! さっきの剣よりもどれも馬鹿でかいぞ!!」

「終わりだ!」

「いくらなんでも、こいつは! お、おい! 早く生徒会に知らせろ!!」

「あの新入生消し飛ぶぞ!!」

 そう叫んで空を見上げた見物人たちは、天空に強烈に輝く紅の魔法陣の群れを見ただろう。
 氷剣封殺陣か、いかにも中二病な名前だ。
 だが、中二病なら俺も負けてはいない。

 アンドニウス、お前はたかが十年だ。

 だが、俺は三十になるまで中二病をこじらせていたんだ。
 いや、今でもな。

 極限まで高めた集中力とそれが生み出すイマジネーション。
 膨大に膨れ上がった俺の魔力が、それを具現化する。
 白いフェレットが俺の肩の上で再び立ち上がると叫んだ。

「やっちまいな! ロイ!!」

「ええ、先生!!」

 俺は頷く。そして左手を天空に掲げると叫んだ。

「必殺! 炎槍殲滅陣!!」

 その瞬間──
 俺の背後の魔法陣から現れる紅蓮に輝く無数の炎の槍。
 それはまるで生きているかのように、美しく燃え上がっている。
 作り出した槍の細部までのこだわりを反映するかのように。

 凄まじいスピードで放たれた無数の紅蓮の槍は、こちらに向かってくる巨大な氷の剣をぶつかり合い強烈な衝撃音を辺りに響かせる。

 氷の剣と炎の槍は全てぶつかり合い、蒸発するとともに水蒸気が辺りに立ち込めそれが校庭に刺さっている氷の剣で冷やされ霧と化した。
 視界を奪われ、見学人たちは声を上げる。

「お、おい……一体どうなったんだ!」

「分かるわけないだろ! 見ただろあの炎の槍の群れを」

「氷帝の息子だけじゃねえ! あの新入生も化け物だぜ!!」

 霧の中でアンドニウスが叫ぶ。

「ロイ! てめえ、どこに行きやがった!!」

 その声がした瞬間──
 霧の中を突き抜けるように俺は天空から奴の方へと向かう。
 ビビの作り出す風の力が俺の推進力になり、霧を突き抜けるように一直線に突き進んだ。

「なに!?」

 天空から凄まじい速さで向かってくる俺に気が付いて、思わず身構えるアンドニウス。
 だが、虚をつかれて体勢が崩れている。

「これでチェックメイトだ! アンドニウス!!」

 その時には俺はもう剣を構えていた。
 アーシェの前で朝練をしていた時の技の応用、それも最大の魔力を込めて全身を強化して。

 十字に放たれる俺の剣技が、唸りを上げて風を巻き起こしそれが周囲の霧を吹き飛ばした。
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