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家族

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「国王陛下!」

 モニカの作った空間魔法の出入り口からは、タンドール国王が現れたのだ。ギュンターはただちに片膝をついて低頭した。国王はギュンターの背に手をあてて、立つように言った。

「ギュンター。我が息子を守ってくれた事、感謝する」
「我が王よ、もったいないお言葉」

 国王の次には王妃と、不安そうに王妃に抱きついているエレノア王女が続いた。

 ギュンターの妻コーラは、王妃に駆け寄った。王妃はコーラを強く抱きしめた。コーラも王妃を抱きしめ返してから、王妃をゆりかごに導いた。

 王妃はすやすやと眠る我が子を見て、目に涙を浮かべながら、震える手に抱き上げて言った。

「バスチャン、貴方のお母さまですよ?こんなに大きくなって」

 娘のエレノア王女は、自分も弟を見たいと王妃の腕を引っ張った。コーラは王妃にイスをすすめ、彼女が腰をかけると、エレノアは弟の頬を指でつついた。

 バスチャン王子は眠りをさまたげられた事に不機嫌になったのか、ホギャホギャと泣き出した。王妃は目を細めて幼子をあやしていた。

 国王も王妃の横に立ち、我が子を慈愛の目で見ていた。クレアは、わずかな時間であるが、やっと四人の家族が巡り会えた事に安どした。

 メロディは家族のだんらんもおかまいなしに王妃に話しかけていた。

「バスチャン王子の目は王妃さまに似てるね?」
「あら、そうかしら?」
「うん。鼻はエレノアちゃんに似て低いね」
「ちょっと待て!メロディ!またわたくしの事をブスと言ったな?!」

 メロディのぶしつけな発言にエレノアが噛みつく。メロディはどこ吹く風で答える。

「ブスなんて言ってないよ、エレノアちゃんの鼻が低いって言ってるだけじゃん」
「それがブスと言うのだ!」
「大丈夫だよ、エレノアちゃん。将来は王妃さまみたいに美人になるから」
「将来はじゃない!わたくしは今も美人なのだ!」

 メロディとエレノアの言い争いに、皆声をあげて笑った。メロディと同じくらい空気の読めないロックが言った。

「何だぁ、国王家族っていうから緊張してたけどさ、普通の四人家族じゃんか」

 それを聞いたクロードとモニカが青ざめて、ロックを叩いた。

 国王はうなずいてロックに言った。

「ああ、その通りだロック。余たちはただの四人家族だ。ただ共に暮らせる事を切に願っている普通の家族だ」
「そうかぁ!じゃあ俺たちが、国王さま家族が安心して暮らせるようになるまで、貴方たちを守ります!」

 国王は驚いた顔をしたが、微笑んでありがとうと言った。

 クレアは以前から、国王家族にクロードたちを引き会わせたかったのだ。クロードたちなら、必ずや国王家族を守ってくれると信じているからだ。
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