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セシルとアピ

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 セシルは翌日から、火の小鳥アピが入った鳥かごを持って生活した。クラスメイトたちはセシルを奇異の目で見ていた。ブノワトとバベットはいまいましそうにセシルを見ていたが、セシルは無視した。

 セシルは授業が終わった後、いつもの森に急いだ。そこにはすでにメロディたちがいた。いつものようにお茶と軽食を食べた。今日はクレアがサンドイッチを作ってくれた。サンドイッチの中身はポテトサラダで、ボリュームたっぷりだった。

 食後の休けいをとったら、特訓の始まりだ。ドラゴンのウェントゥスが風防御ドームを張る。その中にはクレアとメロディ、そして鳥かごを持ったセシル。鳥かごの中にはアピがいて、ピピと鳴いている。

 クレアは厳しい顔でセシルに言った。

「セシル、行くわよ?!私は本気で攻撃するからね?」
「はい!」

 クレアの言葉に、セシルは鳥かごからアピを出す。クレアは水魔法を発動させた。メロディは拾った石を持っている。

 クレアは水攻撃魔法をセシルに向かって放った。セシルは叫んだ。

「アピ!火攻撃魔法!」
「ピピ」

 アピは口から火魔法を放ち、クレアの水攻撃魔法を無効化していく。セシルは思わず笑った。だんだんとアピとの連携がうまくなっているのだ。

 セシルの気の緩みをクレアが感じ取ったようだ。クレアは厳しい声で叫んだ。

「セシル!気を緩めないで!私たちは敵なの!」
「そうだよセシルちゃん!いっくよぉ!」

 メロディはセシルに向かって石を投げる。たいがいがセシルとアピには届かない。メロディは最初植物魔法でセシルを攻撃しようとしていた。だがセシルは断った。植物を燃やしたくなかったからだ。

 メロディの投げたひょろひょろの石がセシルの近くに飛んでくる。セシルはアピに指示した。

「アピ」
「ピッ」

 アピは火魔法で石を燃やした。その時セシルは少し油断した。

「セシルちゃんあぶない!」

 メロディの叫び声が聞こえた後、セシルの頭に石が直撃した。

 次にセシルが目を覚ますと、クレアとメロディとウェントゥスが心配そうに見下ろしていた。小鳥のアピはセシルの頬に身体をすり付けて、しきりにピッピッと鳴いている。

 セシルはアピを肩に乗せながら身体を起こして言った。

「私、どうしちゃったの?」
「ごめんね?あたしの投げた石がセシルちゃんに当たって、セシルちゃん気を失っちゃったの」

 メロディは申し訳なさそうに言った。セシルは慌ててメロディに言った。特訓をお願いしたのはセシルの方だ。メロディは何も悪くない。

 セシルがメロディたちをよく見ると、服が所々こげていた。セシルがその事を指摘すると、クレアが驚くべき事を言った。

「セシルが石に当たって倒れた途端、アピが暴走したの」
「ええ?!クレアたち大丈夫だったの?!」
「ええ。ウェンが風防御ドームを張ってくれていたから、周りは燃えなかったし、ウェンが私たちを風防御魔法で守ってくれたから平気よ?」

 セシルは肩に乗って、しきひに自分にすり寄っているアピを撫でながらクレアたちに申し訳ないと思った。だがクレアはとても笑顔で言った。

「セシル、おでこ痛くない?」
「?。いいえ」
「セシルはおでこにたんこぶができたの。だけどアピが治癒魔法で治してくれた。アピはすごいわ、セシルが気を失っても、貴女を守り、ケガの治癒もしてくれるんだわ」

 クレアの言葉にセシルは驚いた。治癒魔法はとても難しい魔法だ。それをアピがやってくれたのだという。どうやらアピには計り知れない力があるようだ。
 
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