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祖母の花

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 エマはメロディとクレアに、青い花を探すにいたった経緯を話した。エマはおばあちゃん子で、祖母が大好きだった。両親が仕事で忙しいので、エマは小さい頃から祖母にべったりだった。

 その祖母が体調を崩し、床にふしてしまったのだ。エマは祖母に元気になってもらおうと、何か欲しいものはないかと聞いた。祖母は、もう一度庭の青い花が見たいと言ったのだ。

「青い花?エマのお家の庭に咲くの?」

 メロディはエマの話しを聞いた後に質問した。エマは困ったように首を振って答えた。

「ううん、今は青い花は咲かない。昔咲いてたんだって。昔はおじいちゃんとおばあちゃんの家しか建っていなかったんだって。だけど、人が沢山やって来て、土を掘り起こして家が建っちゃったから、もう青い花は咲かないの」

 メロディはクレアを見た。クレアもうなずき返してくれた。メロディは笑顔になってエマに言った。

「ねぇ、エマ。あたしたちをおばあちゃんに紹介してくれない?おばあちゃんの話しを聞けば、どんな花かわかるかもしれない」

 メロディの提案に、エマは驚いた顔をしたが、笑顔でうなずいた。

 メロディたちは花屋の店先に休けいの看板を立てると、荷車に先ほどの青い花を積み込んで、エマの家に向かった。

 エマの住む家は、家々が密集していた。エマはメロディたちを家に招き入れてくれた。祖母の部屋は、日当たりのいい小さな庭が見える窓がある場所だった。

 エマが帰ったと告げると、祖母は慈愛のこもった瞳で孫娘を見つめた。メロディは一目エマの祖母を見て、彼女があまり遠くない未来、天国に召されるのだとわかった。

 エマは嬉しそうに祖母に鉢植えを見せ出した。祖母は、孫娘が見せる鉢植え一つ一つに、綺麗だねぇ、可愛いねぇとつぶやいて、最後にありがとうと言った。どうやら祖母のいう青い花は、この中には無かったようだ。

 エマは祖母の花が無かった事に落胆してしまったようだ。メロディはエマの背に手をそえてはげましていると、祖母の部屋に中年の女性が入って来た。どうやらエマの母親のようだ。

 母親はメロディたちがいる事に驚いた。エマは、メロディたちは花屋だと説明した。それを聞いた母親は怒って言った。

「エマ!何度言ったらわかるの!もうあの花は咲かないの!あきらめなさい!」

 エマは目に涙を浮かべて、部屋を飛び出してしまった。母親はため息をついていた。クレアは母親に聞いた。

「お母さんは青い花の事は覚えていませんか?」

 母親は困ったように顔をしかめてから答えた。

「私が小さい頃咲いていたけどねぇ。どんな花かも忘れてしまったわ」

 メロディはエマを追って外に出た。エマは庭にうずくまって泣いていた。きっと幼いエマにも、祖母とそう長くは一緒にいられない事に気づいているのだろう。メロディはエマに声をかけた。

「エマ」

 エマの小さな身体がぎくりと震える。エマは瞳に涙を浮かべながら振り向いた。メロディは誓った。青い花を探そうと。
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