148 / 196
祖母の花
しおりを挟む
エマはメロディとクレアに、青い花を探すにいたった経緯を話した。エマはおばあちゃん子で、祖母が大好きだった。両親が仕事で忙しいので、エマは小さい頃から祖母にべったりだった。
その祖母が体調を崩し、床にふしてしまったのだ。エマは祖母に元気になってもらおうと、何か欲しいものはないかと聞いた。祖母は、もう一度庭の青い花が見たいと言ったのだ。
「青い花?エマのお家の庭に咲くの?」
メロディはエマの話しを聞いた後に質問した。エマは困ったように首を振って答えた。
「ううん、今は青い花は咲かない。昔咲いてたんだって。昔はおじいちゃんとおばあちゃんの家しか建っていなかったんだって。だけど、人が沢山やって来て、土を掘り起こして家が建っちゃったから、もう青い花は咲かないの」
メロディはクレアを見た。クレアもうなずき返してくれた。メロディは笑顔になってエマに言った。
「ねぇ、エマ。あたしたちをおばあちゃんに紹介してくれない?おばあちゃんの話しを聞けば、どんな花かわかるかもしれない」
メロディの提案に、エマは驚いた顔をしたが、笑顔でうなずいた。
メロディたちは花屋の店先に休けいの看板を立てると、荷車に先ほどの青い花を積み込んで、エマの家に向かった。
エマの住む家は、家々が密集していた。エマはメロディたちを家に招き入れてくれた。祖母の部屋は、日当たりのいい小さな庭が見える窓がある場所だった。
エマが帰ったと告げると、祖母は慈愛のこもった瞳で孫娘を見つめた。メロディは一目エマの祖母を見て、彼女があまり遠くない未来、天国に召されるのだとわかった。
エマは嬉しそうに祖母に鉢植えを見せ出した。祖母は、孫娘が見せる鉢植え一つ一つに、綺麗だねぇ、可愛いねぇとつぶやいて、最後にありがとうと言った。どうやら祖母のいう青い花は、この中には無かったようだ。
エマは祖母の花が無かった事に落胆してしまったようだ。メロディはエマの背に手をそえてはげましていると、祖母の部屋に中年の女性が入って来た。どうやらエマの母親のようだ。
母親はメロディたちがいる事に驚いた。エマは、メロディたちは花屋だと説明した。それを聞いた母親は怒って言った。
「エマ!何度言ったらわかるの!もうあの花は咲かないの!あきらめなさい!」
エマは目に涙を浮かべて、部屋を飛び出してしまった。母親はため息をついていた。クレアは母親に聞いた。
「お母さんは青い花の事は覚えていませんか?」
母親は困ったように顔をしかめてから答えた。
「私が小さい頃咲いていたけどねぇ。どんな花かも忘れてしまったわ」
メロディはエマを追って外に出た。エマは庭にうずくまって泣いていた。きっと幼いエマにも、祖母とそう長くは一緒にいられない事に気づいているのだろう。メロディはエマに声をかけた。
「エマ」
エマの小さな身体がぎくりと震える。エマは瞳に涙を浮かべながら振り向いた。メロディは誓った。青い花を探そうと。
その祖母が体調を崩し、床にふしてしまったのだ。エマは祖母に元気になってもらおうと、何か欲しいものはないかと聞いた。祖母は、もう一度庭の青い花が見たいと言ったのだ。
「青い花?エマのお家の庭に咲くの?」
メロディはエマの話しを聞いた後に質問した。エマは困ったように首を振って答えた。
「ううん、今は青い花は咲かない。昔咲いてたんだって。昔はおじいちゃんとおばあちゃんの家しか建っていなかったんだって。だけど、人が沢山やって来て、土を掘り起こして家が建っちゃったから、もう青い花は咲かないの」
メロディはクレアを見た。クレアもうなずき返してくれた。メロディは笑顔になってエマに言った。
「ねぇ、エマ。あたしたちをおばあちゃんに紹介してくれない?おばあちゃんの話しを聞けば、どんな花かわかるかもしれない」
メロディの提案に、エマは驚いた顔をしたが、笑顔でうなずいた。
メロディたちは花屋の店先に休けいの看板を立てると、荷車に先ほどの青い花を積み込んで、エマの家に向かった。
エマの住む家は、家々が密集していた。エマはメロディたちを家に招き入れてくれた。祖母の部屋は、日当たりのいい小さな庭が見える窓がある場所だった。
エマが帰ったと告げると、祖母は慈愛のこもった瞳で孫娘を見つめた。メロディは一目エマの祖母を見て、彼女があまり遠くない未来、天国に召されるのだとわかった。
エマは嬉しそうに祖母に鉢植えを見せ出した。祖母は、孫娘が見せる鉢植え一つ一つに、綺麗だねぇ、可愛いねぇとつぶやいて、最後にありがとうと言った。どうやら祖母のいう青い花は、この中には無かったようだ。
エマは祖母の花が無かった事に落胆してしまったようだ。メロディはエマの背に手をそえてはげましていると、祖母の部屋に中年の女性が入って来た。どうやらエマの母親のようだ。
母親はメロディたちがいる事に驚いた。エマは、メロディたちは花屋だと説明した。それを聞いた母親は怒って言った。
「エマ!何度言ったらわかるの!もうあの花は咲かないの!あきらめなさい!」
エマは目に涙を浮かべて、部屋を飛び出してしまった。母親はため息をついていた。クレアは母親に聞いた。
「お母さんは青い花の事は覚えていませんか?」
母親は困ったように顔をしかめてから答えた。
「私が小さい頃咲いていたけどねぇ。どんな花かも忘れてしまったわ」
メロディはエマを追って外に出た。エマは庭にうずくまって泣いていた。きっと幼いエマにも、祖母とそう長くは一緒にいられない事に気づいているのだろう。メロディはエマに声をかけた。
「エマ」
エマの小さな身体がぎくりと震える。エマは瞳に涙を浮かべながら振り向いた。メロディは誓った。青い花を探そうと。
0
お気に入りに追加
260
あなたにおすすめの小説
記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。
せいめ
恋愛
メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。
頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。
ご都合主義です。誤字脱字お許しください。
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
チート幼女とSSSランク冒険者
紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】
三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が
過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。
神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。
目を開けると日本人の男女の顔があった。
転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・
他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・
転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。
そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語
※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。
王太子さま、側室さまがご懐妊です
家紋武範
恋愛
王太子の第二夫人が子どもを宿した。
愛する彼女を妃としたい王太子。
本妻である第一夫人は政略結婚の醜女。
そして国を奪い女王として君臨するとの噂もある。
あやしき第一夫人をどうにかして廃したいのであった。
天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生
西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。
彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。
精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。
晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。
死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。
「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」
晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。
異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ
トール
恋愛
会社帰り、駅までの道程を歩いていたはずの北野 雅(36)は、いつの間にか森の中に佇んでいた。困惑して家に帰りたいと願った雅の前に現れたのはなんと実家を模した家で!?
自身が願った事が現実になる能力を手に入れた雅が望んだのは冒険ではなく、“森に引きこもって生きる! ”だった。
果たして雅は独りで生きていけるのか!?
実は神様になっていたズボラ女と、それに巻き込まれる人々(神々)とのドタバタラブ? コメディ。
※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています
裏切りの代償
志波 連
恋愛
伯爵令嬢であるキャンディは婚約者ニックの浮気を知り、婚約解消を願い出るが1年間の再教育を施すというニックの父親の言葉に願いを取り下げ、家出を決行した。
家庭教師という職を得て充実した日々を送るキャンディの前に父親が現れた。
連れ帰られ無理やりニックと結婚させられたキャンディだったが、子供もできてこれも人生だと思い直し、ニックの妻として人生を全うしようとする。
しかしある日ニックが浮気をしていることをしり、我慢の限界を迎えたキャンディは、友人の手を借りながら人生を切り開いていくのだった。
他サイトでも掲載しています。
R15を保険で追加しました。
表紙は写真AC様よりダウンロードしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる