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青い花
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メロディとクレアは花屋の店先のイスに座り、店の前をぼんやりながめていた。メロディたちの周りを、ドラゴンのウェントゥスがピィッピィッと楽しそうに鳴きながら飛んでいる。
つまりとてもヒマなのだ。メロディたちが冒険者の依頼で数日留守にしていると、近所に住んでいるマサラの所に欲しい花の依頼が入るのだ。メロディたちが帰った後、依頼の花を咲かせて、お客の家に配達するのだ。
冒険者の依頼から帰った後はとても忙しいが、花の依頼が済んでしまうと、ヒマなのだ。
メロディはファアと大きなあくびをした。クレアがギロリとにらむ、メロディは舌をチョロっと出した。
「あの、」
メロディとクレアが顔をあげると、そこには客がいた。十二歳くらいの女の子だ。彼女はとても急いでいるのか、せっついて言った。
「あの、青い花はありますか?」
「はい。どのような青い花がよろしいですか?」
メロディの問いに女の子は困った表情をした。そして、くちびるをぎゅっとむすんでから言った。
「このお店にある青い花をすべて見せてほしいんです」
メロディとクレアは顔を見合わせた。女の子の要望がよくわからなかったからだ。メロディは仕方なく、植木鉢に手をかざし、沢山の青い花を咲かせた。リンドウ、ワスレナグサ、ヤグルマギク、ルリマツリ。濃い青いから薄い青まで、可憐な花を咲かせた。
メロディは客である女の子の顔をうかかった。すると女の子は、きびしい声で言った。
「ここにある花、全部ください!」
「えっ?!全部ですか?とても重いですよ?」
「大丈夫です!」
メロディは困ってクレアを見た。クレアも困ったような表情だ。クレアは笑顔になって女の子に言った。
「お客さま?この中に、貴女のお探しの花はありますか?」
「・・・。わからないの」
「えっ?」
クレアの問いに、女の子が答えるが、とても小さな声で聞き取れなかった。クレアはもう一度女の子に女の子の顔を覗きこもうとした。女の子は顔をくしゃっとゆがめたかと思うと、ワァッとはげしく泣き出した。
メロディは泣きじゃくる女の子に駆け寄って、クレアを見た。クレアはメロディにうなずいて台所に引っ込んだ。メロディは女の子が驚かないように、彼女の背中を優しく撫でながら言った。
「あたしはメロディ。貴女の名前は?」
女の子は一瞬泣き止んで、不思議そうにメロディを見てからおずおずと口を開いた。
「エマ」
つまりとてもヒマなのだ。メロディたちが冒険者の依頼で数日留守にしていると、近所に住んでいるマサラの所に欲しい花の依頼が入るのだ。メロディたちが帰った後、依頼の花を咲かせて、お客の家に配達するのだ。
冒険者の依頼から帰った後はとても忙しいが、花の依頼が済んでしまうと、ヒマなのだ。
メロディはファアと大きなあくびをした。クレアがギロリとにらむ、メロディは舌をチョロっと出した。
「あの、」
メロディとクレアが顔をあげると、そこには客がいた。十二歳くらいの女の子だ。彼女はとても急いでいるのか、せっついて言った。
「あの、青い花はありますか?」
「はい。どのような青い花がよろしいですか?」
メロディの問いに女の子は困った表情をした。そして、くちびるをぎゅっとむすんでから言った。
「このお店にある青い花をすべて見せてほしいんです」
メロディとクレアは顔を見合わせた。女の子の要望がよくわからなかったからだ。メロディは仕方なく、植木鉢に手をかざし、沢山の青い花を咲かせた。リンドウ、ワスレナグサ、ヤグルマギク、ルリマツリ。濃い青いから薄い青まで、可憐な花を咲かせた。
メロディは客である女の子の顔をうかかった。すると女の子は、きびしい声で言った。
「ここにある花、全部ください!」
「えっ?!全部ですか?とても重いですよ?」
「大丈夫です!」
メロディは困ってクレアを見た。クレアも困ったような表情だ。クレアは笑顔になって女の子に言った。
「お客さま?この中に、貴女のお探しの花はありますか?」
「・・・。わからないの」
「えっ?」
クレアの問いに、女の子が答えるが、とても小さな声で聞き取れなかった。クレアはもう一度女の子に女の子の顔を覗きこもうとした。女の子は顔をくしゃっとゆがめたかと思うと、ワァッとはげしく泣き出した。
メロディは泣きじゃくる女の子に駆け寄って、クレアを見た。クレアはメロディにうなずいて台所に引っ込んだ。メロディは女の子が驚かないように、彼女の背中を優しく撫でながら言った。
「あたしはメロディ。貴女の名前は?」
女の子は一瞬泣き止んで、不思議そうにメロディを見てからおずおずと口を開いた。
「エマ」
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