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冒険者の覚悟

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 クロードは騎士団が通れる大きな空間魔法の出入り口を作り、騎士団たちを王都に帰した。そして、今度は城下町への出入り口を作ると、クレアたちに入るようにうながした。

 クレアが空間出入り口を出ると、そこにはロックとモニカがいた。モニカはクレアたちをねぎらってくれた。

「クレア、メロディ、ウェンありがとう」
「モニカさん、安心してください。貴女の名前はウィーペラ魔法団名簿から除名されています。もうウィーペラ魔法団に追われる事もありません」

 モニカは涙ぐんで微笑んだ。しめっぽい場が苦手なロックが大声で言った。

「盗賊団を捕縛してたんまり依頼料が入ったんだ。飯食い行こうぜ!」
「やったぁ!」

 ロックの提案にメロディは大はしゃぎした。クレアはせっかくならばと、マサラの友達の経営しているヒルシュ亭にクロードたちを案内した。

 ヒルシュ亭の夫婦は腕によりをかけてごちそうを出してくれた。ロックとメロディはものすごい勢いで食事を食べていた。

 モニカもゆっくりと味わって食事をしている。クロードはジョッキのエールをうまそうにあけていた。二人ともくつろいでいるようだ。

 ふとクロードと視線が合うと、彼は苦笑しながら口を開いた。

「本当の事を言うとな。クレアとメロディの指導を引き受けたのは、お前たちにクギをさすためだったんだ。新人冒険者は根拠のない自信を持っている。冒険者は甘いものじゃないんだぞってな。だがクレアとメロディには冒険者の覚悟が備わっていた。みくびっていたのは俺たちの方だった。すまなかった」

 クロードは頭をさげた。クレアは慌てて言った。

「やめてください、クロードさん。私たちこそ、ご指導いただいて感謝のしようがありません」
「クレアはとっても義理堅いなぁ。だが不思議だ。冒険者になりたてのお前たちは何故冒険者の覚悟を持っているんだ?」

 クレアは下を向いた。クレアの膝の上には、メロディの作ったりんごを美味しそうにかじっているウェントゥスがいる。

 クレアはウェントゥスの頭を優しく撫でてから言った。

「私には尊敬する冒険者がいます。その方は、若い冒険者を助けて亡くなりました。私は若い冒険者に腹が立って仕方なかった。だけど、わかったんです。この若い冒険者は、私自身だって。私は前回の冒険者試験に受かっていれば、とてもごう慢になっていたと思います。自分は水魔法が使えるんだから、誰にも負けるはずはないって。でも花屋の仕事をしていて、危機に直面して、痛感しました。自分より強い者は沢山いるのだと。私は尊敬する冒険者の意志を継ぐ冒険者になりたいんです」

 クロードは、クレアの言葉を聞き終わると、一言そうかとだけ答えた。食べ物の奪い合いにうるさかったロックとメロディも静かになっていた。

 クロードはふむとひとつうなずいてから、笑顔になって言った。

「クレア、メロディ。お前たちは立派な冒険者だ」

 

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