冒険者になれなかったので花屋始めました

クレアとメロディのポシェット

　クレアはパチリと目を覚ました。今日クレアたちは盗賊団と戦うのだ。クレアが緊張の面持ちで起き上がると、となりのメロディはすやすやと眠っていた。こんな時、メロディは肝がすわっていると思う。

　クレアはメロディとドラゴンのウェントゥスを起こした。モニカは笑顔で朝のあいさつをすると、朝食の準備ができていると言った。

　朝食の後、モニカはテントをしまい、クレアとメロディは大きなリュックサックを背中に背負って、さあ出発という時に、モニカが声をかけた。

「クレア、メロディ。貴女たち荷物が多すぎるわ。これに入れなさい」

　モニカは手に小さなポシェットを二つ持っていた。一つはピンクで一つは青、花の刺しゅうがしてあって、とても可愛かった。

「わぁ、可愛い！」

　メロディが声をあげた。クレアもそう思った。だがポシェットは、ハンカチと手鏡くらいしか入らない小さなものだった。クレアとメロディの荷物はとうてい入らなかった。モニカは笑って言った。

「これは私が作って、魔法をかけたのよ？何でも入るわ」

　クレアとメロディは首をかしげながらポシェットを受け取った。メロディはピンク、クレアは青のポシェットをもらった。ポシェットのボタンを開いて大きなリュックサックを近づけると、シュルッと大きなリュックサックがポシェットの中に吸い込まれてしまった。

　クレアとメロディが驚いていると、モニカが微笑んで言った。

「入れる時には、入れる物をちゃんと覚えておきなさいね？でないと二度と取り出せないから」

　クレアとメロディは神妙にうなずいた。

　クロードがクレアたちの準備が整ったのを確認して言った。

「さぁ出発だ」

　クロードは右手を差し出すと空間魔法を発動した。クレアたちの目の前に真っ黒な空間の出入り口が出現した。

　最初にロックが通り、次にモニカ、クレアにウェントゥスを抱っこしたメロディが続く。最後にクロードが空間の出入り口を通ると、真っ黒な空間の出入り口は消えてしまった。

　クレアたちはキリアの街の前に立っていた。キリアの街はとても大きな街だつた。クレアたちの住んでいる城下町も大きな町だが、この街は裕福である事がすぐに見てとれた。

　建物が皆豪華なのだ。歩いている街の人たちの身なりも整っていた。クロードはクレアたちを率いて歩き出した。目的地は街の指導者の屋敷だ。