上 下
96 / 196

その後

しおりを挟む
 翌日クレアたちは騎士団に向かった。子ドラゴンたちは救出され、無事に守護者の元に帰った。だがクレアは見てしまったのだ。沢山の奴隷たちが貴族に買われていたのを。

 騎士団たちがラグジュアリーに踏み込んだ事で、奴隷たちの事もあかるみになったはずだ。クレアは奴隷たちの事が心配でならなかった。

 クレアは騎士団の受付でガロアに面会を頼んだ。しばらくすると、疲れた笑顔をしたガロアがやって来た。

「クレア、メロディ、ウェン。昨日はありがとうな」
「ガロアさん。その顔では良い成果ではなかったようですね?」

 クレアの問いに、ガロアは苦笑して答えた。

「クレアには隠せないなぁ。俺たちはラグジュアリーの支配人から使用人をすべて拘束した。だがジョスト大公の事は少しも吐かなかった。ラグジュアリーの裏の顔が露見した場合、ジョスト大公の事は黙秘する手はずだったんだろう」

 ガロアの言葉にクレアはがっかりしたが、やはりとも思った。ジョスト大公が簡単にボロを出すとも思えなかった。

 クレアはガロアに一番聞きたかった事を聞いた。

「ガロアさん、ラグジュアリーには沢山の捕らわれた人たちがいたわ。彼らはオークションにかけられて貴族に売られてた」
「ああ、安心しろクレア。保護した人たちは皆無事だ」

 その言葉にクレアはホッと息をついた。となりのメロディが不思議そうに聞いた。

「クレアちゃん、保護した人たちって誰?」

 クレアはメロディたちに、ラグジュアリーはドラゴンだけてまはなく、人間も売っているという事は話さなかった。だが聞かれてしまったものは仕方がない。クレアはメロディとウェントゥスに説明した。

 メロディは顔を真っ赤にして怒った。

「人を売り買いするなんて許せない!」
「ピィ!」

 メロディとウェントゥスの剣幕に、クレアとガロアは顔を見合わせて苦笑した。メロディはとても心が綺麗で世間知らずだ。この世界には残酷で汚い事が沢山ある。クレアは過保護とは思うが、メロディには世界の汚い部分をあまり見てほしくないと思うのだ。

 クレアはガロアに質問した。

「ガロアさん。保護された人たちはどうなるんですか?」

 そこでガロアは顔をくもらせて答えた。

「ううん。本当の事をいうと、困っているんだ。彼らはな、不法入国者なんだ。だから奴隷狩りに捕まっても文句は言えないんだ。今は騎士団預かりになっているけれど、このままだと彼らは本国に強制送還されてしまう」
「・・・。その人たちは母国にいられなくて必死になってタンドール国に逃げて来たのに」

 国に送り返さないといけないのだろうかとクレアがふさいでいると、メロディが明るい声で言った。

「だったらその人たち、お城で働いてもらえばいいじゃん。王妃さま言ってたよ?信頼できる使用人が必要だって」

 クレアはハッと顔をあげた。だめで元々だが王妃に相談すれば道は開けるかもしれない。クレアはメロディたちと城に向かった。

 突然の面会にもかかわらず王妃は気さくに応対してくれた。王女のエレノアは、メロディとウェントゥスが来たので、一緒に遊びなさいと命令していた。メロディもウェントゥスも嬉しそうにエレノアと話していた。

 クレアは、ラグジュアリーにいた沢山の奴隷たちを城で働かせてもらえないかと頼んだ。王妃は笑顔で、彼らを受け入れると約束してくれた。クレアはそこで初めて安どのため息をもらした。

 



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

離縁された妻ですが、旦那様は本当の力を知らなかったようですね?~魔道具師として自立を目指します!~

椿蛍
ファンタジー
【1章】 転生し、目覚めたら、旦那様から離縁されていた。   ――そんなことってある? 私が転生したのは、落ちこぼれ魔道具師のサーラ。 彼女は結婚式当日、何者かの罠によって、氷の中に閉じ込められてしまった。 時を止めて眠ること十年。 彼女の魂は消滅し、肉体だけが残っていた。 「どうやって生活していくつもりかな?」 「ご心配なく。手に職を持ち、自立します」 「落ちこぼれの君が手に職? 無理だよ、無理! 現実を見つめたほうがいいよ?」 ――後悔するのは、旦那様たちですよ? 【2章】 「もう一度、君を妃に迎えたい」 今まで私が魔道具師として働くのに反対で、散々嫌がらせをしてからの再プロポーズ。 再プロポーズ前にやるのは、信頼関係の再構築、まずは浮気の謝罪からでは……?  ――まさか、うまくいくなんて、思ってませんよね? 【3章】 『サーラちゃん、婚約おめでとう!』 私がリアムの婚約者!? リアムの妃の座を狙う四大公爵家の令嬢が現れ、突然の略奪宣言! ライバル認定された私。 妃候補ふたたび――十年前と同じような状況になったけれど、犯人はもう一度現れるの? リアムを貶めるための公爵の罠が、ヴィフレア王国の危機を招いて―― 【その他】 ※12月25日から3章スタート。初日2話、1日1話更新です。 ※イラストは作成者様より、お借りして使用しております。

異世界で料理を振る舞ったら何故か巫女認定されましたけども~人生最大のモテ期到来中~

九日
ファンタジー
女神すら想定外の事故で命を落としてしまったえみ。 死か転生か選ばせてもらい、異世界へと転生を果たす。 が、そこは日本と比べてはるかに食レベルの低い世界だった。 食べることが大好きなえみは耐えられる訳もなく、自分が食レベルを上げることを心に決める。 美味しいご飯が食べたいだけなのに、何故か自分の思っていることとは違う方向へ事態は動いていってしまって…… 何の変哲もない元女子大生の食レベル向上奮闘記――

神様に世界を見てきて欲しいと言われたので、旅に出る準備をしようと思います。

ネコヅキ
ファンタジー
 十七年の生を突然に終えて異世界へと転生をした彼女は、十歳の時に受けた『神託の儀』によって前世の記憶を取り戻し、同時に神様との約束も思い出す。  その約束とは、歴史の浅いこの世界を見歩く事。  学院に通いながら、神様との約束を果たす為に旅立つ準備を始めた彼女。しかし、人を無に帰す化け物に襲われて王都は壊滅。学ぶ場を失った彼女は偶然に出会った冒険者と共に領地へと避難をするのだが――  神様との約束を交わした少女の、旅立ちの序曲。 ・更新はゆっくりです。

ぼっち冒険者の俺ですが、何故か古龍に懐かれています

こうじ
ファンタジー
ロアはソロの冒険者として活動していた。しかし、彼はなりたくてソロになった訳じゃなく出来ればパーティーを組みたかった。信頼できる仲間が欲しかった。しかし、既にソロとして名を上げているロアをパーティーに誘う者はいなかった。そんなある日、ダンジョンを探検していた時、誤って落とし穴に落ちてしまう。その先でロアが出会ったのは古龍の少女ミーナだった。彼女は一族から迫害を受けダンジョンに身を寄せていたのだ。同じぼっち同士のロアとミーナは意気投合、パーティーを組む事にする。ここから最強パーティーの伝説の始まる。

マルグリットは婚約を破棄してもらいたい

真朱マロ
恋愛
マルグリットの元に、一通の手紙が届いた。 一度も顔を合わせたことのない婚約者が、婚約式の準備をするために、とうとうマルグリットの領地までやってくるのだ。 初めての顔合わせを前に、マルグリットは打ちひしがれる。 「クリスティアン様、どうして婚約を破棄して下さらなかったの!」 別サイトにも重複投稿しています

転生したら死にゲーの世界だったので、最初に出会ったNPCに全力で縋ることにしました。

黒蜜きな粉
ファンタジー
『世界を救うために王を目指せ? そんなの絶対にお断りだ!』  ある日めざめたら大好きなゲームの世界にいた。  しかし、転生したのはアクションRPGの中でも、死にゲーと分類されるゲームの世界だった。  死にゲーと呼ばれるほどの過酷な世界で生活していくなんて無理すぎる!  目の前にいた見覚えのあるノンプレイヤーキャラクター(NPC)に必死で縋りついた。 「あなたと一緒に、この世界で平和に暮らしたい!」  死にたくない一心で放った言葉を、NPCはあっさりと受け入れてくれた。  ただし、一緒に暮らす条件として婚約者のふりをしろという。  婚約者のふりをするだけで殺伐とした世界で衣食住の保障がされるならかまわない。  死にゲーが恋愛シミュレーションゲームに変わっただけだ!   ※第17回ファンタジー小説大賞にエントリー中です。  よろしければ投票をしていただけると嬉しいです。  感想、ハートもお待ちしております!

処理中です...