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冒険者

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 ついにこの時がやって来た。クレアは感慨深げにため息をついた。クレアと親友のメロディが王都にやって来て二年目になった。もうすぐ冒険者試験が行われる季節になる。

 最初冒険者の試験に落ちてしまい、どうしてよいかわからなかった。メロディと一緒に花屋を始め、周りの人たちに助けられ、何とか生活ができるようになった。

 小さなドラゴンのウェントゥスと出会い、共に暮らすようになった。今ではクレアとメロディにとってかけがえのない家族になった。

 もうすぐ冒険者試験を受けられる。クレアは期待と不安に胸を高鳴らせていた。そこで大変な事が発覚した。メロディが一年前にやった筆記試験の課題をほとんど忘れてしまっていたのだ。

 発覚した日からクレアはスパルタでメロディに勉強を教えた。花屋の仕事が終わってからなので、眠そうなメロディを可哀想と思うが仕方ない。

 メロディは眠い目をこすりながらがんばって勉強を続けてくれた。クレアがすまなそうにメロディに言った。

「ごめんね、メロディ。もっと早くに気づいて勉強していたら、こんな詰め込みにならなかったのに」
「ううん、大丈夫。あたしこそごめんね。一年前クレアちゃんが教えてくれた事ほとんど忘れちゃって」
「大丈夫よ、メロディ。一度覚えられたんだもの、すぐに覚えられるわ」
「うん!クレアちゃん、絶対冒険者になろうね!ダイアンさんもあたしたち冒険者になれるって言ってくれたものね?」
「そうね」

 一年経ってみて、クレアは今では最初の冒険者試験に落ちて良かったと考えている。一年前のクレアは、自分の水魔法を鼻にかけてごう慢になっていたのだ。自分は水魔法が使えるから、きっと冒険者になれると。だが、花屋になって働いている時でも、とんでもない危機にみまわれ、命の危険が何度もあった。

 冒険者になれば、その危険度は現在の比ではないだろう。そして、クレアは尊敬する冒険者バジーレに出会った。彼は冒険者の誇りを持った人だった。彼は若い冒険者をかばって亡くなってしまった。おこがましいと思うが、クレアはバジーレの意思を継ぐ冒険者になりたいのだ。

 
 ついに冒険者試験の日がやって来た。クレアとメロディは、筆記試験を終えると実技試験にのぞんだ。

 現役の冒険者との模擬戦闘だ。試験官の男性はクレアの経歴を見ていった。

「クレア、君は冒険者試験二回目だね?前回よりも過酷になるけど大丈夫か?」
「はい!」

 クレアはきっぱりと答えた。試験会場に立ったクレアの前に、三人の冒険者がいた。一年前の実技試験は相手が一人だったのに、今回は三人に増えているのだ。

 三人の冒険者は、一人は剣士、もう一人は武闘家、もう一人は魔法使いのようだ。クレアはゴクリとツバを飲みこんだ。試験官が声高らかに開始を宣言する。

 まずは魔法使いが攻撃火魔法をクレアに放った。クレアは冷静に水防御魔法を張って、火魔法を防いだ。火魔法は防御壁に防がれて爆炎が立ちのぼった。煙の中を。剣士と武闘家がクレアに向かって走って来た。

 クレアは水攻撃魔法を放ち、剣士と武闘家に向けて放った。剣士はクレアの水魔法に当たって吹っ飛んだが、武闘家はクレアの水攻撃魔法を紙一重でよけると、クレアに向かってこぶしを振り上げた。クレアは水防御魔法で、武闘家のこぶしを防いだ。

 起き上がった剣士と後ろに控えていた魔法使いがクレアに向かって来ようとした。クレアはニヤリと笑った。クレアが仕込んでいたしかけが完了したのだ。

 クレアは土に手をついて氷魔法を発動させた。クレアの足元から一気に凍っていく。クレアの元に走って来ようとした剣士と魔法使い、目の前にいる武闘家の足元がみるみる凍り、動きを封じたのだ。

 クレアは三人の冒険者と戦いながら、気づかれないように足元に水魔法を張りめぐらせていたのだ。三人の冒険者は行動不能になった。試験官が声高らかに宣言した。

「勝負あり!勝者クレア!」
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