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魔法使いの罠

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 ダイアンの目の前で三人の冒険者たちが宙に浮いた。いや、冒険者たちの足に縄が巻かれていて、冒険者たちの立っている側の木の幹に縄をかけて、じくにして定滑車の原理で、持ち上げられたのだ。

 これはダイアンたち逃げた冒険者を捕まえる罠だったのだ。ダイアンと後ろにいたカーター、その後ろにいたクレアたちに網が投げつけられた。

 ダイアンたちは地面に倒れ込み、動けなくなってしまった。ダイアンは制限された動きで、腰の剣を抜こうとした。自分たちは山賊に捕らわれても仕方がない。だがクレアたちは無関係なのだ。ただ親切でダイアンたちを助けてくれただけなのだ。何としてもクレアたちは助けなければいけない。

 横でモゾモゾしているカーターも同じ思いのようで、腰の剣を抜こうとがんばっている。突然ダイアンたちをおおっていた網が吹っ飛ばされた。後からドラゴンのウェントゥスの魔法だという事に気づいた。

 クレアはスクッと立ち上がると、水魔法を三人の冒険者を吊り上げている縄に向けて放った。水魔法は見事命中し、三人の冒険者が地上に落下しそうになったその時、植物のツタが勢いよく伸びてきた。

 落下した三人の冒険者を空中で受け止め、ダイアンたちの所まで連れて来てくれた。これはメロディの植物魔法だ。ダイアンはポカンとしてしまった。絶体絶命だったはずが、クレアたちによって仲間が救出されたのだ。

 メロディは三人の冒険者の傷の具合を見てから、ウェントゥスに言った。

「ウェン、この人たちのケガを治して?」
「ピィー」

 ドラゴンのウェントゥスは三人のケガをまたたく間に治してしまった。ダイアンがホッとしたのも束の間、上空から声がした。

「ほう?お前たちも用心棒を雇ったのか。それにしてもずいぶんと弱そうな用心棒だな?」

 ダイアンが頭上を見上げると、カーターに攻撃魔法を放った魔法使いが宙に浮いていた。この男はウィーペラ魔法団の魔法使いだ。心してかからなければいけない。魔法使いの背後から、山賊三兄弟が現れ、ダイアンたちに剣を向けた。

 ダイアンとカーター、三人の冒険者たちが敵とにらみあっていると、クレアが大声で言った。

「貴方は魔法使いでしょう?魔法使いとは才能に恵まれた立派な人物のはずなのに、何故貴方は悪者に加担するの?」
「ギャハハ!おかしな事を言う小娘だ。俺は正しい事のために魔法を使っているのだ!正しい事とは、金を持つ者、権力を持つ者、強い者が弱い者を押さえつける事だ。見たところお前たちは一つのエレメントしか使えないようだな!俺の敵ではない。目障りな者どもは一掃してしまおう」

 魔法使いの言葉に、ダイアンはブルリと身体を震わせた。脳裏に魔法で攻撃された記憶がよみがえる。クレアはハァッと吐き捨てるようにため息をついて言った。

「ウィーペラ魔法団の連中って皆そうね?とても頭のできが悪いんだわ。この間倒したウィーペラ魔法団の魔法使いも、貴方と同じような事を言っていたわ!仕方ないわね、貴方は私たちがお灸をすえてあげる」
「な、何だと小娘!ウィーペラ魔法団の魔法使いが、お前たちのような奴らに負けただと?」

 クレアの言葉にダイアンは驚いてしまった。ドラゴンのウェントゥスは風魔法、クレアは水魔法、メロディにいたっては土魔法の一つ植物魔法しか使えないというのに、彼らはウィーペラ魔法団の魔法使いに勝ったというのだ。

 クレアはダイアンたちにするどい声で言った。

「ダイアンさん、カーターさん!冒険者の皆さんは三人の山賊の捕縛をお願いします!私たちはこの魔法使いを倒します」

 クレアたちの視線は上空の魔法使いと向いていた。仕方なくダイアンは、カーターと三人の仲間に目配せした。

 
 

 

 
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