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国王の心

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 グラシアの家からの帰り道、クレアのとなりを歩くメロディはごきげんだった。グラシアは無事に帰って来た。そしてグラシアは王妃の侍女になるため、親子で城に行くのだ。そうなればいくらゴンゾといえどもグラシアに手出しできないだろう。メロディは嬉しそうにクレアに言った。

「良かったね、クレアちゃん。グラシアさんたちはきっと幸せになるね?」
「そうね。グラシアさんたち家族は辛い事がいっぱいあったものね、これからは沢山幸せにならないとね。明日はグラシアさんたちの引越しなんだから、忙しいわよ?!」
「うん!わかってるよ!それにしてもゴンゾの奴笑えたよね?悔しそうな顔ったらないわ」
「メロディったら。嫌いな人間には毒吐くんだから」
「だってぇ、グラシアさんに暴力ふるった奴なんか許せないんだもの」
「それは私も同じ意見だわ」
「王さまもきっと、あんな奴をこらしめるために騎士の称号くれたんだね?」
「違うわよ!今回は、ゴンゾが爵位の無いただの金持ちだったから良かったの!」
「しゃくい?」
「貴族って事。私たちがいただいた騎士の称号は一番下の位なの。もし貴族の嫌な奴がいたとしても騎士ではたちうちできないの!」
「じゃあ王さまは何であたしたちに騎士の称号をくれたの?」
「私たちはね、いわば王さまのお抱え騎士なの。もし私たちが、例えばジョスト大公の手の者に捕まったりしたら、王さまが介入できるのよ。自分の騎士が勝手に捕まったり、処罰されそうになったらね」

 クレアの説明に、メロディは嬉しそうに微笑んで答えた。

「王さまはあたしたちの事考えてくれたんだね?」
「!。そうね、私たちが今も城下町で暮らせているのは国王陛下のおかげね」
「王さまは、ギュンターさんたちが幸せになるように考えてくれた。そして、あたしたちの事も。あたしたちはそんな王さまの国民でとても幸せだね?」
「・・・。本当に、そうね」

 クレアは、自分を信じてほしいと言った時の国王の顔が頭から離れなかった。国王は、クレアが処分の恐怖に怯えているのを悟り、悲しい顔をした。何が自分たちを信じてくださいだ。一番国王を信じていなかったのは他でもないクレア自身だったのだ。

 国王はクレアたちが今後も城下町で暮らしていけるように心をくだいてくれたのだ。

 
 翌日グラシアの家に行き、当面必要になる物だけを荷車に乗せ、荷車を大きくなったウェントゥスにくくりつけ、城に飛んだ。

 王妃はグラシア親子をたいそう気に入ってくれた。気さくな王妃に、こわばっていたグラシアにも笑顔がうかんだ。アーントとカロリンは初めての城で小さくなっていたが、エレノア王女が上から目線で声をかけた。

「お前たちは今日からわたくしの遊び相手をするのよ?これからお城の中を案内してあげるわ。ありがたく思いなさい?」

 エレノア王女も歳の近い子供が来てくれた事が嬉しいようだ。メロディはエレノア王女に、二人と仲良くしてね。と、お願いしている。エレノア王女はツンケンしながら当然だ、と答えている。

 クレアはホッと安どのため息をついた。
 
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