冒険者になれなかったので花屋始めました

親子の再会

　クレアは大きくなってもらったウェントゥスにメロディとグラシアと共に乗り込み、一路子供たちを預かってもらっているマサラの家に急いだ。

　マサラの家のドアを叩くと、アーントとカロリンが飛び出して来た。

「母ちゃん！」
「お母ちゃん！」
「アーント！カロリン！」

　グラシアは飛びついてきた子供たちを強く抱きしめた。

　クレアたちはマサラに礼を言ってから、グラシアたちを家に送っていく事にした。アーントとカロリンは、マサラがいくら食事をすすめても、母親が帰ってくるまで決して食事を食べようとはしなかったのだ。グラシアの家に着くと、そこには手つかずの食事がそのままだった。アーントとカロリンは母親が帰って来るまで、食事をずっと我慢していたのだ。

　クレアはグラシアに断って、かまどに火を入れ、ナベのミネストローネを温めた。お腹がグーグー鳴っている子供たちにミネストローネとりんごのパンをお腹いっぱい食べさせた。子供たちもグラシアも美味しいと言って食べてくれた。

　アーントとカロリンは、お腹がいっぱいになったのと、母親が帰って来て安心したのとでうつらうつらしだした。クレアはアーントを抱き上げ、メロディはカロリンを抱っこして、二人を寝室まで運んだ。

　クレアは居間のイスに座っているグラシアに声をかけた。

「グラシアさん、私が新しい仕事先を探して来ました。やってみますか？」
「ええ、どんな事でもします。やらせてください！」

　グラシアの熱意にクレアは微笑んで答えた。

「グラシアさん、貴女は王妃さまの侍女になってもらいます。もちろんアーントもカロリンも一緒です。住み込みでね」

　グラシアは驚いた顔をしてから、目に涙を浮かべて言った。

「クレアちゃん、メロディちゃん、ウェン。あなたたちには本当になんてお礼を言っていいか」
「お礼だなんて。私たちはアーントとカロリンのお母さんを思う気持ちに動かされて行動しただけです。でも元をただせば、グラシアさんがアーントとカロリンに心から愛情をそそいだ結果なんですよ？」

　グラシアは両手で顔をおおいながら泣き出した。クレアとメロディはグラシアの背中に手を置いて、彼女が泣き止むのを待った。

　再びゴンゾにちょっかいを出されてはたまらないという事で、グラシア親子の引越しは明日決行する事になった。クレアたちは夜遅くグラシアの家を辞した。