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騎士

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 クレアは顔を真っ赤にしているゴンゾをにらんで言った。

「グラシアさんは返してもらうわ」
「ならぬ!それはわしの女だ!」
「人が人を所有できる道理なんてないわ!グラシアさんは、彼女自身と子供たちのものよ!」
「おのれ、小娘がぬけぬけと!わしを誰だと思っているのだ。わしはこの王都で大きな力を持つ富豪なのだぞ?!貴様は花屋だと言ったな!わしが一言言えば城下町で働けなくしてやる事もできるのだぞ!」

 クレアは目を細めてゴンゾを見て言った。

「ふうん?貴方ってえらいのねぇ?だけどもし、私たちの方が貴方より位が高かったらどうするの?」
「バカを言え!そんな事が起きれば、はいつくばって頭を下げてやる!」
「その言葉忘れないでよね?」

 クレアはゴンゾから視線をメロディに向けて言った。

「メロディ、ちゃんと持ってきてる?」
「うん」

 クレアはうなずいてポケットからある物を取り出した。クレアはそれをゴンゾによく見えるように目の前に持ち上げて言った。

「この勲章は、タンドール国王陛下から賜った騎士の証よ?私たちは騎士の称号を賜ったの!富豪の貴方よりも位は上よ!」

 クレアとメロディが取り出した勲章を目の当たりにしたゴンゾはブルブルと震えながら叫んだ。

「バカな!お前たちのような小娘が何故国王陛下から騎士の称号を賜るというのだ!そんな物ニセモノだ!信じるものか!」
「嘘じゃないよ!王妃さまにお食事を持っていってもらったんだよ!」

 嘘だと言って信じないゴンゾに、メロディは胸をはって答えた。本当は王妃の命を救い、生まれた王子を追手の魔法使いから守った事により騎士の称号を授与されたのだが、その事をゴンゾに言うわけにはいかない。メロディはたたみかけて言った。

「ほら、よく見てよ。タンドール国の紋章が刻印されてるでしょ?」
「わしによく見せろ!」
「だめだよ!他人に触らせちゃダメだって王妃さまからもエレノアちゃんからも言われたもの!」

 クレアは、メロディとゴンゾが続けている低レベルな会話に割って入った。

「ゴンゾ。約束通り騎士である私たちに低頭して謝罪しなさい。それで今回の事は許してあげる」

 ゴンゾは顔を赤黒く染め、震える声でクレアたちに謝罪をした。クレアはふんっと息をはいて、グラシアをうながし部屋を後にした。

 
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