上 下
45 / 196

王族との食事

しおりを挟む
 次の日からクレアは王妃の食事を作る事にした。メロディの植物魔法で野菜を作り、クレアの水魔法でスープを煮た。家から城までは、ウェントゥスが大きくなってクレアたちを乗せてくれるので、食事は温かいうちに運ぶ事ができた。

 王妃の解毒はしたが、彼女の衰弱はひどかった。クレアは具のほとんど無い薄いスープを朝、昼、晩と少量飲ませた。

 次の日は少し野菜を大きくして食べさせた。少しづつだが王妃の体力は回復していった。国王はエレノア王女とクレアとメロディ以外の人間を王妃に近づけさせなかった。

 次第に王妃が元気になると、エレノア王女も共に食事をするようになった。エレノア王女は、美味しいと食べてくれた。王女の食べるものと、クレアの作る料理を比べたら天地の差があるだろう。クレアは恥ずかしくって仕方なかった。

 今日のお昼はミネストローネスープとハムとチーズのサンドイッチだ。エレノア王女は手づかみでかぶりついている。王妃は丁寧にサンドイッチを手でちぎって食べていた。皆で食べた方が美味しくといって、クレアもメロディもウェントゥスも一緒にお昼を食べている。

 クレアは不思議な気持ちになった。王族とは天の上の人々だと思っていたのに、今は食事を一緒にしているのだ。メロディはくつろいだ様子で王女と王妃と会話をしていた。

「えぇ!王妃さまって小さい頃、エレノアちゃんにそっくりだったの?!王妃さますごい美人なのに、信じられない!エレノアちゃん良かったね、将来は美人になるよ?」
「おいメロディ!それではわたくしが今ブスみたいではないか!将来も母上に似て美人なのだ!」

 メロディは王女と王妃にまるで遠慮なく話している。あまりの無礼な発言の連発に、クレアは冷や汗が止まらなかった。

 顔を真っ青にしているクレアに気づいたのだろう。王妃がクレアに優しげに声をかけてくれた。

「クレア、とっても美味しいわ。貴女は料理が上手なのね?」
「痛み入ります」

 クレアは蚊の鳴くような声で返事をした。メロディはニコニコ笑って王妃に言った。

「そうなんです王妃さま!クレアちゃんは工夫して美味しい料理を沢山作ってくれるんです!何たってうちにお金が無いから」
「まぁ、そうなの?」

 メロディの余計な発言にクレアは気が遠くなった。

 恐ろしい事に、たまに国王が王妃の部屋を訪ねて、共に食事をする事もあった。その日の夕食はビーフシチューだった。メロディがクレアのビーフシチューが美味しかったと言ったら、エレノア王女が食べたいと言い出したのだ。

 クレアたちがビーフシチューのナベを抱えて王妃の部屋に行くと、何と国王陛下も待っていたのだ。クレアは危うくナベを取り落とす所だった。

 国王もクレアのビーフシチューを美味しいとほめてくれた。クレアは国王と一緒に食事をするのは恐れおおいので、遠慮したかったのだが、メロディが自分もビーフシチューを食べたいと言うので、国王と一緒に夕食を食べた。クレアは緊張のあまり食事がのどを通らなかったので、クレアの残りはメロディが全部食べた。
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。

せいめ
恋愛
 メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。  頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。   ご都合主義です。誤字脱字お許しください。

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

チート幼女とSSSランク冒険者

紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】 三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が 過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。 神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。 目を開けると日本人の男女の顔があった。 転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・ 他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・ 転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。 そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語 ※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

王太子さま、側室さまがご懐妊です

家紋武範
恋愛
王太子の第二夫人が子どもを宿した。 愛する彼女を妃としたい王太子。 本妻である第一夫人は政略結婚の醜女。 そして国を奪い女王として君臨するとの噂もある。 あやしき第一夫人をどうにかして廃したいのであった。

天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生

西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。 彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。 精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。 晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。 死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。 「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」 晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。

異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ

トール
恋愛
会社帰り、駅までの道程を歩いていたはずの北野 雅(36)は、いつの間にか森の中に佇んでいた。困惑して家に帰りたいと願った雅の前に現れたのはなんと実家を模した家で!? 自身が願った事が現実になる能力を手に入れた雅が望んだのは冒険ではなく、“森に引きこもって生きる! ”だった。 果たして雅は独りで生きていけるのか!? 実は神様になっていたズボラ女と、それに巻き込まれる人々(神々)とのドタバタラブ? コメディ。 ※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています

裏切りの代償

志波 連
恋愛
伯爵令嬢であるキャンディは婚約者ニックの浮気を知り、婚約解消を願い出るが1年間の再教育を施すというニックの父親の言葉に願いを取り下げ、家出を決行した。 家庭教師という職を得て充実した日々を送るキャンディの前に父親が現れた。 連れ帰られ無理やりニックと結婚させられたキャンディだったが、子供もできてこれも人生だと思い直し、ニックの妻として人生を全うしようとする。 しかしある日ニックが浮気をしていることをしり、我慢の限界を迎えたキャンディは、友人の手を借りながら人生を切り開いていくのだった。 他サイトでも掲載しています。 R15を保険で追加しました。 表紙は写真AC様よりダウンロードしました。

処理中です...