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タンドール国の王妃

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 エレノア王女は嬉しそうにクレアたちに話した。

「母上は花が大好きなのじゃ。だからメロディの植物魔法で咲かせた花を見たら元気になるかと思っての」
「わぁっ!それはいい考えだね。エレノアちゃん」

 よりにもよってメロディは王女の事をエレノアちゃん呼ばわりだ。クレアは生きたここちがしなかった。だがエレノア王女の言葉に疑問を抱き、王女に質問した。

「エレノア王女。王妃さまはおかげんがお悪いのですか?」

 そこで嬉しそうに話していたエレノア王女の顔が、悲しそうにゆがんだ。メロディはエレノア王女の肩に手をそえて言った。

「エレノアちゃん。お母さんの所に案内して?」

 エレノアはコクリと素直にうなずいた。


 王妃の寝室は、クレアたちが通された客間とは違い、さらに豪華な作りだった。大きな天蓋付きのベッドに、一人の女性が横たわっていた。毛布をかけていてもよくわかる大きなお腹。王妃には子が宿っているのだ。

 だが王妃の顔は焦燥しきっていて、青白く正気がなかった。エレノア王女は王妃の枕元に走り寄り、言った。

「母上!この者たちは魔法を使う花屋なのです。母上の大好きなお花を見たらきっと元気になるわ!」

 王妃は娘の笑顔に笑った。だが返事をするのもおっくうそうだった。メロディは笑顔でエレノア王女に言った。

「エレノアちゃん。王妃さまの身体の様子を見せてもらってもいい?」

 エレノアはコクリとうなずいた。メロディは微笑むと、王妃に許可を取ってから王妃の両手の脈を取り、したまぶたを裏返して見たり、舌を出させたりしてからうなずいた。そしてエレノア王女が用意させたのだろう。沢山の植木鉢の一つを手に取って、植物魔法を発動させた。

 メロディの手が光り、植木鉢からはニョキニョキと植物が生えてきた。エレノア王女はメロディの魔法に大喜びだ。それは小さなむらさき色の花をつけたラベンダーだった。メロディは王妃のベッドの横のチェストに植木鉢を置くと優しい声で王妃に言った。

「王妃さま。この花は良い香りがします。どうか目を閉じてゆっくりと呼吸をしてください」

 王妃はメロディに言われた通り、目を閉じてしまった。エレノア王女は不満らしく、もっと魔法を見せてとメロディにねだった。メロディは笑顔でまた後でと言い。エレノア王女たちを王妃の寝室から出るよううながした。

 メロディはエレノア王女に言って、王妃の身の回りの世話をする使用人を呼んでもらった。その頃にはメロディの顔に笑顔はなく、いつになく厳しい顔をしていた。クレアは不安な気持ちでメロディの行動を見ていた。

 メロディは使用人たちに王妃の容態を聞いてうなずくと、エレノア王女に言った。

 誰にも話しを聞かれない部屋を用意してほしいと。エレノア王女にもメロディのただならない気配を感じたのだろう。不安そうにうなずいた。
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