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森の一夜
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野宿ができそうな平地に降り立つと、ドラゴンは元の小さな姿に戻った。クレアとメロディはテキパキと野宿の準備をした。キャスは何をすればいいのかわからずぼぉっと立っていると、クレアに怒鳴られた。さっさと枯れ木を探して来いという。
キャスはブツブツ文句を言いながら枯れ木を探した。クレアは綿と火打ち石で、枯れ木に火をつけた。そして大きなリュクッサックからナベやまな板、包丁を取り出した。メロディは地面に手をついている。メロディの手が光ると、地面から植物の芽がどんどん飛び出してきた。
メロディは植物魔法を使うのだ。メロディは、トマト、にんじん、じゃがいも、ズッキーニを作った。クレアが水魔法で野菜を洗って切っていく。ナベに水を入れて煮ていく。クレアは野菜たっぷりのトマトスープを作ってくれた。トマトスープはとても美味しかった。
食後の紅茶を飲み終えると、メロディが船をこぎだした。クレアは優しい声でもう寝るようにと言った。クレアはリュックサックから毛布を取り出すとメロディにかけてやった。メロディはパタンと横になるとスースー寝息をたてて眠ってしまった。
クレアはキャスにも毛布を渡し、自分も毛布を肩にかけた。小さなドラゴンのウェントゥスはパタパタと翼をはためかせてクレアの膝の上に乗って丸くなった。クレアはドラゴンの背中を優しく撫でながら、つぶやくように言った。
「ねぇ、キャス。貴方はコレットさんをからかっているの?」
「はぁ?!そんなわけないだろ!俺は心から彼女の事が好きなんだよ!」
「大きな声出さないで。メロディがおきちゃう。でもコレットさんは、貴方にからかわれていると思うから、容易に手に入らない花をプレゼントしてと言ったのよ?キャスは彼女の気持ちにちっとも気づいてないのね?」
「そんな、俺はコレットに嫌われていたのか」
「コレットさんは、貴方の真意がわからず不安なの」
「俺は、いつも彼女に振り向いてほしくて、姿を見かけるたびに声をかけてた。だけど彼女はいつも素っ気なかった。・・・。俺は元々城下町で生まれたんじゃない、引っ越して来たんだ。レンシ村から」
そこでクレアがギクリと身体を震わせた。いつもこうだ。キャスが出身地を言うたびに聞いた者は恐る。
レンシ村。何の特産物も無い小さな村だ。その村から悪魔が生まれた。ウィーペラ魔法団を作ったとされる最悪の魔法使いが生まれた村だ。勿論その魔法使いは、キャスが村に生まれるずっと以前に姿をくらませている。だがレンシ村は、ずっとその魔法使いのために悪意の対象にされているのだ。
クレアの怯えた態度に、キャスは鼻で笑って言った。
「クレア、お前だって俺が怖いんだろう?俺がウィーペラ魔法団の一味なんじゃないかって思うんだろう」
「はぁ?そんな訳ないでしょ?私はこないだウィーペラ魔法団の魔法使いに殺されかけたからびっくりしただけ。貴方みたいな腰抜けちっとも怖くないわ」
クレアは生意気な女だった。キャスはため息をついて言葉を続けた。
「俺が城下町に越して来た時、町の人たちが俺たち家族がレンシ村から来たと知ると、あからさまに俺たちを避けだした。子供はもっと露骨だ。俺は小さい頃町の子供たちにいじめられていた。お前も悪い魔法使いなんだろって。そんな時、彼女が、コレットが言ってくれたんだ。天才的な芸術家が生まれた村の人間は、皆天才的な芸術家だと思っているのかって。子供たちはコレットの言葉にポカンとしていた。コレットは冷静に言葉を続けた、子供とは思えないしっかりした言葉だった。あなたたちがキャスに言っている事はそれと同じだ。常識的にものを考えてから言葉を話せって。俺は、コレットの言葉に救われたんだ。俺たち家族は今も城下町で暮らしている」
「だったら、その事をコレットさんに言いなさいよ。貴方の本心を」
そんな事分かっている。だから一生懸命デートに誘おうとしたのだ。それなのに、二人きりになる時間も持つ事ができなかった。白いカンピオンの花。それだけが彼女と話すきっかけを作る唯一のものなのだ。
キャスはだんだん眠くなり、深い眠りに落ちていった。
キャスはブツブツ文句を言いながら枯れ木を探した。クレアは綿と火打ち石で、枯れ木に火をつけた。そして大きなリュクッサックからナベやまな板、包丁を取り出した。メロディは地面に手をついている。メロディの手が光ると、地面から植物の芽がどんどん飛び出してきた。
メロディは植物魔法を使うのだ。メロディは、トマト、にんじん、じゃがいも、ズッキーニを作った。クレアが水魔法で野菜を洗って切っていく。ナベに水を入れて煮ていく。クレアは野菜たっぷりのトマトスープを作ってくれた。トマトスープはとても美味しかった。
食後の紅茶を飲み終えると、メロディが船をこぎだした。クレアは優しい声でもう寝るようにと言った。クレアはリュックサックから毛布を取り出すとメロディにかけてやった。メロディはパタンと横になるとスースー寝息をたてて眠ってしまった。
クレアはキャスにも毛布を渡し、自分も毛布を肩にかけた。小さなドラゴンのウェントゥスはパタパタと翼をはためかせてクレアの膝の上に乗って丸くなった。クレアはドラゴンの背中を優しく撫でながら、つぶやくように言った。
「ねぇ、キャス。貴方はコレットさんをからかっているの?」
「はぁ?!そんなわけないだろ!俺は心から彼女の事が好きなんだよ!」
「大きな声出さないで。メロディがおきちゃう。でもコレットさんは、貴方にからかわれていると思うから、容易に手に入らない花をプレゼントしてと言ったのよ?キャスは彼女の気持ちにちっとも気づいてないのね?」
「そんな、俺はコレットに嫌われていたのか」
「コレットさんは、貴方の真意がわからず不安なの」
「俺は、いつも彼女に振り向いてほしくて、姿を見かけるたびに声をかけてた。だけど彼女はいつも素っ気なかった。・・・。俺は元々城下町で生まれたんじゃない、引っ越して来たんだ。レンシ村から」
そこでクレアがギクリと身体を震わせた。いつもこうだ。キャスが出身地を言うたびに聞いた者は恐る。
レンシ村。何の特産物も無い小さな村だ。その村から悪魔が生まれた。ウィーペラ魔法団を作ったとされる最悪の魔法使いが生まれた村だ。勿論その魔法使いは、キャスが村に生まれるずっと以前に姿をくらませている。だがレンシ村は、ずっとその魔法使いのために悪意の対象にされているのだ。
クレアの怯えた態度に、キャスは鼻で笑って言った。
「クレア、お前だって俺が怖いんだろう?俺がウィーペラ魔法団の一味なんじゃないかって思うんだろう」
「はぁ?そんな訳ないでしょ?私はこないだウィーペラ魔法団の魔法使いに殺されかけたからびっくりしただけ。貴方みたいな腰抜けちっとも怖くないわ」
クレアは生意気な女だった。キャスはため息をついて言葉を続けた。
「俺が城下町に越して来た時、町の人たちが俺たち家族がレンシ村から来たと知ると、あからさまに俺たちを避けだした。子供はもっと露骨だ。俺は小さい頃町の子供たちにいじめられていた。お前も悪い魔法使いなんだろって。そんな時、彼女が、コレットが言ってくれたんだ。天才的な芸術家が生まれた村の人間は、皆天才的な芸術家だと思っているのかって。子供たちはコレットの言葉にポカンとしていた。コレットは冷静に言葉を続けた、子供とは思えないしっかりした言葉だった。あなたたちがキャスに言っている事はそれと同じだ。常識的にものを考えてから言葉を話せって。俺は、コレットの言葉に救われたんだ。俺たち家族は今も城下町で暮らしている」
「だったら、その事をコレットさんに言いなさいよ。貴方の本心を」
そんな事分かっている。だから一生懸命デートに誘おうとしたのだ。それなのに、二人きりになる時間も持つ事ができなかった。白いカンピオンの花。それだけが彼女と話すきっかけを作る唯一のものなのだ。
キャスはだんだん眠くなり、深い眠りに落ちていった。
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