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キャス
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これで何軒目の花屋だろうか。キャスは大通りから外れた小道にある小さな花屋の前で二の足を踏んでいた。
この花屋で無いと言われたら、キャスにはなすすべがなかった。何度デートに誘っても、色よい返事をくれなかった彼女がやっと譲歩してくれたのだ。
私をデートに誘いたければ、白いカンピオンの花をプレゼントして。
キャスには聞きなれない花の名前だった。だがようやく彼女がデートを了承してくれるかもしれないのだ。キャスは喜び勇んで城下町で一番大きな花屋に向かった。
だが白いカンピオンは無かった。キャスは気を取り直して別な花屋に向かった。だが他の花屋にもなかった。そこでキャスは、彼女の欲しがっている花はとても珍しい花なのだと知った。
大通りから外れた小道にある花屋は、つい最近できたらしい。娘二人がやっている花屋だ。大きな花屋でも無かったのだ、きっとこの花屋でも無いのだろう。キャスは何件も花屋を回り、疲れてしまったのだ。
キャスは小さな花屋を遠目に見ながら何度も同じ場所を歩き回っていた。はた目から見たら完全に不審者だ。
「何かお探しですか?」
キャスがうんうんうなりながらウロウロ歩いていると、突然声をかけられた。そこには栗色の髪の毛と大きな茶色の瞳の可愛らしい少女が立っていた。キャスはドギマギしながら言った。
「あ、あの。白いカンピオンの花、ありますか?」
可愛らしい少女は、急に真剣な顔になって言った。
「お客さま、白いカンピオンをお探しですか?」
キャスがあいまいにうなずくと、少女は少しお待ちくださいと言って花屋の奥に引っ込んでしまった。キャスはどうすればよいのかわからず花屋の前で立ちすくんでいると、花屋からもう一人少女が出てきた。
キャスはぼう然としてしまった。とても美しい娘だったからだ。プラチナブロンドの髪、瞳はサファイアのように透き通っていた。美しい娘は機嫌悪そうにキャスに言った。
「お客さま、メロディに何か言いましたか?」
「は、はい。白いカンピオンの花が欲しいと言いました」
美しい娘は首をかしげた。すると、花屋から栗色の髪の少女が大きな本を抱えてもう然と走って来て叫んだ。
「お客さま!お待たせしました!白いカンピオンの花は、人が立ち入らない奥地の崖に生息するといわれています。クレアちゃん!あたし、ウェンと一緒に探してくる!留守番お願い!」
「メロディ。ちょっとお待ち」
栗色の髪の少女は、クレアと呼んだ娘にそれだけ言うと、再び花屋に駆け込もうとした。クレアがそれを止めて、キャスに向き直って言った。
「お客さま、何故白いカンピオンの花が必要なのですか?」
「ええ、彼女に言われたんです。白いカンピオンをプレゼントしてくれれば、デートしてくれるって」
それを聞いた、クレアという娘は、たいそう顔をしかめて言った。
「その女性の名前は?」
「?!。何で君にそんな事言わなけりゃいけないんだ?」
クレアの失礼な言い方に、キャスはカチンときてキツい口調で返した。
「危険な場所に咲いている花を取りに行くか検討するためです。ねぇ、メロディ。その花は珍しい花なの?」
クレアはキャスから視線を外して、メロディと呼んだ栗色の髪の少女に質問した。
「うん!とっても珍しいよ!ごくまれに高いがけの中腹に咲いてるんだって」
クレアはうなずいてキャスに向き直って言った。
「聞いた通りです。その彼女は貴方の誘いを断りたくて珍しい花をプレゼントしてと言ったのではありませんか?」
クレアの言葉にキャスは怒りが湧いたが、思い当たるふしもあった。彼女は、キャスがいくら話しかけても、気のない返事しか返してくれていなかった。もしかするとクレアの言う通りなのかも知れない。キャスは小声で言った。
「彼女の名はコレット」
クレアはうなずくと、キャスに三日後花屋の前に来るよう告げた。その日は花屋が休業日なのだそうだ。
この花屋で無いと言われたら、キャスにはなすすべがなかった。何度デートに誘っても、色よい返事をくれなかった彼女がやっと譲歩してくれたのだ。
私をデートに誘いたければ、白いカンピオンの花をプレゼントして。
キャスには聞きなれない花の名前だった。だがようやく彼女がデートを了承してくれるかもしれないのだ。キャスは喜び勇んで城下町で一番大きな花屋に向かった。
だが白いカンピオンは無かった。キャスは気を取り直して別な花屋に向かった。だが他の花屋にもなかった。そこでキャスは、彼女の欲しがっている花はとても珍しい花なのだと知った。
大通りから外れた小道にある花屋は、つい最近できたらしい。娘二人がやっている花屋だ。大きな花屋でも無かったのだ、きっとこの花屋でも無いのだろう。キャスは何件も花屋を回り、疲れてしまったのだ。
キャスは小さな花屋を遠目に見ながら何度も同じ場所を歩き回っていた。はた目から見たら完全に不審者だ。
「何かお探しですか?」
キャスがうんうんうなりながらウロウロ歩いていると、突然声をかけられた。そこには栗色の髪の毛と大きな茶色の瞳の可愛らしい少女が立っていた。キャスはドギマギしながら言った。
「あ、あの。白いカンピオンの花、ありますか?」
可愛らしい少女は、急に真剣な顔になって言った。
「お客さま、白いカンピオンをお探しですか?」
キャスがあいまいにうなずくと、少女は少しお待ちくださいと言って花屋の奥に引っ込んでしまった。キャスはどうすればよいのかわからず花屋の前で立ちすくんでいると、花屋からもう一人少女が出てきた。
キャスはぼう然としてしまった。とても美しい娘だったからだ。プラチナブロンドの髪、瞳はサファイアのように透き通っていた。美しい娘は機嫌悪そうにキャスに言った。
「お客さま、メロディに何か言いましたか?」
「は、はい。白いカンピオンの花が欲しいと言いました」
美しい娘は首をかしげた。すると、花屋から栗色の髪の少女が大きな本を抱えてもう然と走って来て叫んだ。
「お客さま!お待たせしました!白いカンピオンの花は、人が立ち入らない奥地の崖に生息するといわれています。クレアちゃん!あたし、ウェンと一緒に探してくる!留守番お願い!」
「メロディ。ちょっとお待ち」
栗色の髪の少女は、クレアと呼んだ娘にそれだけ言うと、再び花屋に駆け込もうとした。クレアがそれを止めて、キャスに向き直って言った。
「お客さま、何故白いカンピオンの花が必要なのですか?」
「ええ、彼女に言われたんです。白いカンピオンをプレゼントしてくれれば、デートしてくれるって」
それを聞いた、クレアという娘は、たいそう顔をしかめて言った。
「その女性の名前は?」
「?!。何で君にそんな事言わなけりゃいけないんだ?」
クレアの失礼な言い方に、キャスはカチンときてキツい口調で返した。
「危険な場所に咲いている花を取りに行くか検討するためです。ねぇ、メロディ。その花は珍しい花なの?」
クレアはキャスから視線を外して、メロディと呼んだ栗色の髪の少女に質問した。
「うん!とっても珍しいよ!ごくまれに高いがけの中腹に咲いてるんだって」
クレアはうなずいてキャスに向き直って言った。
「聞いた通りです。その彼女は貴方の誘いを断りたくて珍しい花をプレゼントしてと言ったのではありませんか?」
クレアの言葉にキャスは怒りが湧いたが、思い当たるふしもあった。彼女は、キャスがいくら話しかけても、気のない返事しか返してくれていなかった。もしかするとクレアの言う通りなのかも知れない。キャスは小声で言った。
「彼女の名はコレット」
クレアはうなずくと、キャスに三日後花屋の前に来るよう告げた。その日は花屋が休業日なのだそうだ。
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