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クレアが思う天才

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「ぐふぅっ」

 クレアは自身の腹に突然乗っかった重みにうめいた。いつものようにメロディの足がクレアの腹に乗っかっている。

 メロディと暮らし始めてから毎日これだ。何とかならないものだろうか。メロディはスヤスヤと幸せそうに眠っている。

 クレアはメロディの足を戻して、毛布をかけなおしてから、見るともなくメロディの寝顔を見つめていた。

 メロディはクレアの事をいつもほめる。クレアちゃんすごい。クレアちゃんって頭がいい。

 クレアは自分の事を頭がいいなどと思った事は一度もない。クレアが自分を客観的に評価するならば、小器用なのだ。どうやれば要領よくできるのかがわかるのだ。

 勉強でも魔法の訓練でも、店の経営でも。そこでいうとメロディの方が天才だと思う。

 メロディは小さい頃学校での勉強はできなかった。だがある一つの事においてはものすごい集中力を発揮した。

 すなわち植物の勉強だ。クレアたちを指導してくれた先生は、何とかメロディに勉強を好きになってもらおうと、持っている書物をメロディに見せてくれた。

 だがメロディは文字を読む事も苦手で、中々読書をしたがらなかった。クレアはメロディが勉強に興味を持ってくれればと思い、先生の書斎から物語の本を取り出してメロディに読ませようとした。

 しかしメロディは物語もつまらなそうだった。クレアがさらに本棚とにらめっこをしていると、メロディが一冊の本を取り出していた。

 その本は植物の専門書で、とてもわかりにくい文体で書かれていた。クレアはメロディは理解できないだろうと思い、別な本を探そうと言ったのだが、メロディはジッと本を見つめていた。

 結局、先生から借りる本は植物の専門書になった。その本は挿絵も沢山描かれているので見るだけでも綺麗だった。

 メロディはその日から、来る日も来る日も植物の専門書を読み続けた。あまりにも熱心に読んでいるので、クレアは意味がわかるのかとたずねると、メロディは本から目を離さないまま、段々読めるようになってきたと答えた。

 それからというもの、メロディは先生から次々と難しい植物の専門書を借りては読みふけっていた。ある時クレアにメロディが言った。

「クレアちゃん。あたしようやくわかったよ。植物たちがいつもお話ししてくれてる事の意味」

 クレアはメロディの言った言葉の意味がよくわからなかったので詳しく聞くと、メロディはいつも植物から語りかけられていたのだそうだ。だがメロディが扱える植物魔法は小さな植物の芽を出させるだけだった。それが先生の植物の専門書で知識を得た事により、ようやく植物魔法とがっちしたのだという。メロディがクレアに笑顔で言った。

「クレアちゃん、見てて」

 クレアの目の前でメロディか植物魔法を発動させる。彼女の手が輝くと、地面から沢山の植物の芽が現れ、グングンと大きくなった。バラ、ユリ、スイセン、シャクヤク。色とりどりの花が咲き乱れ、クレアはまるで夢を見ているようだった。

 その後メロディは語学と生物学の成績だけは人並みになった。数学、物理、化学は今まで通り苦手であったが。メロディは自分が学ぶべきものを見つけたのだ。クレアはそれでいいのだと思った。
 

 
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