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再会

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「お前、レオンか?」

 男の発言に、レオンも男の顔をジッと見つめた。レオンは驚いた声で叫んだ。

「父さん?!」
「レオン!大きくなったなぁ!十年ぶりか?!」
「十一年ぶりだよ!父さん!僕のアルを助けて!」
「アル?そいつがレオンの契約精霊なのか?」
「そうだよ!ねぇ、ジラードっていう魔物の親玉と戦っているんだ!」

 レオンの父、ロイドのとなりに立っている契約精霊のグラディウスが空を見上げながら言った。

「じゃあ、あれはアルスなのか?バカだなぁ上位神のアルスが人間界に来たら、力を使うのを限定されてしまうだろう」
「そうなんだ、グラディウス!もうすぐアルが戦えなくなっちゃうんだ!」

 レオンはグラディウスの服のそでを掴んで叫んだ。グラディウスはレオンの頭にポンと手を置いて笑った。

「安心しろ、レオン。俺とロイドが来たからな!レオンはここでおとなしく待っているんだぞ?」

 グラディウスはそう言って、レオンに防御ドームを張った。グラディウスと父のロイドはうなずきあうと、フワリと空中に浮き上がった。グラディウスの飛行魔法だ。

 グラディウスとロイドは剣を手に出現させ、ジラードに斬りかかった。ジラードが驚いているのが、レオンが遠目から見てもわかった。

 グラディウスとロイドは、アルスと息を合わせた戦いをしていた。レオンは手を組んでハラハラしながら戦況を見守った。

 もうすぐアルスの能力の限界がくる。もしそれまでにジラードとの決着がつかなければ、アルスは子供になって地上に落下してしまう。

 そうなれば人間になったアルスは死んでしまうだろう。レオンが防御ドームの中にいなければ、ツタ魔法で助けられるかもしれない。レオンはポケットから拳銃を出すと、引き金を引いた。

 激しい衝撃と共に、防御ドームが破壊された。レオンは駆け出してアルスたちが戦っている上空の下に走った。

 アルスとグラディウスとロイドの攻撃に、ジラードは次第に押され気味になった。ジラードの隙をつき、グラディウスがジラードの右手を剣ごと斬り落とした。

 ジラードは驚愕の表情をしていた。次の瞬間、アルスはジラードを一刀両断にした。

 やった。レオンは歓声を上げた。だが次の瞬間、レオンはかなぎり声をあげていた。アルスが子供の姿に戻ってしまった。

 アルスは神の力を失い、落下を始める。レオンは足元からツタ魔法を発動させ、アルスを受け止めようとした。だが落下速度のついたアルスはどんどん地上に近づいていた。

 せっかくジラードを倒せたのに、アルスが死んでしまうなんて。レオンは涙で目の前か見えなくなった。

 レオンがアルスの死を覚悟した瞬間、グラディウスが空中で小さなアルスをキャッチした。

 グラディウスはアルスを抱き抱えたまま、ロイドと共に無事地上に着地した。

 レオンは泣きながら走り、小さな手を振っているアルスに抱きついた。横目で、手を広げている父の姿が視界に入って、まずかったかなとは思った。

「アル、アル!良かった、もう会えないかと思った!」
「レオン。お前防御ドームを抜け出して、しょうのない奴じゃのう」
「アルが悪いんだろ!アルが死んじゃいそうになったから!」

 アルスは苦笑して、小さな手でレオンの頭を撫でながら答えた。

「ああ、心配かけてすまなかった」
「アルは死んじゃダメなんだ!僕が死ぬ時まで、ずっと僕の側にいなきゃダメなんだ!」
「ああ。オレ様は、ずっとレオンの側にいる。約束じゃ」

 レオンはアルスが約束をしてくれた事が嬉しくて、ずっと泣き続けていた。

 
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