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カッタの代償
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レオンとアルスは、カッタの側に駆け寄った。カッタは魔物の力で変わっていた黒くてトゲトゲの姿ではなく、元の人間の姿に戻っていた。
レオンはホッとしてカッタに声をかけた。
「カッタ。大丈夫?」
レオンはカッタに声をかけたが、カッタは無反応だった。カッタは目を開いているのに、レオンを見ていないようだった。まるで人形のようなカッタの状態に、レオンは不安になってとなりのアルスを見上げた。アルスは険しい顔をして、カッタを調べた。
アルスは重いため息を吐いてからレオンに口を開いた。
「心が無くなっている。・・・、レオン、こころして聞くのじゃ。カッタは召喚魔法を使って、魔物を呼び出し、契約してしまった。これは魔物と契約した代償じゃ」
「えっ?!じゃあカッタずっとこのままなの?!」
「そうかもしれない。もしかすると心が戻るかもしれない。それが一年後なのか十年後なのかオレ様にもわからん」
レオンはくちびるをかみしめた。レオンはごう慢で残酷なカッタが心の底から嫌いだった。だがそれはレオンに対してのカッタだ。カッタには両親がいて、両親はカッタの事を深く愛していた。カッタの両親が、今のカッタを見たら、とても悲しむだろう。
ふさぎこんでいるレオンに、アルスが言った。カッタを両親の元に送り届けてやろうと。レオンは力無くうなずいた。するとレオンの身体かフワリと浮いた。アルスが風飛行魔法を使ったのだ。
アルスとレオン、そして動く事も話す事もできなくなってしまったカッタは空中に浮き、カッタの自宅を目指した。
カッタの両親と、その契約精霊たちは、カッタの変わり果てた姿にたいそう悲しんだ。レオンとアルスがカッタの両親にわびると、彼らは涙ながらに否定した。
悪いのは自分たちの息子だ、レオンとアルスには何の罪もないと。アルスにうながされ、レオンはカッタの家を辞した。
カッタの家を出ると、アルスは子供の姿になった。レオンはアルスの小さな手を握りながら言った。
「ねぇ、アル。僕がカッタにできる事はなかったのかな?」
「何じゃレオン。カッタに殺されかけたのに、そんな事を考えておったのか?」
「うん。おかしいかな?」
「いいや。そんなレオンだからこそ、オレ様はレオンと契約したのじゃ」
「ありがとう、アル。ねぇ、僕がカッタにもっといきどおって、怨み事を言えば、そこまでカッタは僕を怨まなかったのかな?」
「そうかもしれん。そうじゃないかもしれん。過ぎてしまった事をあれこれ考えるのは無益な事じゃ。特にこれからの未来に生かせない事柄はな」
レオンは黙ってアルスの言葉を反すうしていた。そしてある決意を持って口を開いた。
「ねぇ、アル。これから北にある辺境の地に行きたいんだ」
「・・・。魔物とあいまみえる決意ができたのか?レオン」
「うん。本当言うと魔物は怖い。でも、魔物の脅威が王都の近くまで迫っているのなら、僕はそれを確かめたい。それに、父さんとグラディウスの手がかりが掴めるかもしれない」
「よし、そうと決まれば北へ出発じゃ!」
「うん!」
レオンとアルスは新しい目的地に歩き始めた。
レオンはホッとしてカッタに声をかけた。
「カッタ。大丈夫?」
レオンはカッタに声をかけたが、カッタは無反応だった。カッタは目を開いているのに、レオンを見ていないようだった。まるで人形のようなカッタの状態に、レオンは不安になってとなりのアルスを見上げた。アルスは険しい顔をして、カッタを調べた。
アルスは重いため息を吐いてからレオンに口を開いた。
「心が無くなっている。・・・、レオン、こころして聞くのじゃ。カッタは召喚魔法を使って、魔物を呼び出し、契約してしまった。これは魔物と契約した代償じゃ」
「えっ?!じゃあカッタずっとこのままなの?!」
「そうかもしれない。もしかすると心が戻るかもしれない。それが一年後なのか十年後なのかオレ様にもわからん」
レオンはくちびるをかみしめた。レオンはごう慢で残酷なカッタが心の底から嫌いだった。だがそれはレオンに対してのカッタだ。カッタには両親がいて、両親はカッタの事を深く愛していた。カッタの両親が、今のカッタを見たら、とても悲しむだろう。
ふさぎこんでいるレオンに、アルスが言った。カッタを両親の元に送り届けてやろうと。レオンは力無くうなずいた。するとレオンの身体かフワリと浮いた。アルスが風飛行魔法を使ったのだ。
アルスとレオン、そして動く事も話す事もできなくなってしまったカッタは空中に浮き、カッタの自宅を目指した。
カッタの両親と、その契約精霊たちは、カッタの変わり果てた姿にたいそう悲しんだ。レオンとアルスがカッタの両親にわびると、彼らは涙ながらに否定した。
悪いのは自分たちの息子だ、レオンとアルスには何の罪もないと。アルスにうながされ、レオンはカッタの家を辞した。
カッタの家を出ると、アルスは子供の姿になった。レオンはアルスの小さな手を握りながら言った。
「ねぇ、アル。僕がカッタにできる事はなかったのかな?」
「何じゃレオン。カッタに殺されかけたのに、そんな事を考えておったのか?」
「うん。おかしいかな?」
「いいや。そんなレオンだからこそ、オレ様はレオンと契約したのじゃ」
「ありがとう、アル。ねぇ、僕がカッタにもっといきどおって、怨み事を言えば、そこまでカッタは僕を怨まなかったのかな?」
「そうかもしれん。そうじゃないかもしれん。過ぎてしまった事をあれこれ考えるのは無益な事じゃ。特にこれからの未来に生かせない事柄はな」
レオンは黙ってアルスの言葉を反すうしていた。そしてある決意を持って口を開いた。
「ねぇ、アル。これから北にある辺境の地に行きたいんだ」
「・・・。魔物とあいまみえる決意ができたのか?レオン」
「うん。本当言うと魔物は怖い。でも、魔物の脅威が王都の近くまで迫っているのなら、僕はそれを確かめたい。それに、父さんとグラディウスの手がかりが掴めるかもしれない」
「よし、そうと決まれば北へ出発じゃ!」
「うん!」
レオンとアルスは新しい目的地に歩き始めた。
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