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母への贈り物

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 レオンとアルスは、冒険者の仕事を順調にこなしていた。レオンは冒険者の仕事料として、それまで見た事のない大金を手にした。それだけ冒険者の仕事が危険という事の裏づけにもなる。

 レオンは、お世話になった母のサンドラと、もう一人の母であるウィリディスに何か贈り物をしようと考えた。

 何か形に残るものがいいと思った。この考えは、無意識に自分が死んでしまうかもしれないという不安からだったのだろう。

 レオンは冒険者の仕事の中で、先輩冒険者の死を目の当たりにした。決して他人事ではない、レオンにだとて次の日におとずれるかもしれないのだ。

 レオンはアルスと一緒に、どんな贈り物がよいか必死に考えた。そして母とウィリディスにおそろいのペンダントを贈る事にした。

 レオンとアルスは宝飾店で、選びに選んで、ペリドットの宝石が四粒連なった、四葉のクローバーのデザインのペンダントに決めた。ペリドットは、とても澄んだグリーンの色をしていた。

 レオンとアルスは贈り物をたずさえ、久しぶりのわが家に帰った。母のサンドラとウィリディスは、レオンとアルスの贈り物を、とても喜んでくれた。二人ともすぐに身につけてくれて、肌身離さず持っていると言ってくれた。

 翌日レオンとアルスは、再び王都の冒険者協会に行くために家を出た。レオンは母に、父の情報を伝える事ができなかった。確証のある話しではないし、何より母をぬか喜びさせたくなかったのだ。レオンとアルスは、父とグラディウスと共にこの家に帰ると心に誓った。

 レオンとアルスが故郷の村から、乗り合い馬車の停留所まで歩いていると、おいと呼び止められた。

 レオンが声の相手に振り向くと、そこにはいじめっ子の元同級生カッタが立っていた。レオンはホッとして彼に話しかけた。ずっとカッタの事が気になっていたからだ。

「カッタ、村に戻っていたんだね?」
「母親との最後の別れは済んだか?俺は優しいからな。お前たちの命を取る前に、慈悲をくれてやったんだ」

 笑顔だったレオンは、むっとして言い返した。

「カッタ。まだ僕らの命を狙っているのか?」
「当然だ、お前たちはパンツァーのかたきだからな」
「パンツァーの事は残念だったけど、元はと言えばパンツァーとカッタが引き起こした事じゃないか。僕とアルスを殺そうだなんて、君はおかしいよ」
「レオン、テメェはずっと目障りだった。目の前を飛び回るハエを殺すだけだ。レオン、お前だけは生かしてはおけない。お前が神を召喚するなど、何かの間違いだ」

 やはりカッタの怒りの根源は、レオンが神であるアルスを召喚した事のようだ。レオンはアルスを召喚し、契約できた事が何よりも嬉しいのだ。もしアルスが神ではなく、力の弱い精霊だったとしても、レオンにとってはかけがえのない存在なのだ。

 レオンはだんだん腹が立ってきて叫んだ。

「カッタ、僕らを殺せるものなら殺してみろ!」
「その言葉、忘れるなよ?」

 カッタはニヤリと気味の悪い笑みを浮かべた。



 

 

 

 

 
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