召喚魔法で幼児が現れました僕がなりたい職業は保父さんではなく冒険者なのですが

襲撃

　翌朝レオンたちは、支度を整えてイエーリ団の根城があると思われる山へと歩みを進めた。

　ここからはイエーリ団と遭遇する危険性も増す、皆に緊張がはしった。レオンは沈黙の緊張に耐えられなくて、となりを歩くドンに、ずっと聞きたかった事を質問した。

「ドンさん。この山のどこかにイエーリ団のアジトがあるんですよね？」
「ああ。確かな情報すじでな」
「情報？」
「そうだ、俺たちは冒険者として依頼をこなす。冒険者たちに有益な情報をもたらしてくれる情報屋という仕事もあるんだ」
「情報屋？」
「ああ、隠密行動が得意な者がやる。敵に気づかれたらいっかんの終わりだ」

　ドンは、今回の依頼は、確かな情報を得て計画されたものだと答えた。レオンは関心すると同時に、わずかな不安も浮かんだ。もし敵のイエーリ団が、情報屋に気づいていて、わざと情報を流させたとしたら。

　レオンたちの前を歩くゴメスが急に立ち止まった。後ろのレオンたちを振り向き、厳しい声で言った。

「森がおかしい。動物たちの鳴き声がしない。ドン、戦闘態勢を取れ」

　ゴメスはドンに指示をすると、先頭を歩くドーグに耳打ちをして戻って来て言った。

「どうやらイエーリ団に俺たちがやって来る情報が漏れていたようだ」
「えっ？！まずいじゃん！」

　ゴメスの言葉にドンは明らかにどうようした。ゴメスはドンを無視して、腰の剣を抜き、構えた。ドーグ率いる冒険者たちは皆剣を抜き、戦闘態勢をとった。

　その直後、沢山のガラの悪い連中が森から飛び出して来た。ゴメスはドンに叫んだ。

「ドン！レオンとアルスを守れ！」
「そうするつもりだけど！あまり期待しないで！」

　ドンは震える声で呪文を詠唱した。レオンの腕の中のアルスが叫んだ。

「レオン！オレ様をおろせ！」

　レオンが言う通りにすると、アルスはレオンを見上げて鋭く言った。

「レオン！イエーリ団ともうす奴らは、見たところ剣のみだ。レオン、自分の周りにツタ魔法のバリケードを張れ！自分の身は自分で守れ！オレ様はドンに加勢する！」
「わかった！」

　レオンは自身の周りにツタ魔法の芽を作り出し、敵が来たならば、いつでも対抗できるようにした。

　アルスは、レオンをかばうように立って震えているドンに叫んだ。

「ドン！のん気に呪文を唱えているな！敵の攻撃が来るぞ！」

　アルスがそう叫んだ途端、ドンに向かって盗賊が斬りかかって来た。まだドンの魔法の詠唱は終わっておらず、ドンは攻撃魔法を使う事ができなかった。すかさずアルスが火攻撃魔法で、敵の盗賊を吹っ飛ばした。ドンは驚きの表情で小さなアルスを見下ろして叫んだ。

「アルス！すごい！本当に魔法が使えるんだな？！」
「何をのん気な！ドン！呪文を詠唱しないと魔法が使えないなら、敵が来てからでは遅い！ならば先に呪文を発生させて、放つだけにしろ！」

　ドンは幼いアルスの指示に神明にうなずいていた。ゴメスはかかんに盗賊たちと剣で戦っていた。剣の素人のレオンですら、ゴメスの剣技はすごかった。アルスもドンのフォローをしながら、見事な剣技じゃ、とほめていた。

　突然ゴメスがレオンに振り向いて叫んだ。

「レオン！後ろだ！」

　レオンが慌てて背後を振り向くと、そこには今にも剣を振り下ろそうとしている盗賊がいた。