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カッタのその後

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 レオンは驚きのあまり、すっとんきょうな声をあげた。

「えっ?!赤ちゃん?!どこからきたの?!」
「パンツァーじゃ」
「この子がパンツァーなの?!」
「ああ、精霊は死ぬ事はない。じゃが死ぬほどのケガを負えば、身体を最初から再生しなければいけない。パンツァーはこれから天界に戻り赤子から成長し直すのじゃ」

 スヤスヤと眠っている赤子をジッと見ていたカッタはひとり言のように言った。

「パンツァーが大きくなったら、また召喚してやる」
「それは無理じゃ。精霊が人間界の召喚に応じられるようになるまで約百年の年月がかかる。それまでお前は生きていまい」

 アルスの返答に、カッタは顔を青ざめさせて叫んだ。

「何だと?!じゃあ、もう一度召喚の儀式をして精霊と契約してやる!」
「それも無理じゃ。精霊族が精霊と契約できるのは一生に一度だけ。カッタ、お前は今後二度と精霊と契約できない」

 アルスの言葉に、カッタは顔を真っ青にさせて黙った。レオンはこの場にいたたまれなくなり、ずっと赤子になったパンツァーを見つめていた。するとパンツァーの姿は、まるでかすみのように薄れて消えてしまった。

 アルスは一言つぶやいた。天界に帰ったか、と。カッタは消えてしまったパンツァーがいた場所をジッとにらんでから、レオンたちに向かって叫んだ。

「お前たち!パンツァーのかたきだ!俺がこの手で必ず殺してやるからな!」

 カッタはそれだけ言うと、きびすを返して走り去って行った。レオンは元クラスメイトの背中を見つめながらアルスに言った。

「カッタはなんで僕を嫌うのかなぁ?」
「ふむ。レオンは何故カッタに殺したいほど怨まれるか分からんのか?」
「うん。小さな頃からカッタにいじめられていたんだ。うらむなら僕の方じゃない?」
「じゃが、レオンはカッタをうらんではいない」
「そうだね。学校を卒業したからもう会う事もないし」
「それじゃよ。カッタがいくらレオンをしいたげようとも、レオンは相手にしなかった。カッタはそれが面白くなかったのじゃ」
「?。どういう事?」
「よいか?ルーカスのように魔力が強くなっていじめる事ができなくなったわけではない。レオンは変わらず魔法は向上していないのに、カッタのいじめに屈する事はなかった。カッタにいじめられていた他の者どもは、皆カッタの軍門に下ったのであろう?」
「うん、そうだね。カッタにいじめられてた子たちは、皆カッタの子分になってた」
「レオンはカッタの子分にはならなかったのじゃな?」
「うん。暴力で人を従えるなんて間違っていると思うんだ」
「はは、レオンは本当にガンコじゃのう。己れの信念のために、甘んじて暴力を受け入れたか」
「暴力を受け入れたわけじゃないよ。勝ち負けじゃないけど、僕はカッタから暴力を受けても、それに屈したくなかったんだ」
「そうじゃな。カッタはきっと、そんなレオンに勝てないと思っていたのじゃろう」

 レオンはカッタがいなくなった場所をジッと見つめていた。
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