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カッタの敗北
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次第にカッタの顔色が悪くなってきた。レオンは思わずクスリと笑って言った。
「カッタ。君はまだ弱点を克服できていないようだね?」
カッタは苦しそうに顔をゆがめながら、レオンをにらんだ。カッタの弱点。それは、硬化魔法の発動条件として、息を止める必要があったからだ。
レオンは小さい頃から、硬化したカッタに殴られていたから、カッタの弱点はよく理解していた。小さな頃のカッタが硬化できるのはわずかな時間だった。
しかし成長したカッタは、肺活量の向上から、長く息を止められるようになった。そのため、硬化している時間も伸びた。だがずっと息を止めているにも限界がある。
カッタは、レオンのツタから抜け出せず、息を止めていられる限界に近づいているのだ。ついにカッタは大きく息を吐いた。レオンの巻きつけたツタが、一気に生身のカッタを締めあげる。カッタはギャアッと悲鳴をあげた。レオンは落ち着いた声で言った。
「カッタ。肋骨を締め上げているから、大きく深呼吸する事ができないだろ?君の負けだ。降参してくれ」
カッタはうらめしげな視線をレオンに向けたが、口から漏れでた言葉は、痛みによるうめき声だけだった。
もちろんレオンはカッタを傷つけたくはない。カッタとこれ以上戦いたくはないのだ。できれば契約精霊のパンツァーに言って、アルスとの戦いを止めてもらいたい。
突然アルスの叫び声が辺りに響き渡った。
「レオン!」
レオンがアルスの声がする方に視線を向けると、長身のアルスが、レオンを抱えこむように立っていた。アルスの背後には防御魔法の壁ができていた。壁の向こうには、沢山の刃物が落ちていた。
どうやらレオンはパンツァーに攻撃されて、アルスがレオンを助けてくれたようだ。レオンはホッとしてアルスに礼を言った。
「アル、ありがとう」
アルスはレオンを見下ろしながら、困った笑顔で言った。
「オレ様の考えが甘かった。パンツァーはオレ様ではなくレオンを攻撃した。もうオレ様は子供の姿に戻る」
アルスがそう言った途端、彼の身体はみるみるちぢまり、目の前の防御魔法も消えてしまった。
レオンはアルスを抱き上げながら、恐る恐る視線をパンツァーに向けた。パンツァーは笑いをかみ殺せない笑顔で叫んだ。
「ついに!ついに!憎きアルス神を殺す時が来た!」
レオンは背中に冷水を浴びたように背筋が寒くなった。パンツァーは本気でアルスを殺すつもりなのだ。レオンも巻き添えにして。
パンツァーを人間界から強制退場させる一つの手段がある。それはカッタをレオンが殺す事だ。カッタは今、レオンのツタでぐるぐる巻きにされている。レオンがツタを締めあげれば、カッタは締めつぶされて死ぬだろう。そうなればパンツァーは契約者を失い、天界に帰らなければいけない。
だがレオンはちゅうちょした。自分が助かるために誰かを殺す。本当にこれは正しい判断なのだろうか。しかもカッタは憎らしい相手とはいえ、元クラスメイトなのだ。
レオンは判断がつかなくて動きを止めていると、腕の中のアルスは冷静にパンツァーに言った。
「パンツァー、オレ様の負けだ。レオンの命は助けてくれ」
パンツァーはゲラゲラ笑いながら答えた。
「アルスさまはやはりおつむが悪い。こんな好機をのがすわけないではないですか。わたくしはアルスさまが、心底憎い。カッタはその小僧を殺してやりたいほど憎い。ならばわたくしに選択のよちはありません。苦しんで死ぬがいい!」
パンツァーは自身の鎧にすさまじい数の刃を出現させた。この刃が、これからレオンとアルスに襲いかかるのだ。
レオンの使える魔法は植物魔法。きっと発動させても、迫りくる刃によって切りきざまれてしまうだろう。
レオンは恐怖でギュッと目をつむった。
「カッタ。君はまだ弱点を克服できていないようだね?」
カッタは苦しそうに顔をゆがめながら、レオンをにらんだ。カッタの弱点。それは、硬化魔法の発動条件として、息を止める必要があったからだ。
レオンは小さい頃から、硬化したカッタに殴られていたから、カッタの弱点はよく理解していた。小さな頃のカッタが硬化できるのはわずかな時間だった。
しかし成長したカッタは、肺活量の向上から、長く息を止められるようになった。そのため、硬化している時間も伸びた。だがずっと息を止めているにも限界がある。
カッタは、レオンのツタから抜け出せず、息を止めていられる限界に近づいているのだ。ついにカッタは大きく息を吐いた。レオンの巻きつけたツタが、一気に生身のカッタを締めあげる。カッタはギャアッと悲鳴をあげた。レオンは落ち着いた声で言った。
「カッタ。肋骨を締め上げているから、大きく深呼吸する事ができないだろ?君の負けだ。降参してくれ」
カッタはうらめしげな視線をレオンに向けたが、口から漏れでた言葉は、痛みによるうめき声だけだった。
もちろんレオンはカッタを傷つけたくはない。カッタとこれ以上戦いたくはないのだ。できれば契約精霊のパンツァーに言って、アルスとの戦いを止めてもらいたい。
突然アルスの叫び声が辺りに響き渡った。
「レオン!」
レオンがアルスの声がする方に視線を向けると、長身のアルスが、レオンを抱えこむように立っていた。アルスの背後には防御魔法の壁ができていた。壁の向こうには、沢山の刃物が落ちていた。
どうやらレオンはパンツァーに攻撃されて、アルスがレオンを助けてくれたようだ。レオンはホッとしてアルスに礼を言った。
「アル、ありがとう」
アルスはレオンを見下ろしながら、困った笑顔で言った。
「オレ様の考えが甘かった。パンツァーはオレ様ではなくレオンを攻撃した。もうオレ様は子供の姿に戻る」
アルスがそう言った途端、彼の身体はみるみるちぢまり、目の前の防御魔法も消えてしまった。
レオンはアルスを抱き上げながら、恐る恐る視線をパンツァーに向けた。パンツァーは笑いをかみ殺せない笑顔で叫んだ。
「ついに!ついに!憎きアルス神を殺す時が来た!」
レオンは背中に冷水を浴びたように背筋が寒くなった。パンツァーは本気でアルスを殺すつもりなのだ。レオンも巻き添えにして。
パンツァーを人間界から強制退場させる一つの手段がある。それはカッタをレオンが殺す事だ。カッタは今、レオンのツタでぐるぐる巻きにされている。レオンがツタを締めあげれば、カッタは締めつぶされて死ぬだろう。そうなればパンツァーは契約者を失い、天界に帰らなければいけない。
だがレオンはちゅうちょした。自分が助かるために誰かを殺す。本当にこれは正しい判断なのだろうか。しかもカッタは憎らしい相手とはいえ、元クラスメイトなのだ。
レオンは判断がつかなくて動きを止めていると、腕の中のアルスは冷静にパンツァーに言った。
「パンツァー、オレ様の負けだ。レオンの命は助けてくれ」
パンツァーはゲラゲラ笑いながら答えた。
「アルスさまはやはりおつむが悪い。こんな好機をのがすわけないではないですか。わたくしはアルスさまが、心底憎い。カッタはその小僧を殺してやりたいほど憎い。ならばわたくしに選択のよちはありません。苦しんで死ぬがいい!」
パンツァーは自身の鎧にすさまじい数の刃を出現させた。この刃が、これからレオンとアルスに襲いかかるのだ。
レオンの使える魔法は植物魔法。きっと発動させても、迫りくる刃によって切りきざまれてしまうだろう。
レオンは恐怖でギュッと目をつむった。
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