27 / 108
アルスが幼児な理由
しおりを挟む
レオンが何も言えずに黙ってイスに座っていると、ガチャリとドアが開き、となりの部屋に行っていたアルスとトームが戻って来た。
アルスは何故か決まり悪そうな、不機嫌な表情をしていた。アルスはトテトテと危なっかしく走ると、レオンのひざにしがみついた。
レオンはアルスをひざの上に抱き上げながら、何を話していたのか聞いた。アルスは顔を背けて言いたくなさそうにした。
代わりに校長の肩に飛び乗った精霊のトームが口を開いた。
「アルスさま、いずれレオンにもわかる事です。せんえつながらわたくしめが説明させていただきます」
トームはレオンを見つめて言った。
「レオン、アルスさまが何故無力な幼児の姿として人間界に現れたかわかったのじゃ」
レオンは無意識にアルスをギュッと抱きしめた。トームが言いにくそうに重い口を開いた。
「それはな。レオン、お主の精神的な弱さが原因なのじゃ」
レオンはがく然とした。アルスが無力なのは、レオンが弱いせいなのだ。レオンはブルブル震え出した。アルスが、レオンから離されないように、ギュッとレオンの首にしがみついた。
トームはそんなレオンとアルスを見て、困った表情を浮かべて言った。
「のう、レオン。冒険者とはとても危険な職業じゃ。レオンが精神的に成長するまで、冒険者になるのはやめた方がよかろう」
「そう、ですね。僕が無理して冒険者になっては、アルを危険な目にあわせる事になってしまう」
レオンは自分の腕の中のアルスを見た。アルスは目に涙を浮かべ、怒った顔で言った。
「ダメじゃ!オレ様とレオンは冒険者になるのじゃ!レオン!お前にとっての冒険者とは、そんな簡単にあきらめられるような夢じゃったのか?!」
「っ!ち、違うよ。だけど、僕は、冒険者の夢よりも、アルの方が大事だ」
レオンの弱々しい言葉に、アルスは語気を荒げて叫んだ。
「レオンはオレ様が選んだ契約者じゃ!オレ様は天界から、レオンの事をずっと見ておった。レオンは、とてもガンコであきらめの悪い奴じゃ。レオンが小さい頃、近所のバァさんが、カッタとかいうクソガキに、大切にしていたペンダントを川に投げ捨てられた事があったじゃろう。それを聞いたレオンは、冷たい川の中に入って、ペンダントを探し続けた。当のバァさんがもういいっていうのに、レオンはガンとして探すのをやめなかった」
レオンは小さな頃の記憶を思い出した。レオンの母はお金を稼ぐために、町に果物を売りに行っていた。その間レオンは、近所の老夫婦に預けられていた。
老夫婦はレオンを実の孫のように可愛がってくれた。家族ぐるみの関係は、おじいさんが亡くなっても続いた。
ある日おばあさんが、カッタのイタズラを注意した事があった。カッタはそれに怒り、おばあさんがおじいさんから贈られた大切なペンダントを、彼女からむしり取り、川に投げ込んでしまったのだ。
おばあさんは高齢で、彼女の契約精霊は火の精霊だったため、川の中に入る事ができなかった。それを聞いたレオンは、大好きなおばあさんのペンダントを探すために川に入った。おりしも季節は冬にさしかかる頃、川の水は氷のように冷たかった。
おばあさんはレオンに、もうペンダントの事はいいから川からあがってくれと、こん願した。レオンはもう少しだけと、言う事を聞かなかった。レオンは知っていたのだ。おばあさんがペンダントを心から大切にしている事を。
月明かりが川を照らす頃、レオンはやっとペンダントを見つける事ができた。その後レオンは高熱をだして、一週間寝込んでしまった。レオンの世話をしてくれたおばあさんは、泣きながら怒って言った。
「レオン。私はね、ペンダントなんかよりも、レオンの方が大切なの。それは死んだおじいさんも同じよ?」
「おばあさん、心配かけてごめんなさい。これはね、僕のワガママなんだ。大好きなおばあさんに、大好きなおじいさんが贈ったペンダントをずっと持っていて欲しいって思ったんだ」
おばあさんは泣き崩れながら、レオンの手を取ってありがとうと言ってくれた。
レオンが幼い頃を思い出していると、目に涙を浮かべたアルスが怒った声で言った。
「レオンは、自分がこうと決めたら、絶対あきらめない奴じゃ!オレ様は、そんなレオンだから契約したいと思ったのじゃ!レオンが弱いのなら、強くなればよいではないか!オレ様は、レオンの強さをちゃんと知っておるぞ!」
アルスはそれだけ言うと、わんわんと泣き出した。レオンは胸が苦しくなって、アルスを抱きしめながら、言った。
「ごめん、アル。僕は、アルのためだっていいながら、逃げようとしていた。僕はもう逃げないよ」
レオンは強くなろうと心に決めた。
アルスは何故か決まり悪そうな、不機嫌な表情をしていた。アルスはトテトテと危なっかしく走ると、レオンのひざにしがみついた。
レオンはアルスをひざの上に抱き上げながら、何を話していたのか聞いた。アルスは顔を背けて言いたくなさそうにした。
代わりに校長の肩に飛び乗った精霊のトームが口を開いた。
「アルスさま、いずれレオンにもわかる事です。せんえつながらわたくしめが説明させていただきます」
トームはレオンを見つめて言った。
「レオン、アルスさまが何故無力な幼児の姿として人間界に現れたかわかったのじゃ」
レオンは無意識にアルスをギュッと抱きしめた。トームが言いにくそうに重い口を開いた。
「それはな。レオン、お主の精神的な弱さが原因なのじゃ」
レオンはがく然とした。アルスが無力なのは、レオンが弱いせいなのだ。レオンはブルブル震え出した。アルスが、レオンから離されないように、ギュッとレオンの首にしがみついた。
トームはそんなレオンとアルスを見て、困った表情を浮かべて言った。
「のう、レオン。冒険者とはとても危険な職業じゃ。レオンが精神的に成長するまで、冒険者になるのはやめた方がよかろう」
「そう、ですね。僕が無理して冒険者になっては、アルを危険な目にあわせる事になってしまう」
レオンは自分の腕の中のアルスを見た。アルスは目に涙を浮かべ、怒った顔で言った。
「ダメじゃ!オレ様とレオンは冒険者になるのじゃ!レオン!お前にとっての冒険者とは、そんな簡単にあきらめられるような夢じゃったのか?!」
「っ!ち、違うよ。だけど、僕は、冒険者の夢よりも、アルの方が大事だ」
レオンの弱々しい言葉に、アルスは語気を荒げて叫んだ。
「レオンはオレ様が選んだ契約者じゃ!オレ様は天界から、レオンの事をずっと見ておった。レオンは、とてもガンコであきらめの悪い奴じゃ。レオンが小さい頃、近所のバァさんが、カッタとかいうクソガキに、大切にしていたペンダントを川に投げ捨てられた事があったじゃろう。それを聞いたレオンは、冷たい川の中に入って、ペンダントを探し続けた。当のバァさんがもういいっていうのに、レオンはガンとして探すのをやめなかった」
レオンは小さな頃の記憶を思い出した。レオンの母はお金を稼ぐために、町に果物を売りに行っていた。その間レオンは、近所の老夫婦に預けられていた。
老夫婦はレオンを実の孫のように可愛がってくれた。家族ぐるみの関係は、おじいさんが亡くなっても続いた。
ある日おばあさんが、カッタのイタズラを注意した事があった。カッタはそれに怒り、おばあさんがおじいさんから贈られた大切なペンダントを、彼女からむしり取り、川に投げ込んでしまったのだ。
おばあさんは高齢で、彼女の契約精霊は火の精霊だったため、川の中に入る事ができなかった。それを聞いたレオンは、大好きなおばあさんのペンダントを探すために川に入った。おりしも季節は冬にさしかかる頃、川の水は氷のように冷たかった。
おばあさんはレオンに、もうペンダントの事はいいから川からあがってくれと、こん願した。レオンはもう少しだけと、言う事を聞かなかった。レオンは知っていたのだ。おばあさんがペンダントを心から大切にしている事を。
月明かりが川を照らす頃、レオンはやっとペンダントを見つける事ができた。その後レオンは高熱をだして、一週間寝込んでしまった。レオンの世話をしてくれたおばあさんは、泣きながら怒って言った。
「レオン。私はね、ペンダントなんかよりも、レオンの方が大切なの。それは死んだおじいさんも同じよ?」
「おばあさん、心配かけてごめんなさい。これはね、僕のワガママなんだ。大好きなおばあさんに、大好きなおじいさんが贈ったペンダントをずっと持っていて欲しいって思ったんだ」
おばあさんは泣き崩れながら、レオンの手を取ってありがとうと言ってくれた。
レオンが幼い頃を思い出していると、目に涙を浮かべたアルスが怒った声で言った。
「レオンは、自分がこうと決めたら、絶対あきらめない奴じゃ!オレ様は、そんなレオンだから契約したいと思ったのじゃ!レオンが弱いのなら、強くなればよいではないか!オレ様は、レオンの強さをちゃんと知っておるぞ!」
アルスはそれだけ言うと、わんわんと泣き出した。レオンは胸が苦しくなって、アルスを抱きしめながら、言った。
「ごめん、アル。僕は、アルのためだっていいながら、逃げようとしていた。僕はもう逃げないよ」
レオンは強くなろうと心に決めた。
11
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説
婚約破棄? そもそも君は一体誰だ?
歩芽川ゆい
恋愛
「グラングスト公爵家のフェルメッツァ嬢、あなたとモルビド王子の婚約は、破棄されます!」
コンエネルジーア王国の、王城で主催のデビュタント前の令息・令嬢を集めた舞踏会。
プレデビュタント的な意味合いも持つこの舞踏会には、それぞれの両親も壁際に集まって、子供たちを見守りながら社交をしていた。そんな中で、いきなり会場のど真ん中で大きな女性の声が響き渡った。
思わず会場はシンと静まるし、生演奏を奏でていた弦楽隊も、演奏を続けていいものか迷って極小な音量での演奏になってしまった。
声の主をと見れば、ひとりの令嬢が、モルビド王子と呼ばれた令息と腕を組んで、令嬢にあるまじきことに、向かいの令嬢に指を突き付けて、口を大きく逆三角形に笑みを浮かべていた。
【R18】溺愛される公爵令嬢は鈍すぎて王子の腹黒に気づかない
かぐや
恋愛
公爵令嬢シャルロットは、まだデビューしていないにも関わらず社交界で噂になる程美しいと評判の娘であった。それは子供の頃からで、本人にはその自覚は全く無いうえ、純真過ぎて幾度も簡単に拐われかけていた。幼少期からの婚約者である幼なじみのマリウス王子を始め、周りの者が
シャルロットを護る為いろいろと奮闘する。そんなお話になる予定です。溺愛系えろラブコメです。
女性が少なく子を増やす為、性に寛容で一妻多夫など婚姻の形は多様。女性大事の世界で、体も中身もかなり早熟の為13歳でも16.7歳くらいの感じで、主人公以外の女子がイケイケです。全くもってえっちでけしからん世界です。
設定ゆるいです。
出来るだけ深く考えず気軽〜に読んで頂けたら助かります。コメディなんです。
ちょいR18には※を付けます。
本番R18には☆つけます。
※直接的な表現や、ちょこっとお下品な時もあります。あとガッツリ近親相姦や、複数プレイがあります。この世界では家族でも親以外は結婚も何でもありなのです。ツッコミ禁止でお願いします。
苦手な方はお戻りください。
基本、溺愛えろコメディなので主人公が辛い事はしません。
死を回避したい悪役令嬢は、ヒロインを破滅へと導く
miniko
恋愛
お茶会の参加中に魔獣に襲われたオフィーリアは前世を思い出し、自分が乙女ゲームの2番手悪役令嬢に転生してしまった事を悟った。
ゲームの結末によっては、断罪されて火あぶりの刑に処されてしまうかもしれない立場のキャラクターだ。
断罪を回避したい彼女は、攻略対象者である公爵令息との縁談を丁重に断ったのだが、何故か婚約する代わりに彼と友人になるはめに。
ゲームのキャラとは距離を取りたいのに、メインの悪役令嬢にも妙に懐かれてしまう。
更に、ヒロインや王子はなにかと因縁をつけてきて……。
平和的に悪役の座を降りたかっただけなのに、どうやらそれは無理みたいだ。
しかし、オフィーリアが人助けと自分の断罪回避の為に行っていた地道な根回しは、徐々に実を結び始める。
それがヒロインにとってのハッピーエンドを阻む結果になったとしても、仕方の無い事だよね?
だって本来、悪役って主役を邪魔するものでしょう?
※主人公以外の視点が入る事があります。主人公視点は一人称、他者視点は三人称で書いています。
※連載開始早々、タイトル変更しました。(なかなかピンと来ないので、また変わるかも……)
※感想欄は、ネタバレ有り/無しの分類を一切おこなっておりません。ご了承下さい。
【完結】転移魔王の、人間国崩壊プラン! 魔王召喚されて現れた大正生まれ104歳のババアの、堕落した冒険者を作るダンジョンに抜かりがない!
udonlevel2
ファンタジー
勇者に魔王様を殺され劣勢の魔族軍!ついに魔王召喚をするが現れたのは100歳を超えるババア!?
若返りスキルを使いサイドカー乗り回し、キャンピングカーを乗り回し!
経験値欲しさに冒険者を襲う!!
「殺られる前に殺りな!」「勇者の金を奪うんだよ!」と作り出される町は正に理想郷!?
戦争を生き抜いてきた魔王ババア……今正に絶頂期を迎える!
他サイトにも掲載中です。
ドン引きするくらいエッチなわたしに年下の彼ができました
中七七三
恋愛
わたしっておかしいの?
小さいころからエッチなことが大好きだった。
そして、小学校のときに起こしてしまった事件。
「アナタ! 女の子なのになにしてるの!」
その母親の言葉が大人になっても頭から離れない。
エッチじゃいけないの?
でも、エッチは大好きなのに。
それでも……
わたしは、男の人と付き合えない――
だって、男の人がドン引きするぐらい
エッチだったから。
嫌われるのが怖いから。
悪役令嬢の選んだ末路〜嫌われ妻は愛する夫に復讐を果たします〜
ノルジャン
恋愛
モアーナは夫のオセローに嫌われていた。夫には白い結婚を続け、お互いに愛人をつくろうと言われたのだった。それでも彼女はオセローを愛していた。だが自尊心の強いモアーナはやはり結婚生活に耐えられず、愛してくれない夫に復讐を果たす。その復讐とは……?
※残酷な描写あり
⭐︎6話からマリー、9話目からオセロー視点で完結。
ムーンライトノベルズ からの転載です。
義兄に告白されて、承諾したらトロ甘な生活が待ってました。
アタナシア
恋愛
母の再婚をきっかけにできたイケメンで完璧な義兄、海斗。ひょんなことから、そんな海斗に告白をされる真名。
捨てられた子犬みたいな目で告白されたら断れないじゃん・・・!!
承諾してしまった真名に
「ーいいの・・・?ー ほんとに?ありがとう真名。大事にするね、ずっと・・・♡」熱い眼差を向けられて、そのままーーーー・・・♡。
【R18】清掃員加藤望、社長の弱みを握りに来ました!
Bu-cha
恋愛
ずっと好きだった初恋の相手、社長の弱みを握る為に頑張ります!!にゃんっ♥
財閥の分家の家に代々遣える“秘書”という立場の“家”に生まれた加藤望。
”秘書“としての適正がない”ダメ秘書“の望が12月25日の朝、愛している人から連れてこられた場所は初恋の男の人の家だった。
財閥の本家の長男からの指示、”星野青(じょう)の弱みを握ってくる“という仕事。
財閥が青さんの会社を吸収する為に私を任命した・・・!!
青さんの弱みを握る為、“ダメ秘書”は今日から頑張ります!!
関連物語
『お嬢様は“いけないコト”がしたい』
『“純”の純愛ではない“愛”の鍵』連載中
『雪の上に犬と猿。たまに男と女。』
エブリスタさんにて恋愛トレンドランキング最高11位
『好き好き大好きの嘘』
エブリスタさんにて恋愛トレンドランキング最高36位
『約束したでしょ?忘れちゃった?』
エブリスタさんにて恋愛トレンドランキング最高30位
※表紙イラスト Bu-cha作
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる