召喚魔法で幼児が現れました僕がなりたい職業は保父さんではなく冒険者なのですが

帰還

　レオンと眠ったまま起きないアルスは、ルーカスとシルフィに連れられて、城下町の宿屋に向かった。そこにはラウラとフレアがいるのだ。

　レオンが再試験のための依頼を受ける事になったため、急きょ宿を取ったのだ。宿屋の主人に頼んで、レオンとアルスの部屋も取ってもらった。

　ルーカスはここがラウラとフレアの部屋だ、と指差した。もう真夜中だ。きっとラウラたちは眠っているだろう。レオンたちは物音を立てないように、静かに廊下を通り過ぎようとした。その途端、バタンとラウラの部屋のドアが開き、ラウラが顔を出した。

　どうやら彼女はまだ眠っていなかったようだ。レオンの顔を見ると、こわばっていた表情が、柔らかい笑顔になった。

「良かった。レオン、アルス。二人が無事に帰って来て。レベル1の山賊退治だから大丈夫だと思っていたけど、やっぱり心配したわ」
「ごめん、ラウラ。心配してくれてありがとう。山賊たちはアルスが魔法でやっつけてくれたよ」

　どうやらラウラは、レオンたちの受けた依頼が、手違いでレベル20だった事を知らないようだ。レオンは本当の事は言わないで、ラウラにお休みのあいさつをした。

　レオンはルーカスたちと別れて、あてがわれた部屋に入ると、ほっと息を吐いた。

　抱っこしているアルスをベッドに寝かせ、自分はベッドに腰をかけた。

　レオンたちは翌朝、故郷の村に帰る。本来ならば冒険者試験が終わっらた、すぐに村に帰る予定だった。しかしレオンが試験に落ちてしまったため、予定を変更してルーカスたちは城下町に泊まる事になったのだ。

　きっと母とウィリディスはとても心配しているだろう。レオンはぐっすりと眠っているアルスを見つめた。

　これから三ヶ月間の研修に入る。研修後の試験に受からなければ、冒険者になれないのだ。はたして幼いアルスを連れて、無事に研修を終わらせて、試験に合格できるだろうか。

　先の事は今考えていても仕方がない。レオンはベッドに入り目を閉じた。

　翌朝レオンたちは城下町の屋台で簡単な朝ごはんを食べてから、精霊の村まで戻った。

　ルーカスとシルフィは、ラウラたちとレオンたちを家まで送り届けてくれた。

　家のドアを開けると、母のサンドラが飛びついて来た。

「ああ。レオン、アルス。お帰りなさい。帰りが遅いから心配したわ？」

　サンドラの横には、ホッとした顔のウィリディスが立っていた。レオンは苦笑してから、母とウィリディスにこれまでのいきさつを話した。

「それでね、僕は冒険者見習いになったんだ。だからこれから研修を受けなきゃいけないんだ」
「そう。でもまた冒険者試験を受ける機会ができたのね？良かったわね、レオン」

　それまでモヤモヤしていたレオンだったが、母の肯定的な言葉に、少し気分が楽になった。

　母は一呼吸おいてから、そういえばと話し出した。

「レオン、学校から連絡があって。校長がレオンとアルスに会いたいんですって」

　レオンは首をかしげた。卒業した学校の校長が、レオンとアルスに一体なんの用だろうか。