召喚魔法で幼児が現れました僕がなりたい職業は保父さんではなく冒険者なのですが

盛平

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新しい家族

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 レオンは学校が終わると、喜び勇んで家に帰り着いた。母のサンドラと契約精霊のウィリディスはレオンと契約精霊の帰りを今か今かと待っていたようだ。レオンがドアを開けると、サンドラがレオンに抱きつき、頬にキスをして言った。

「お帰りレオン。母さんに貴方の精霊を紹介して?」
「だだいま。母さん、ウィリディス。この子はアルスだよ」
「まぁ!なんて可愛いの?!レオンの小さい頃にそっくり!」

 サンドラはアルスを上手に抱き上げると、彼に頬ずりをした。アルスもまんざらではなさそうだ。サンドラはアルスを見つめながら言った。

「アルス、これからレオンをよろしくね?」
「もちろんじゃ!大船に乗った気持ちでいるがよい!」

 レオンとサンドラとアルスが嬉しそうにしていると、やはりウィリディスが片ひざをつき、低頭しながら言った。

「アルスさま、お久しゅうございます」
「おお、ウィリディスか。これから世話になるぞ」
「はい。かしこまりました」

 ウィリディスの固苦しい態度に、レオンとサンドラは顔を見合わせた。それを見たアルスがウィリディスに言った。

「おい、ウィリディス。そうかしこまるでない。レオンも母者も困っておるだろう」
「ですが、アルスさま。そういうわけにはいきません!」

 ウィリディスがなおもしぶっているので、レオンは耐えかねて質問した。

「ねぇ、ウィリディス。なんで精霊たちは皆アルスに頭を下げるの?」

 ウィリディスはレオンにとってもう一人の母のような存在だ。自然態度にも気やすさが出る。レオンの質問に、ウィリディスは顔を真っ青にして叫んだ。

「レオン!アルスさまに対してなんて口の聞き方!アルスさまはね、私たちのずっと上の存在なの!」

 ウィリディスの剣幕に、レオンもサンドラもポカンとしていた。ウィリディスは、ずっと一緒に暮らしている家族が事の重大さをちっとも理解していないと思ったのだろう、顔をこわばらせながら説明した。

「いい?サンドラ、レオン。貴方たちの世界でいうと、私たち精霊は平民、アルスさまは王さまのようなお方なの!」

 ウィリディスは、どうだこれでわかっただろうという表情になったが、レオンとサンドラは顔を見合わせたままだ。レオンは仕方なく正直な感想をいった。

「ウィリディス。アルスがすごいという事は何となくわかったけど、何か実感がわかないんだよね。だって僕たち、この国の王さまなんて見た事ないし」
「そうよねぇ。私もこの村を一度も出た事無いし。王さまがこの国を支配しているといっても、よくわからないわ」

 サンドラもアルスに頬ずりしながら言葉を続ける。そんなレオンたちに対して、ウィリディスは顔を真っ赤にしながら叫んだ。

「もう!ほんわか親子なんだから!」

 それまでサンドラに大人しく抱っこされていたアルスは、ウィリディスを困った顔で見て言った。

「ウィリディス。オレ様がいいと言っている。オレ様に気を使うでない、気を使われると肩がこって仕方がない」
「・・・。はい、アルスさま。かしこまりました」

 アルスの頼みに、ウィリディスは渋々というかたちでうなずいた。

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