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トランド城の戦場跡

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 あかりの目の前に真っ暗な空間の穴が出現した。狼の霊獣ノックスの闇空間魔法だ。ノックスはぐったりしたグリフを背中に乗せて、あかりたちに空間魔法の穴に早く入れとせかす。あかりはヴイヴィアンの手をギュッと握りながら歩き出した。あかりはトランド城で戦っているゼノたちの事が心配で仕方なかった。狼の霊獣ルプスが言っていた。フードの魔物がトランド城にもいたと。つまりゼノたちは今フードの魔物と戦っているのだ。

 あかりは、自分を孫のように可愛がってくれたゼノの事を思い出した。ゼノの契約精霊のノーマ、ゼノの孫娘エイミーと契約霊獣のピピ。それにあかりの先輩になるテイマーのバートと霊獣ポー。そしてトランド国王。あかりを優秀なテイマーだと言ってくれた。皆無事だろうか、ルプスの仲間が救助に行ってくれた。きっと大丈夫だ。だが、あかりは自身の目でしっかりと皆の安全を確認しなければ安心できなかった。

 ふとヴイヴィアンがあかりの手をギュッと握った。あかりがヴイヴィアンに視線を向けると、彼女は柔らかな笑顔で言った。

「あんずるなメリッサ。トランド国王は勇者クリフォードなのだぞ?召喚士ゼノどのと精霊ノーマもいてくれる。皆きっと無事だ」

 あかりは自分では気づかないうちに不安な表情をしていたのだろう。元気づけてくれたヴイヴィアンにあかりは笑顔で礼を言った。

 あかりたちは大所帯なので皆列を作って空間魔法の穴をくぐって行く。何度目かの空間魔法をくぐると、あかりの目の前にトランド城が見えた。トランド城からは、精霊ノーマの土魔法だろう、巨大なツタが城の屋根やら壁から飛び出していた。あまりの光景に、あかりはキャァッと声をあげた。霊獣ノックスが言う。

『次の空間魔法で城内に入る。戦える者が先に行け』

 白馬アポロンがアスランにノックスの通訳をする。アスランとヴイヴィアンがうなづいて空間魔法の穴をくぐった。あかりはヴイヴィアンに、状況が確認できるまでここで待機といわれてしまった。あかりは固唾を飲んで真っ暗な空間のを見つめていた。すると、アスランがひょっこりと顔を出して、あかりたちに入ってくるように手まねきした。

 あかりは不思議がりながらも空間魔法の中に入った。そこはあかりも以前行った事のある王の間だった。だがそこは見る影もなく破壊されていた。あかりは目の前にゼノたちが笑顔で立っているのを見つけた。あかりは嬉しくなって走り出し、勢いよくゼノに抱きついた。ゼノは優しくあかりを抱きしめてくれた。

「ゼノおじいちゃん!」
「メリッサ、ケガはないかの?」
「うん、皆が守ってくれたから平気。ゼノおじいちゃんたちは?」
「ああ、何とか無事じゃぞ」

 あかりはゼノの胸から顔を上げて周りを見ると、エイミーたちもボロボロだが無事なようだ。あかりがゼノに聞いた。

「ゼノおじいちゃん、フードの魔物は?」
「ああ、倒した。そして操られていた霊獣と精霊も解放できた。じゃがな、フードの魔物、バモンが最後に言っておったのじゃ。自分は必ず再生してまたわしらを倒しにくると。おそらくバモンは自分の分身を安全な所に置いているはずじゃ」

 ゼノが渋面を作りながら言うと、あかりはあっけらかんと答えた。

「あら、もう一人のフードの魔物はアスランたちが倒したわよ?」
「何じゃと?!」

 ゼノは驚いてアスランを見た。アスランはのんびりとした笑顔でうなずいて答えた。

「はい、ゼノどの。城にいたフードの魔物とそっくりな魔物は、姉と私でトドメをさしました」

 なんと。ゼノは口の中で小さく呟いた。アスランの姉ヴイヴィアンは、トランド国王の足元にひざまずき固い声で言った。

「トランド国王陛下、有事の際に駆けつけられず面目次第もありません」

 平身低頭頭を下げるヴイヴィアンに、トランド国王は穏やかな声で言った。

「何を申す、勇者ヴイヴィアンよ。東の果てでもう一人の魔王バモンを倒した事、大儀であった。もともとお主に依頼をする時、宰相と意見が分かれてのぉ。正攻法で城に来てもらうか、奇をてらって東に行ってもらおうか考えておったのじゃ。だがここは本来の通り城に来るよう依頼したが、結果オーライじゃった!」

 そう言い切ってトランド国王はごうかいに笑った。だがしばらくすると、王の間を見回して気弱な声で言った。

「ガロアが帰って来て、この城を見たら激怒するじゃろうなぁ」

 ガロアとはトランド国王の宰相の事だ。あかりはトランド国王の側に近寄って言った。

「国王さま、このお城が元に戻ればいいんですよね?それなら大丈夫です。セレーナ、お願いできる?」

 あかりは、後ろにひかえていたヒョウのセレーナに言った。セレーナは微笑んで答えた。ええ。勿論よ、と。

 セレーナが自身の水魔法を発動させる。大きな水のかたまりが沢山出現して、城の破壊された壁や床に付着する。水のかたまりはキラキラと輝き出し、ゆっくりと元に戻っていった。しばらくすると、あかりがおとずれた事のある豪華な王の間に戻った。

 

 

 

 
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