上 下
212 / 212

パティの家族3

しおりを挟む
 パティたちは食堂で、楽しい夕食のひと時を持った。

 エリオは、エラルドが生真面目な性格である事がわかってから、何かにつけてエラルドをからかって怒らせていた。その度にコジモとゼゴが二人を止めている。

 もうパティは気にしない事にした。デイジーとマイラはロレーナが可愛くて仕方ないのか、何くれと話しかけ世話を焼いていた。

「ねぇ、ロレーナ。今日は私の家に泊まりなさいな。パティもデイジーもいるし」
「わぁ、いいんですか?嬉しい!」

 マイラの提案にロレーナも乗り気だ。デイジーは少し考える素振りをして言った。

「ねぇ、マイラ。パティとロレーナがベッドを使うとして、あたしとマイラはどこに寝るの?」
「決まってるじゃない。私がソファを使って、デイジーはマックスと床で寝るのよ」
「それってひどくない?!」
「ひどくないわよ。だってデイジーはいつも野宿じゃない」
「・・・。それもそうね」

 納得してしまったデイジーを見て皆笑った。マイラはそんな事を言っているけれど、本当はマイラとパティとロレーナ三人でベッドを使って、ソファはデイジーにゆずるつもりなのだ。

 マイラはそういえばと言ってパティを見た。

「パティが教えてほしいと言っていた畑のお手伝いの依頼が来ているわよ」
「本当?マイラ」

 パティは冒険者協会の受付のマイラにいつもお願いしているのだ。あまり報酬を出せないけれど、とても困っている人の依頼が来たら教えてほしい、と。

「ええ。何かの病気なのか小麦の発育が悪いんだって。土魔法を使う冒険者を依頼しているわ。ソバラという小さな村なんだけど。馬車で行けば五日かかる場所ね」

 農家のお手伝いならば、土魔法を使うチャーミーがいてくれれば大丈夫だ。

「わかったわ、マイラ。私たち今夜出発する」
「えっ?!もう夜よ?明日の朝に出発したら?」
「ううん。農家の人たちの朝は早いから、朝に到着して一緒にお手伝いした方がいいわ」
 
 パティは言うが早いか、席を立つとマイラとデイジーの側まで来た。

「マイラお姉ちゃん、デイジーお姉ちゃん。キスして?」
 
 マイラとデイジーはとびきりの笑顔でパティを抱きしめてから頬にキスをしてくれた。パティは次にトグサの前に立った。トグサは笑顔でパティを抱きしめてくれる。

「お父さん、」
「行っておいで、パティ。君が経験する一つ一つの事は、すべて君の糧になる」
「はい!」

 パティはエリオとコジモの前に立つ。

「エリオお兄ちゃん」
「暴れて来い!パティ」
「もう、畑のお手伝いに行くだけだよ」
「甘い、どんな時でも気を抜いてはだめだ!」
「はい!」
「コジモお兄ちゃん」
「パティ、気をつけてね?マックスたちがいるから大丈夫だと思うけど、」
「大丈夫、心配しないで?」

 次にパティはロレーナを抱きしめた。

「ロレーナ、私の可愛い妹」
「パティお姉ちゃん」

 パティはエラルドとゼゴの側に立った。

「エラルドお兄ちゃん」
「パティ。お前は妹であると同時に俺の弟子だ。杖の訓練は怠るなよ?」
「はい!」
「ゼゴさんも、行ってきます」
「う、ああ」

 ゼゴはどうしてよいかわからないようで、居心地悪そうにうなずいた。

 パティはマックスたちと共に食堂を出た。

 マイラたちは外までパティを見送りに出てくれた。

 パティは肩に乗ったピンキーにお願いをした。

 ピンキーは大きな鳥になり、マックスとチャーミーは小さくなって、アクアの入っているショルダーバッグに飛び込んだ。

 マイラが手を振りながら言った。

「パティ!何か困った事があったら私にすぐに知らせるのよ?」
「そうしたら、あたしたちがすぐに助けに行くからね!」

 デイジーも手を振りながら言ってくれた。

「ありがとう、皆。行ってきます」

 ピンキーに乗ったパティは夜空に飛び立った。

 頬に当たる夜風は少し冷たい。だがパティの心はポカポカにあたたかかった。

 ショルダーバッグの中のマックスがワンワンと鳴いた。

 家族と別れて寂しいかと聞いているのだ。

「そうね。本当の事言うと、出発を明日にして、今夜はマイラたちと一緒に過ごしたかった。でもね、私は冒険者だもの。困っている人がいるなら、一分でも一秒でも早く助けに行かなきゃ。皆、協力してくれる?」
「ワンワン!」
「ニャー!」
「プクプク!」

 マックスとチャーミーとアクアが元気よく返事をしてくれる。パティたちを乗せてくれているピンキーがピーと鳴いた。

 パティは笑いながら星が瞬く夜空を見つめた。


 

 
しおりを挟む
感想 2

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(2件)

ririka
2024.07.21 ririka

とっても面白いです!一気に読んでしまいました!
新鮮な切り口で、これからのお話が愉しみです!

盛平
2024.07.22 盛平

メッセージありがとうございます。これからも書いていきますので、読んでいただけたら嬉しいです♪

解除
きんお(僧侶)

ここまで一気読みさせていただきました
とても面白いです!
これからの冒険が楽しみです!
これからも更新、どうぞよろしくお願い申し上げます🌷🌷🌷🌷🌷

盛平
2024.07.19 盛平

メッセージありがとうございます。毎日投稿する予定なので読んでいただけたらとても嬉しいです☺️

解除

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

劣等生のハイランカー

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す! 無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。 カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。 唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。 学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。 クラスメイトは全員ライバル! 卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである! そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。 それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。 難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。 かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。 「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」 学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。 「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」 時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。 制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。 そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。 (各20話編成) 1章:ダンジョン学園【完結】 2章:ダンジョンチルドレン【完結】 3章:大罪の権能【完結】 4章:暴食の力【完結】 5章:暗躍する嫉妬【完結】 6章:奇妙な共闘【完結】 7章:最弱種族の下剋上【完結】

俺は普通の高校生なので、

雨ノ千雨
ファンタジー
普通の高校生として生きていく。その為の手段は問わない。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

あなたの冒険者資格は失効しました〜最強パーティが最下級から成り上がるお話

此寺 美津己
ファンタジー
祖国が田舎だってわかってた。 電車もねえ、駅もねえ、騎士さま馬でぐーるぐる。 信号ねえ、あるわけねえ、おらの国には電気がねえ。 そうだ。西へ行こう。 西域の大国、別名冒険者の国ランゴバルドへ、ぼくらはやってきた。迷宮内で知り合った仲間は強者ぞろい。 ここで、ぼくらは名をあげる! ランゴバルドを皮切りに世界中を冒険してまわるんだ。 と、思ってた時期がぼくにもありました…

ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~

ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。 そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。 そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。

ダンジョン美食倶楽部

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
長年レストランの下働きとして働いてきた本宝治洋一(30)は突如として現れた新オーナーの物言いにより、職を失った。 身寄りのない洋一は、飲み仲間の藤本要から「一緒にダンチューバーとして組まないか?」と誘われ、配信チャンネル【ダンジョン美食倶楽部】の料理担当兼荷物持ちを任される。 配信で明るみになる、洋一の隠された技能。 素材こそ低級モンスター、調味料も安物なのにその卓越した技術は見る者を虜にし、出来上がった料理はなんとも空腹感を促した。偶然居合わせた探索者に振る舞ったりしていくうちに【ダンジョン美食倶楽部】の名前は徐々に売れていく。 一方で洋一を追放したレストランは、SSSSランク探索者の轟美玲から「味が落ちた」と一蹴され、徐々に落ちぶれていった。 ※カクヨム様で先行公開中! ※2024年3月21で第一部完!

ジャンヌ・ガーディクスの世界

西野 うみれ
ファンタジー
近くで戦闘勝利があるだけで経験値吸収。戦わずして最強になる見習い僧侶ジャンヌの成長物語。 オーガーやタイタン、サイクロプロス、ヘカトンケイレスなど巨人が治める隣国。その隣国と戦闘が絶えないウッドバルト王国に住むジャンヌ。まだ見習い僧兵としての彼は、祖父から譲り受けた「エクスペリエンスの指輪」により、100メートル以内で起こった戦闘勝利の経験値を吸収できるようになる。戦わずして、最強になるジャンヌ。いじめられっ子の彼が強さを手に入れていく。力をつけていくジャンヌ、誰もが無意識に使っている魔法、なかでも蘇生魔法や即死魔法と呼ばれる生死を司る魔法があるのはなぜか。何気なく認めていた魔法の世界は、二章から崩れていく。 全28話・二章立てのハイファンタジー・SFミステリーです。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。