196 / 212
ジョナサンの不安2
しおりを挟む
ゴンゾはぼんやりと虚空を見つめながら、ひとり言のように呟いた。
「俺が、俺たちが間違っていた事は、自分でよくわかっているんだ。パティはいい子だ。だけど、もう取り返しがつかなかった」
「そうだな。パティをドミノ村から追い出して、無かった事にすればいい。そうすればドミノ村の人々がパティにしてきた事は無になる」
「・・・。神父、俺はどうすればいいんだ。パティに対してこんなひどい事をして、」
「ゴンゾがパティにできる事は何もない。パティはゴンゾもドミノ村の人々も誰も許さない。だかな、もしまたドミノ村に、容姿の異なる者が来た時、その者が助けを求めていたら、どうか助けてやってほしい。それが、パティにできる唯一の罪滅ぼしだ」
「・・・。ああ、」
ジョナサンとゴンゾが話していると、教会のドアが乱暴に叩かれ、村人が転がるように飛び込んできた。
「神父さま!大変だ!ガラの悪い奴らが大勢で現れて、神父さまを出せって!」
ジョナサンは不安な気持ちになりながらゴンゾと共に教会を出た。
ドミノ村の広場には、村人たちと見た事のない者たちが待っていた。その中に見覚えのある者。村を追い出されたマフサだ。
「何だ、治癒魔法師はジジイなのか」
目の細い男が不満そうに言った。マフサがとりなすように答える。
「はい。神父のジョナサンは老人ですが、治癒魔法の腕は王都の治癒魔法師とひけを取りません」
細目の男とマフサの話しから察するに、どうやら彼らはジョナサンを捕まえに来たようだ。
ジョナサンの命一つで村人が助かるならば安いものだ。だが。ジョナサンの脳裏に可愛い孫娘の顔が浮かぶ。
パティはジョナサンにまたね、とあいさつして王都に帰って行ったのだ。
パティとはもう二度と会えないと思うと激しい悲しみが去来する。
「何もんだお前ら。神父はこの村になくてはならない人だ。帰ってくれ」
ジョナサンを守るように長身のゴンゾが立ちはだかった。
「やめろゴンゾ!」
ジョナサンの静止も虚しく、ゴンゾはジョナサンをとらえようとしたガラの悪い男たちを吹っ飛ばしてしまった。
《パワー》の魔法は強力だ。だがゴンゾの魔法は戦いのためではなく、土木建築のための魔法だ。人を倒すものではない。
細目の男が気味の悪い笑みを浮かべて剣を抜いた。ゴンゾが構える。
次の瞬間、ゴンゾの左腕が宙を舞った。
「ギャアッ!」
ゴンゾのケモノのような叫びが村に響き渡った。
「俺が、俺たちが間違っていた事は、自分でよくわかっているんだ。パティはいい子だ。だけど、もう取り返しがつかなかった」
「そうだな。パティをドミノ村から追い出して、無かった事にすればいい。そうすればドミノ村の人々がパティにしてきた事は無になる」
「・・・。神父、俺はどうすればいいんだ。パティに対してこんなひどい事をして、」
「ゴンゾがパティにできる事は何もない。パティはゴンゾもドミノ村の人々も誰も許さない。だかな、もしまたドミノ村に、容姿の異なる者が来た時、その者が助けを求めていたら、どうか助けてやってほしい。それが、パティにできる唯一の罪滅ぼしだ」
「・・・。ああ、」
ジョナサンとゴンゾが話していると、教会のドアが乱暴に叩かれ、村人が転がるように飛び込んできた。
「神父さま!大変だ!ガラの悪い奴らが大勢で現れて、神父さまを出せって!」
ジョナサンは不安な気持ちになりながらゴンゾと共に教会を出た。
ドミノ村の広場には、村人たちと見た事のない者たちが待っていた。その中に見覚えのある者。村を追い出されたマフサだ。
「何だ、治癒魔法師はジジイなのか」
目の細い男が不満そうに言った。マフサがとりなすように答える。
「はい。神父のジョナサンは老人ですが、治癒魔法の腕は王都の治癒魔法師とひけを取りません」
細目の男とマフサの話しから察するに、どうやら彼らはジョナサンを捕まえに来たようだ。
ジョナサンの命一つで村人が助かるならば安いものだ。だが。ジョナサンの脳裏に可愛い孫娘の顔が浮かぶ。
パティはジョナサンにまたね、とあいさつして王都に帰って行ったのだ。
パティとはもう二度と会えないと思うと激しい悲しみが去来する。
「何もんだお前ら。神父はこの村になくてはならない人だ。帰ってくれ」
ジョナサンを守るように長身のゴンゾが立ちはだかった。
「やめろゴンゾ!」
ジョナサンの静止も虚しく、ゴンゾはジョナサンをとらえようとしたガラの悪い男たちを吹っ飛ばしてしまった。
《パワー》の魔法は強力だ。だがゴンゾの魔法は戦いのためではなく、土木建築のための魔法だ。人を倒すものではない。
細目の男が気味の悪い笑みを浮かべて剣を抜いた。ゴンゾが構える。
次の瞬間、ゴンゾの左腕が宙を舞った。
「ギャアッ!」
ゴンゾのケモノのような叫びが村に響き渡った。
34
お気に入りに追加
435
あなたにおすすめの小説
【完結】神スキル拡大解釈で底辺パーティから成り上がります!
まにゅまにゅ
ファンタジー
平均レベルの低い底辺パーティ『龍炎光牙《りゅうえんこうが》』はオーク一匹倒すのにも命懸けで注目もされていないどこにでもでもいる冒険者たちのチームだった。
そんなある日ようやく資金も貯まり、神殿でお金を払って恩恵《ギフト》を授かるとその恩恵《ギフト》スキルは『拡大解釈』というもの。
その効果は魔法やスキルの内容を拡大解釈し、別の効果を引き起こせる、という神スキルだった。その拡大解釈により色んなものを回復《ヒール》で治したり強化《ブースト》で獲得経験値を増やしたりととんでもない効果を発揮する!
底辺パーティ『龍炎光牙』の大躍進が始まる!
第16回ファンタジー大賞奨励賞受賞作です。
転生先の異世界で温泉ブームを巻き起こせ!
カエデネコ
ファンタジー
日本のとある旅館の跡継ぎ娘として育てられた前世を活かして転生先でも作りたい最高の温泉地!
恋に仕事に事件に忙しい!
カクヨムの方でも「カエデネコ」でメイン活動してます。カクヨムの方が更新が早いです。よろしければそちらもお願いしますm(_ _)m
竜焔の騎士
時雨青葉
ファンタジー
―――竜血剣《焔乱舞》。それは、ドラゴンと人間にかつてあった絆の証……
これは、人間とドラゴンの二種族が栄える世界で起こった一つの物語―――
田舎町の孤児院で暮らすキリハはある日、しゃべるぬいぐるみのフールと出会う。
会うなり目を輝かせたフールが取り出したのは―――サイコロ?
マイペースな彼についていけないキリハだったが、彼との出会いがキリハの人生を大きく変える。
「フールに、選ばれたのでしょう?」
突然訪ねてきた彼女が告げた言葉の意味とは――!?
この世にたった一つの剣を手にした少年が、ドラゴンにも人間にも体当たりで向き合っていく波瀾万丈ストーリー!
天然無自覚の最強剣士が、今ここに爆誕します!!
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
劣等生のハイランカー
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す!
無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。
カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。
唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。
学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。
クラスメイトは全員ライバル!
卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである!
そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。
それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。
難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。
かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。
「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」
学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。
「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」
時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。
制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。
そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。
(各20話編成)
1章:ダンジョン学園【完結】
2章:ダンジョンチルドレン【完結】
3章:大罪の権能【完結】
4章:暴食の力【完結】
5章:暗躍する嫉妬【完結】
6章:奇妙な共闘【完結】
7章:最弱種族の下剋上【完結】
家庭菜園物語
コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。
その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。
異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる