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活動開始

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 パティはドアの開く音で目を覚ました。ドアの前にはガラと見張りの男が立っていた。

「あら、パティ。起きたのね?私はお手洗いに行かせてもらっていたの」

 何がお手洗いだ。昨夜はずっとこの部屋にいなかったではないか。パティはそ知らぬ顔で答えた。

「そうだったんですね。では私とロレーナも行っていいでしょうか?」

 後ろにひかえていた見張りは無言でうなずく。パティはロレーナをゆり起こす。

「むにゃむにゃ。お腹いっぱい」
「起きて、ロレーナ」
「ふぁ、パティ。おはよう」
「おはよう、ロレーナ。ねぇ、お手洗い行こう?」
「おてあらい?。!。行きたい!行きたい!」

 ロレーナはそこで初めて尿意に気づいたようだ。彼女は下腹部を押さえてピョンピョン飛んでいる。これは一刻のゆうよもなさそうだ。

「見張りさん!早くお手洗いに連れてってください!」

 パティの剣幕に見張りはたじろぎながらうなずく。パティも見張りもロレーナも走って手洗い場に急いだ。

 ロレーナが用をたしている間は、パティと見張りが外で待つ。これはパティとロレーナが手洗い場の窓から脱走しないためのようだ。

 パティは何気なさをよそおって見張りに質問した。

「ねぇ、見張りさん。アンチ魔法を持っている人はこの屋敷に何人いるの?」
「そんな事聞いてどうする」

 見張りはギロリとパティをにらむ。パティも負けずににらみ返した。

「私はロレーナの姉なんです!妹の安全を守るのが最優先事項なんです!」
「・・・。この屋敷にアンチ魔法を持つ者は二人。一人は娘たちの見張り、そしてもう一人は俺だ」

 パティはハッとして見張りをにらんで叫んだ。

「ロレーナに近づかないで!」
「今は魔法を解除している。だがな、お前と妹がおかしなまねしたら、すぐにアンチ魔法を発動させるからな」

 パティは無言でうなずいた。パティとロレーナが注意すべき相手は二人のアンチ魔法使い。

 パティはロレーナと交代でお手洗いに行った。ロレーナはスッキリした後ぐずり出した。

「ねぇ、見張りのおじさん。私お腹空いたぁ。ねぇ、なんか食べさせてよぉ」
「とらえた娘たちの食事は一日一回、昼時だ。それまで我慢しろ!」

 ロレーナはお腹が空いたと騒ぎ出す。これはパティたちが屋敷の使用人たちとコンタクトを取るための作戦なのだが、ロレーナは本当に腹を空かせているようだ。ロレーナのとなりに立っているパティの耳に、たえず彼女の腹の虫の音がしている。

「私たち昨日から何も食べていないんです。どうか早めに食事をいただけないでしょうか?」

 パティも一緒になってお願いすると、見張りは舌打ちをしながらうなずいた。
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