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ロレーナのひとり言5

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 何はともあれロレーナは力強い味方を得たのだ。鈍感な兄エラルドは、パティへの好意にまったく気づかず、パティはエラルドに一歩引いた態度を取っている。

 二人をくっつけたいと考えているロレーナはお手あげ状態だったのだ。

 ロレーナはマイラにソワソワしながら質問した。

「マイラさん。パティはお兄ちゃんの事どう思ってるんでしょうか?」

 マイラはくすくす笑って、自分をマイラと呼ぶよう言ってから答えた。

「パティはエラルドにとても感謝しているわ。何たって自分に戦う技術を教えてくれた人だもの」
「・・・。それだけですかね?マイラ、」
「ロレーナは、パティのエラルドに対す
る態度が何か気になるの?」

 ロレーナはしばらく黙りこんだあと、口を開いた。この事をマイラに言うのが怖かった。この話しを聞いて、マイラはエラルドとパティの恋路を応援するのをやめてしまうのではないかと思った。

「あの、パティは、お兄ちゃんの事怖がっているみたいなの」
「・・・。ロレーナはパティの事をよく見ているのね」
 
 ロレーナはハッとしてマイラの目を見つめた。

「パティはお兄ちゃんの事嫌いなのかなぁ?!」

 マイラは優しい目でロレーナを見て答えた。

「そんな事ないわよ。だけどロレーナが気づいた事も事実だわ。パティはね、男の人が怖いの」
「!。じゃあ、パティはお兄ちゃんの恋人になんかなりたくないのね」

 ロレーナはしょんぼりしてしまった、パティの姉のマイラに否定されたらもうおしまいだ。

 ロレーナはふと頭に柔らかな感触を感じた。見上げると、マイラが頭を撫でてくれていた。

「ロレーナ、私の話しを聞いてくれる?」

 ロレーナはこくりとうなずいた。マイラは微笑んでから口を開いた。

「私は冒険者協会の受付をしているから、人を見る目は確かよ。パティに初めて会った時、この子はきっと素晴らしい冒険者になるって確信した。だけど、同時にとても不安になった」

 ロレーナがマイラを見ると、彼女はさびしげな笑みを浮かべていた。

「パティはね、心に大きな傷を抱えていたの。パティは表面上はとても笑顔だったけど、常にオドオドしていた。私を怖がっていたのよ」

 マイラの発言にロレーナはとても驚いた。ロレーナはパティから、姉のマイラの大好きなところをいつも聞かされていたからだ。マイラは苦笑しながら話しを続けた。

「このままではパティのせっかくのいいところが育たないと思った。だから私の信頼する冒険者パーティにパティを預ける事にしたの」

 ロレーナはパティの話しをぼんやり思い出していた。

 パティはお世話になった冒険者たちを自分の家族だと言っていた。

 トグサは頭が良くて、パティが質問すると何でも答えてくれるお父さん。エリオはにぎやかでいつもパティを笑わせてくれる明るいお兄ちゃん。コジモはパティにいつもお菓子をくれたり、これ美味しいよといってご飯を分けてくれる優しいお兄ちゃん。そしてデイジーは強くて美人でカッコいい自慢のお姉ちゃん。

 パティは彼らの話しをする時、いつも楽しそうだ。だが彼らもパティの恐怖の対象だったのだ。
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