究極妹属性のぼっち少女が神さまから授かった胸キュンアニマルズが最強だった

マフサの誓い2

　マフサの足は自然と故郷のドミノ村へ向かっていた。郷愁の念にかられたわけではない。パティを殺すための資金を得なければいけないからだ。

　ドミノ村には両親が住んでいる。脅せばいくばくかの金が手に入るだろう。もし足りなければ村長の家に推しいればいい。

　マフサは考えをめぐらせながら、ドミノ村までの道のりを、休む事なく歩き続けた。

　マフサは三日歩き続けてドミノ村に到着した。冒険者になるために村を出てから初めての帰郷だった。

　マフサが自宅のドアを乱暴に開けると、そこには驚いた顔の両親がいた。マフサは震える母親をにらみながら怒鳴った。

「おい、金を用意しろ！この家の金すべてを出せ！」

　それまで震えていた母親が、鬼のような形相でどなり返した。

「家の金だって？！バカな事言うんじゃないよ！あんたのせいで私たちが大変だっていうのに！」

　マフサは叫び続けている母親の醜い顔を横目で見ていた。母親はヒステリックな叫び声で言った。

　どうやらトマが先にドミノ村に戻り、マフサが冒険者としてやってきた事がらをすべて話してしまったようだ。

　マフサは自身の魔法《ファイャーハンド》で、依頼された悪党たちを焼き殺していた。それが村長の耳に入り、マフサはドミノ村を追放される事に決まったようだ。

　それはどうでもいい事だ。ドミノ村のようなしみったれた村、こちらから出て行ってやる。

　だが連帯責任として、マフサの両親もドミノ村を追放される事になったようだ。マフサは母親の話しに興味をなくし、古びた室内を見回した。何か金目のものはないかと探してみたが、何もなかった。

　それまで黙っていた父親がビクビクしながらマフサに言った。

「な、なあ、マフサ。お前は冒険者で大金を稼いだんだろう？父さんと母さんはこれまでマフサを大事に育ててやったんだ。マフサの金を父さんたちにも分けてくれないか？」

　それまでギャァギャァと耳障りな叫び声をあげていた母親がピタリと止まり、いやらしい笑顔になって父親に続いた。

「そうだわね、マフサ。どれだけ稼いだんだい？私たちを王都に連れてってくれよ。そこで三人で暮らそうよ」

　マフサは欲にまみれた両親にへどが出そうになった。

「はっ、久々に戻ってみれば、お前たちは本当に根っからクズだったんだな。ドミノ村を追い出されて、どこででも野垂れ死にな！」

　マフサはそれだけ言うと家から出た。十五年過ごした家。もう二度と戻る事はないだろう。

　マフサはその足でドミノ村を出た。両親の金などそこまであてにしてはいなかった。

　マフサは王都に向かって馬車道を歩き続けた。道すがら、三人組の徒歩の商人に出会った。

　金のある商人は、馬車に乗り護衛もつけているが、この商人たちは貧いのだろう。商品を入れたリュックを背負って必死に歩いている。

　マフサはふと自分の腰に手を当てた、腰には大剣がある。冒険者の依頼料はすべて豪華な飲食代や宿代に消えた。唯一残ったものは、箔をつけようと購入した大剣だった。

　マフサは強力な火魔法を有していたので、剣を使う事はなかった。

　マフサは商人たちの目の前におどり出ると、おもむろに剣を抜いて叫んだ。

「有金全部置いてけ。そうすれば命だけは助けてやる！」
　
　商人たちは真っ青な顔になり、金の入った麻袋を放り出すと、慌てて逃げて行った。

　マフサは簡単に金を手にいれる事ができた。力のある者は、金を得る事などたやすいのだ。

　マフサは剣を鞘におさめ、金の入った麻袋を拾い上げると、ニヤリと笑った。