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カイルの好きな人
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カイルは焚き火の炎を見ながら、明日の作戦を練っていた。ふと気づくと、リリアーヌが自分の事をジッと見つめていた。カイルは不思議に思って聞いた。
「リリアーヌ、まだ何かあるのか?」
リリアーヌは、しまったというような顔になり、慌てて取りつくろうように答えた。
「えっ?!べ、別に大した事じゃないんだけど。カイルはさ、誰かを好きになった事ないの?」
「好き?」
リリアーヌは突然変な事を言い出した。カイルはふしんがりながらも素直に答えた。
「好きな奴いるぞ?父さんに母さん、トランだ」
「家族じゃなくって」
カイルの答えに、リリアーヌがふふくそうに言った。
「もっといるぞ。レッドアイと、」
そこでカイルは口をつぐんだ。自分はこの後何を言おうとしたのか。目の前にいる天使のリリアーヌの名前を言いそうになったからだ。リリアーヌは尊い天使だ。卑しい人間のカイルが好意をよせていい相手ではないのだ。
カイルの動揺に気づかないリリアーヌは、レッドアイもカイルの家族みたいなものでしょ。と不機嫌そうに言った。カイルは話題を変えなければと思い、口を開いた。
「前世で好きだった奴らは、ホセとサイラスだ。生まれ変わってわかったんだ。ホセとサイラスは、現世の家族みたいなものだった」
カイルの言葉にリリアーヌは少し驚いた顔をしてから、優しい笑顔になって言った。
「前世のカイルにも家族がいて良かった」
リリアーヌの笑顔に、カイルは何故か胸が苦しくなった。
翌日カイルたちは領主の屋敷に向かった。散々考えた結果、トーマスを部屋に監禁しておくのが一番という答えにいたった。だがトーマスが、抗議に来たトーノマ族と冒険者たちの小競り合いにわってはいらなくても、トーノマ族と冒険者がケガをしたり死んでしまったら元も子もない。
そのためカイルは、サイラスとレッドアイをトーマスの部屋の前に立たせて逃げ出さないようにさせた。最初トーマスは部屋に監禁される事を嫌がったが、カイルたちの説得にしぶしぶ同意してくれた。
カイルは安心して、領主が雇った冒険者たちと共に、トーノマ族たちを待った。しばらくすると、トーノマ族の男たちの団体が屋敷のドアを叩いた。カイルたちが屋敷の外に出てみると、ものものしい雰囲気のトーノマ族たちが手に武器を持って立っていた。
どう見ても穏やかな話し合いには思えなかった。カイルはため息をつきながら、冒険者の男たちとトーノマ族たちの話し合いを聞いていた。トーノマ族たちはしきりにトーマスをここに呼べと言っている。冒険者たちはそれをつっぱねていた。
カイルはそこで違和感に気づいた。一番トーマスを憎んでいるモンスの姿が見えないのだ。カイルはハッとしてトーノマ族の団体をくまなく調べた。やはりモンスがいない。
そこへ血相を変えたサイラスとレッドアイが駆け寄って来た。
「師匠!すまねぇ、トーマスが部屋から逃げた」
「何故だ?!レッドアイも見張っていたのに!」
カイルの厳しい言葉に、サイラスとレッドアイはしょげてしまった。レッドアイが申し訳なさそうに言った。
『ゴメン、カイル。オレ、トーマスノニオイズットカイデタ。ヘヤニイルトオモッタラ、フクノニオイダッタ』
カイルは思わず舌打ちをした。トーマスはレッドアイが鼻が効くとわかっていたから、自分が着ていた衣服を脱いで、別な服を着て外に出たのだろう。トーマスはお坊ちゃんなのに、いつも窓から出入りしているようだ。
「リリアーヌ、まだ何かあるのか?」
リリアーヌは、しまったというような顔になり、慌てて取りつくろうように答えた。
「えっ?!べ、別に大した事じゃないんだけど。カイルはさ、誰かを好きになった事ないの?」
「好き?」
リリアーヌは突然変な事を言い出した。カイルはふしんがりながらも素直に答えた。
「好きな奴いるぞ?父さんに母さん、トランだ」
「家族じゃなくって」
カイルの答えに、リリアーヌがふふくそうに言った。
「もっといるぞ。レッドアイと、」
そこでカイルは口をつぐんだ。自分はこの後何を言おうとしたのか。目の前にいる天使のリリアーヌの名前を言いそうになったからだ。リリアーヌは尊い天使だ。卑しい人間のカイルが好意をよせていい相手ではないのだ。
カイルの動揺に気づかないリリアーヌは、レッドアイもカイルの家族みたいなものでしょ。と不機嫌そうに言った。カイルは話題を変えなければと思い、口を開いた。
「前世で好きだった奴らは、ホセとサイラスだ。生まれ変わってわかったんだ。ホセとサイラスは、現世の家族みたいなものだった」
カイルの言葉にリリアーヌは少し驚いた顔をしてから、優しい笑顔になって言った。
「前世のカイルにも家族がいて良かった」
リリアーヌの笑顔に、カイルは何故か胸が苦しくなった。
翌日カイルたちは領主の屋敷に向かった。散々考えた結果、トーマスを部屋に監禁しておくのが一番という答えにいたった。だがトーマスが、抗議に来たトーノマ族と冒険者たちの小競り合いにわってはいらなくても、トーノマ族と冒険者がケガをしたり死んでしまったら元も子もない。
そのためカイルは、サイラスとレッドアイをトーマスの部屋の前に立たせて逃げ出さないようにさせた。最初トーマスは部屋に監禁される事を嫌がったが、カイルたちの説得にしぶしぶ同意してくれた。
カイルは安心して、領主が雇った冒険者たちと共に、トーノマ族たちを待った。しばらくすると、トーノマ族の男たちの団体が屋敷のドアを叩いた。カイルたちが屋敷の外に出てみると、ものものしい雰囲気のトーノマ族たちが手に武器を持って立っていた。
どう見ても穏やかな話し合いには思えなかった。カイルはため息をつきながら、冒険者の男たちとトーノマ族たちの話し合いを聞いていた。トーノマ族たちはしきりにトーマスをここに呼べと言っている。冒険者たちはそれをつっぱねていた。
カイルはそこで違和感に気づいた。一番トーマスを憎んでいるモンスの姿が見えないのだ。カイルはハッとしてトーノマ族の団体をくまなく調べた。やはりモンスがいない。
そこへ血相を変えたサイラスとレッドアイが駆け寄って来た。
「師匠!すまねぇ、トーマスが部屋から逃げた」
「何故だ?!レッドアイも見張っていたのに!」
カイルの厳しい言葉に、サイラスとレッドアイはしょげてしまった。レッドアイが申し訳なさそうに言った。
『ゴメン、カイル。オレ、トーマスノニオイズットカイデタ。ヘヤニイルトオモッタラ、フクノニオイダッタ』
カイルは思わず舌打ちをした。トーマスはレッドアイが鼻が効くとわかっていたから、自分が着ていた衣服を脱いで、別な服を着て外に出たのだろう。トーマスはお坊ちゃんなのに、いつも窓から出入りしているようだ。
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