36 / 38
その後のアイシャ
しおりを挟む
「いいなぁ家族って」
アイシャはメアリーの乗った馬車が見えなくなるまで見送った後、ポツリとつぶやいた。アイシャの側にいたシドがアイシャに話しかける。
「何言ってんだ、アイシャの家族はオレたちだろ?」
「!、うん!!」
シドの言葉にアイシャは強くうなずく。シドの胸元には銀色のペンダントが輝いていた。エドモンド国王から賜った騎士のペンダントだ。本来ならば騎士はエンブレムを賜るのだが、シドたち獣人は狼になるので小さなエンブレムをかたどったペンダントが騎士の証なのだ。
シドたち獣人は、名目上エドモンド国王の騎士となったが、実際はシドたち獣人を守るためにエドモンド王がつけた役職にすぎない。国の有事の際は助力を願うが、基本的にはアイシャのいる召喚士養成学校の学生寮ですごす事を許されたのだ。ほほえみ合うシドとアイシャの間にマリアンナが割り込む。
「おい、シド聞きずてならないぞ、アイシャはまだ十三歳たぞ」
「大丈夫だよマリアンナ、シドはそう言う意味で言ったんじゃないよ、まだ」
いきどおるマリアンナの肩をシュラがトントンと叩きながら言う。マリアンナはシュラに振り向くとキッとにらむ。
「まだだと?!まったく安心できないじゃないか!」
シュラは怒っているマリアンナにちっとも取り合わず、マリアンナの手を両手で握りしめて言った。
「ねぇマリアンナ、僕と家族になってくれないかい?そう言う意味でね」
マリアンナはポカンと口を開けてから、だんだん顔が真っ赤になっていき、大声で言い放った。
「バカ!!」
「えっ、バカ?どう言う意味だい?答えははいかいいえだと思っていたけど」
シュラはマリアンナの言った意味がわからずオロオロするが、マリアンナは両手で顔をおおってしまい、顔を見せてくれなかった。なおもシュラがマリアンナに言いつのろうとした時、マリアンナの側に突然大男が現れた。マリアンナの契約霊獣、スノードラゴンが人型を取った姿だ。
「しつこいぞ狼小僧!マリーが嫌がっているじゃないか!」
人型を取ったスノードラゴンは、顔を隠したままのマリアンナを優しく抱き上げる。マリアンナはスノードラゴンの厚い胸板に顔をうずめてしまった。シュラはなおもマリアンナに何か言おうとすると、スノードラゴンはキッとにらんでそれを制した。
「マリーに相応しい男でなければマリーをやるわけにはいかない」
「じゃあどうすれば相応しい男になるんですか?」
偉そうな態度のスノードラゴンに、不服そうにシュラは問う。
「それは、その、あれだ、俺を倒せる男だ」
「はあっ!?霊獣の貴方に勝てる男なんているわけないでしょ!マリアンナと話をさせてください」
スノードラゴンはマリアンナを抱いたまま逃げ回り、それをシュラが追いかける。そんなありさまをアイシャはぼんやり見つめていた。以前メアリーにこっそり言われたのだ、マリアンナ先生とシュラの事見守っててあげてねと。見守るとはどういう事だろう、このようにただジッと見てればいいのだろうか。そんなアイシャにシドが声をかけた。
「アイシャ、シュラたちは取り込み中のようだから先に帰ろう」
「うん!」
シドは穏やかに優しく言った。アイシャは元気よくうなずく。シドはリクを肩車し、ミナとアイシャの手をつなぐと、学生寮に足を向けた。もめているシュラたちを置いて。
アイシャはメアリーの乗った馬車が見えなくなるまで見送った後、ポツリとつぶやいた。アイシャの側にいたシドがアイシャに話しかける。
「何言ってんだ、アイシャの家族はオレたちだろ?」
「!、うん!!」
シドの言葉にアイシャは強くうなずく。シドの胸元には銀色のペンダントが輝いていた。エドモンド国王から賜った騎士のペンダントだ。本来ならば騎士はエンブレムを賜るのだが、シドたち獣人は狼になるので小さなエンブレムをかたどったペンダントが騎士の証なのだ。
シドたち獣人は、名目上エドモンド国王の騎士となったが、実際はシドたち獣人を守るためにエドモンド王がつけた役職にすぎない。国の有事の際は助力を願うが、基本的にはアイシャのいる召喚士養成学校の学生寮ですごす事を許されたのだ。ほほえみ合うシドとアイシャの間にマリアンナが割り込む。
「おい、シド聞きずてならないぞ、アイシャはまだ十三歳たぞ」
「大丈夫だよマリアンナ、シドはそう言う意味で言ったんじゃないよ、まだ」
いきどおるマリアンナの肩をシュラがトントンと叩きながら言う。マリアンナはシュラに振り向くとキッとにらむ。
「まだだと?!まったく安心できないじゃないか!」
シュラは怒っているマリアンナにちっとも取り合わず、マリアンナの手を両手で握りしめて言った。
「ねぇマリアンナ、僕と家族になってくれないかい?そう言う意味でね」
マリアンナはポカンと口を開けてから、だんだん顔が真っ赤になっていき、大声で言い放った。
「バカ!!」
「えっ、バカ?どう言う意味だい?答えははいかいいえだと思っていたけど」
シュラはマリアンナの言った意味がわからずオロオロするが、マリアンナは両手で顔をおおってしまい、顔を見せてくれなかった。なおもシュラがマリアンナに言いつのろうとした時、マリアンナの側に突然大男が現れた。マリアンナの契約霊獣、スノードラゴンが人型を取った姿だ。
「しつこいぞ狼小僧!マリーが嫌がっているじゃないか!」
人型を取ったスノードラゴンは、顔を隠したままのマリアンナを優しく抱き上げる。マリアンナはスノードラゴンの厚い胸板に顔をうずめてしまった。シュラはなおもマリアンナに何か言おうとすると、スノードラゴンはキッとにらんでそれを制した。
「マリーに相応しい男でなければマリーをやるわけにはいかない」
「じゃあどうすれば相応しい男になるんですか?」
偉そうな態度のスノードラゴンに、不服そうにシュラは問う。
「それは、その、あれだ、俺を倒せる男だ」
「はあっ!?霊獣の貴方に勝てる男なんているわけないでしょ!マリアンナと話をさせてください」
スノードラゴンはマリアンナを抱いたまま逃げ回り、それをシュラが追いかける。そんなありさまをアイシャはぼんやり見つめていた。以前メアリーにこっそり言われたのだ、マリアンナ先生とシュラの事見守っててあげてねと。見守るとはどういう事だろう、このようにただジッと見てればいいのだろうか。そんなアイシャにシドが声をかけた。
「アイシャ、シュラたちは取り込み中のようだから先に帰ろう」
「うん!」
シドは穏やかに優しく言った。アイシャは元気よくうなずく。シドはリクを肩車し、ミナとアイシャの手をつなぐと、学生寮に足を向けた。もめているシュラたちを置いて。
0
お気に入りに追加
70
あなたにおすすめの小説

崖っぷち令嬢は冷血皇帝のお世話係〜侍女のはずが皇帝妃になるみたいです〜
束原ミヤコ
恋愛
ティディス・クリスティスは、没落寸前の貧乏な伯爵家の令嬢である。
家のために王宮で働く侍女に仕官したは良いけれど、緊張のせいでまともに話せず、面接で落とされそうになってしまう。
「家族のため、なんでもするからどうか働かせてください」と泣きついて、手に入れた仕事は――冷血皇帝と巷で噂されている、冷酷冷血名前を呼んだだけで子供が泣くと言われているレイシールド・ガルディアス皇帝陛下のお世話係だった。
皇帝レイシールドは気難しく、人を傍に置きたがらない。
今まで何人もの侍女が、レイシールドが恐ろしくて泣きながら辞めていったのだという。
ティディスは決意する。なんとしてでも、お仕事をやりとげて、没落から家を救わなければ……!
心根の優しいお世話係の令嬢と、無口で不器用な皇帝陛下の話です。
こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果
てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。
とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。
「とりあえずブラッシングさせてくれません?」
毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。
そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。
※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。
アイムキャット❕~異世界キャット驚く漫遊記~
ma-no
ファンタジー
神様のミスで森に住む猫に転生させられた元人間。猫として第二の人生を歩むがこの世界は何かがおかしい。引っ掛かりはあるものの、猫家族と楽しく過ごしていた主人公は、ミスに気付いた神様に詫びの品を受け取る。
その品とは、全世界で使われた魔法が載っている魔法書。元人間の性からか、魔法書で変身魔法を探した主人公は、立って歩く猫へと変身する。
世界でただ一匹の歩く猫は、人間の住む街に行けば騒動勃発。
そして何故かハンターになって、王様に即位!?
この物語りは、歩く猫となった主人公がやらかしながら異世界を自由気ままに生きるドタバタコメディである。
注:イラストはイメージであって、登場猫物と異なります。
R指定は念の為です。
登場人物紹介は「11、15、19章」の手前にあります。
「小説家になろう」「カクヨム」にて、同時掲載しております。
一番最後にも登場人物紹介がありますので、途中でキャラを忘れている方はそちらをお読みください。
転生王子はダラけたい
朝比奈 和
ファンタジー
大学生の俺、一ノ瀬陽翔(いちのせ はると)が転生したのは、小さな王国グレスハートの末っ子王子、フィル・グレスハートだった。
束縛だらけだった前世、今世では好きなペットをモフモフしながら、ダラけて自由に生きるんだ!
と思ったのだが……召喚獣に精霊に鉱石に魔獣に、この世界のことを知れば知るほどトラブル発生で悪目立ち!
ぐーたら生活したいのに、全然出来ないんだけどっ!
ダラけたいのにダラけられない、フィルの物語は始まったばかり!
※2016年11月。第1巻
2017年 4月。第2巻
2017年 9月。第3巻
2017年12月。第4巻
2018年 3月。第5巻
2018年 8月。第6巻
2018年12月。第7巻
2019年 5月。第8巻
2019年10月。第9巻
2020年 6月。第10巻
2020年12月。第11巻 出版しました。
PNもエリン改め、朝比奈 和(あさひな なごむ)となります。
投稿継続中です。よろしくお願いします!

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~
一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。
しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。
流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。
その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。
右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。
この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。
数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。
元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。
根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね?
そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。
色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。
……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

異世界もふもふ食堂〜僕と爺ちゃんと魔法使い仔カピバラの味噌スローライフ〜
山いい奈
ファンタジー
味噌蔵の跡継ぎで修行中の相葉壱。
息抜きに動物園に行った時、仔カピバラに噛まれ、気付けば見知らぬ場所にいた。
壱を連れて来た仔カピバラに付いて行くと、着いた先は食堂で、そこには10年前に行方不明になった祖父、茂造がいた。
茂造は言う。「ここはいわゆる異世界なのじゃ」と。
そして、「この食堂を継いで欲しいんじゃ」と。
明かされる村の成り立ち。そして村人たちの公然の秘め事。
しかし壱は徐々にそれに慣れ親しんで行く。
仔カピバラのサユリのチート魔法に助けられながら、味噌などの和食などを作る壱。
そして一癖も二癖もある食堂の従業員やコンシャリド村の人たちが繰り広げる、騒がしくもスローな日々のお話です。

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる