人形使い結 〜ぼっちの人形使いですがなぜか色々巻き込まれています〜

幸士郎の決意

　幸士郎は加奈子を救出した際の、アダムと勝司との戦いを何度もはんすうしていた。

　アダムは幸士郎と桜姫と椿姫を傷つけないように戦ってくれていた。アダムは勝司の操りの最中にも、自身の信念を持って戦っていたのだ。

　そして何より、愛するイブを傷つけないように細心の注意を払っていた。アダムが本気を出して戦ったら、あの場にいるどの戦人形も勝つ事ができなかっただろう。

　だが結を勝司から守るためには、アダムとの戦いは避けては通れないだろう。そのためには幸士郎と桜姫はもっと強くならなければいけないのだ。

　幸士郎はある決断をした。それは、結とイブに鍛えてもらう事だ。結におそるおそる聞いてみると、彼女はあっけらかんと了解してくれた。

　幸士郎と桜姫は、自宅の闘技場にいた。目の前には戦人形のイブと結とココがいた。幸士郎と桜姫は結たちに深く礼をして言った。

「よろしくお願いします！」
「はい、よろしくお願いします」

　結はココを抱っこにながらほにゃんと笑って答えた。まるでお買い物を頼むような気楽さだった。結はイブに向き直るとニコニコしながら言った。

「じゃあイブ。よろしくね？皆ケガしないでね？」

　結はそれだけ言うと、ココを抱いて闘技場のはじに座ってしまった。幸士郎は、結の短い指示にあ然としてしまった。

　幸士郎は気を取り直して、桜姫に指示を出した。

「桜姫、イブは接近戦型だ。クサリを使って間合いに入られないように注意しろ」

　桜姫はコクリとうなずくと、たもとから二本のクサリを取り出し、構えた。それを合図と見て、イブがもうぜんと駆けてくる。ちなみに闘技場は板の間なので、イブは素足だ。

　イブが桜姫の攻撃範囲に入った瞬間、幸士郎は桜姫に攻撃を指示した。桜姫は右手のクサリをイブに投げつけた。だがそれはすでにイブに読まれていたようだ。イブは側転してクサリの攻撃を避けると、さらに桜姫に突進して来た。

　幸士郎は桜姫の左手のクサリをイブに投げつけた。それも紙一重で避けられる。イブは高く跳躍すると、桜姫の背後に着地し、桜姫にケリを入れようとした。

　その瞬間、幸士郎は桜姫に指示を出す。桜姫は素早く振り返り、すでに右手に戻していたクサリをイブに投げつけた。イブの身体はクサリで拘束された。幸士郎はイブを引き倒すように桜姫に指示を出した。

　桜姫が思いきりクサリを引く。だがイブは立ったままびどうだにしなかった。桜姫が力負けしているのだ。

　桜姫は幸士郎の操りにより、五人の人間が束になってかかって行っても振り払えるくらいの力がある。だがそんな桜姫を持ってしても、イブを引き倒す事はできないのだ。イブはクサリに拘束された身体ごと、グルリと回った。そのひょうしに桜姫も一緒に振り回されてしまった。