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哲太の戦人形
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「俺、こんな重たいの嫌だよ」
防弾チョッキを着た哲太が文句を言った。伊織は怖い顔をして答えた。
「それ着ねぇと連れて行かねぇぞ?」
「伊織も着るのか?防弾チョッキ?」
「俺は着ない。動けなくなるからな」
哲太は顔をしかめたが黙って従った。
今回の討ち入りは、吉田組の幹部を殺した報復だった。殺害したのは外川組の四谷太という若者だった。吉田組は太の引き渡しを要求したが、外川組は拒否した。
吉田組の要求は、四谷太の引き渡しだ。伊織は吉田組組長に念を押した、四谷太の命は取らないと。
伊織は人形使いの仕事に戻る時、誓った事がある。それは人の命は決して奪わないという事だ。伊織は理不尽な理由で妻子を失った。伊織は気が狂いそうになるほどの悲しみを味わった。
そこで痛感したのだ。どんな人間でも死ねば悲しむ人間がいるという事に。この信念は、雇用主の天賀勝司にも許しを得ている。殺しの依頼は一切受けないと。
外川組の事務所は、古びた雑居ビルだった。このビルの中に四谷太がかくまわれているらしい。伊織たちは車を乗り合わせて雑居ビルに到着した。
身体の大きなコングがいるため、伊織は哲太のワゴン車で向かった。再三哲太に車の中で待つようにと言ったが、彼はがんとして聞き入れなかった。
流れ弾に当たって死んでも自己責任だから気にするなと言ってはばからない。伊織はため息をついてうなずいた。
だが伊織は、哲太に自身の戦人形たちの戦う姿を見てほしいとも思っている。伊織がいくら哲太の作った人形は素晴らしいと言っても、哲太は納得しないのだ。
哲太は自分の人形に誇りを持っていないように見えた。それは天賀家の人形使いが、哲太の人形を三流の人形とこき下ろしたからだ。
伊織はそうは思わない。哲太の戦人形は、一心作の戦人形に勝るとも劣らないとさえ思っている。それを哲太に実感して欲しかった。
討ち入りに行く若い衆の中の一人のやくざが、伊織が少女人形の花雪を抱っこしているのをニヤニヤとバカにしたような顔で言った。
「人形使いさんの武器は可愛いですねぇ」
伊織は近づいた若いやくざの前に右手を突き出した。少女人形の花雪は、伊織の腕の上で器用に立つと、右手から刃を出し、若いやくざの首元に刃を押し付けた。皮膚が薄く切られ、血がしたたる。
伊織は青ざめた若いやくざにニッコリ笑って答えた。
「ああ、花雪は可愛い人形だ。そして、お前を一瞬で殺せるくらい強いぞ?」
伊織を取り巻いていた若い衆はその場に固まった。
防弾チョッキを着た哲太が文句を言った。伊織は怖い顔をして答えた。
「それ着ねぇと連れて行かねぇぞ?」
「伊織も着るのか?防弾チョッキ?」
「俺は着ない。動けなくなるからな」
哲太は顔をしかめたが黙って従った。
今回の討ち入りは、吉田組の幹部を殺した報復だった。殺害したのは外川組の四谷太という若者だった。吉田組は太の引き渡しを要求したが、外川組は拒否した。
吉田組の要求は、四谷太の引き渡しだ。伊織は吉田組組長に念を押した、四谷太の命は取らないと。
伊織は人形使いの仕事に戻る時、誓った事がある。それは人の命は決して奪わないという事だ。伊織は理不尽な理由で妻子を失った。伊織は気が狂いそうになるほどの悲しみを味わった。
そこで痛感したのだ。どんな人間でも死ねば悲しむ人間がいるという事に。この信念は、雇用主の天賀勝司にも許しを得ている。殺しの依頼は一切受けないと。
外川組の事務所は、古びた雑居ビルだった。このビルの中に四谷太がかくまわれているらしい。伊織たちは車を乗り合わせて雑居ビルに到着した。
身体の大きなコングがいるため、伊織は哲太のワゴン車で向かった。再三哲太に車の中で待つようにと言ったが、彼はがんとして聞き入れなかった。
流れ弾に当たって死んでも自己責任だから気にするなと言ってはばからない。伊織はため息をついてうなずいた。
だが伊織は、哲太に自身の戦人形たちの戦う姿を見てほしいとも思っている。伊織がいくら哲太の作った人形は素晴らしいと言っても、哲太は納得しないのだ。
哲太は自分の人形に誇りを持っていないように見えた。それは天賀家の人形使いが、哲太の人形を三流の人形とこき下ろしたからだ。
伊織はそうは思わない。哲太の戦人形は、一心作の戦人形に勝るとも劣らないとさえ思っている。それを哲太に実感して欲しかった。
討ち入りに行く若い衆の中の一人のやくざが、伊織が少女人形の花雪を抱っこしているのをニヤニヤとバカにしたような顔で言った。
「人形使いさんの武器は可愛いですねぇ」
伊織は近づいた若いやくざの前に右手を突き出した。少女人形の花雪は、伊織の腕の上で器用に立つと、右手から刃を出し、若いやくざの首元に刃を押し付けた。皮膚が薄く切られ、血がしたたる。
伊織は青ざめた若いやくざにニッコリ笑って答えた。
「ああ、花雪は可愛い人形だ。そして、お前を一瞬で殺せるくらい強いぞ?」
伊織を取り巻いていた若い衆はその場に固まった。
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