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幸士郎と加奈子
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結は大きなココにもたれかかったまま、ずるずると床にしゃがみこんでしまった。幸士郎は慌てて結に駆け寄った。
「結!大丈夫か?!」
「うん、大丈夫。ちょっと気が抜けちゃって」
幸士郎は結の返答に、安心したようにホッと息を吐いてから言った。
「結、ありがとう。椿姫を傷つけないでくれて。それと、お父さんに意見してくれた事も、ありがとう」
「・・・。幸士郎くん、加奈子ちゃんが人形使いじゃないっていつわかったの?」
「ずっと小さい頃。最初は俺もわからなかった。加奈子は小さい頃から複数の人形を操る事ができたから、一族でとても大切にされていたんだ。俺は加奈子と兄妹のように育ったから、小さい頃はよく加奈子のお守りでいつも一緒に遊んでいた。俺は結ほど人形の気持ちはわからないが、嬉しいとか悲しいとか怒っているとかくらいはわかる。だけど加奈子はそれがわからないようだった」
幸士郎は小さい頃の話しをしてくれた。加奈子はお人形遊びが大好きで、幸士郎はいつも付き合わされた。加奈子は幸士郎の持っているアイアンロボも人形遊びの人形として動かしていた。
アイアンロボは男の子のヒーローだ。アイアンロボは女の子の遊びなんかしたくないと怒っていた。だが加奈子はアイアンロボの気持ちを無視して遊び続けた。
もう一つおかしいと思った事は、加奈子は目視した人形しか動かせないという事だ。人形使いは個々の能力の差はあれど、人形を遠隔操作する事が可能だ。だが幸士郎がアイアンロボを背中に隠すと、加奈子は動かす事ができなかった。
人形使いの能力は皆同じというわけではない。幸士郎は、加奈子の人形使いの能力は自分と違うのだという認識だった。
だが幸士郎が成長して、桜姫と契約した時、それまで操ってきた人形とは明らかに違う事が起こった。桜姫が幸士郎に心を開いた時、激しい突風のようなものを感じた。桜姫の気持ちがよくわかるようになったのだ。
幸士郎は、椿姫と契約した加奈子に質問した。契約時に風のようなものが胸を通り抜けなかったか、と。加奈子はそんなものは無かったと答えた。
幸士郎の幼い頃からの疑惑は確信に変わった。加奈子の能力は人形使いではない。別な能力なのだと。
それ以来幸士郎は、加奈子が人形使いでないとばれないように細心の注意をはらうようになった。
だが結果的には加奈子の苦しみを長引かせただけだったのかもしれないと、幸士郎は血を吐くように言った。
結はたまらない気持ちになって言った。
「幸士郎くんの気持ちは加奈子ちゃんに伝わっているよ?幸士郎くんと加奈子ちゃんは二人で力をあわせてきたんだね?」
幸士郎は顔をゆがめてだまった。結は何とか幸士郎の力になりたかった。
「幸士郎くん。私は貴方と結婚はできないけど、幸士郎くんの力になりたい。私は突然やって来た部外者でしかないけど、やっぱりお人形を戦いの道具にしたくないし、加奈子ちゃんが人形使いでないだけでないがしろにされるのは違うと思う」
「・・・。ありがとう、結」
悲しい表情だった幸士郎の顔に小さな笑みが浮かんだ。結もつられて笑う。幸士郎は厳しい顔に戻って言った。
「なぁ、結。俺との結婚は本当にダメか?俺はこれから結好みの男になるよう努力する。だから長期的に考えてくれないか?」
結の顔が途端に真っ赤になる。結は叫ぶように言った。
「もう!この話しはおしまい!」
「結!大丈夫か?!」
「うん、大丈夫。ちょっと気が抜けちゃって」
幸士郎は結の返答に、安心したようにホッと息を吐いてから言った。
「結、ありがとう。椿姫を傷つけないでくれて。それと、お父さんに意見してくれた事も、ありがとう」
「・・・。幸士郎くん、加奈子ちゃんが人形使いじゃないっていつわかったの?」
「ずっと小さい頃。最初は俺もわからなかった。加奈子は小さい頃から複数の人形を操る事ができたから、一族でとても大切にされていたんだ。俺は加奈子と兄妹のように育ったから、小さい頃はよく加奈子のお守りでいつも一緒に遊んでいた。俺は結ほど人形の気持ちはわからないが、嬉しいとか悲しいとか怒っているとかくらいはわかる。だけど加奈子はそれがわからないようだった」
幸士郎は小さい頃の話しをしてくれた。加奈子はお人形遊びが大好きで、幸士郎はいつも付き合わされた。加奈子は幸士郎の持っているアイアンロボも人形遊びの人形として動かしていた。
アイアンロボは男の子のヒーローだ。アイアンロボは女の子の遊びなんかしたくないと怒っていた。だが加奈子はアイアンロボの気持ちを無視して遊び続けた。
もう一つおかしいと思った事は、加奈子は目視した人形しか動かせないという事だ。人形使いは個々の能力の差はあれど、人形を遠隔操作する事が可能だ。だが幸士郎がアイアンロボを背中に隠すと、加奈子は動かす事ができなかった。
人形使いの能力は皆同じというわけではない。幸士郎は、加奈子の人形使いの能力は自分と違うのだという認識だった。
だが幸士郎が成長して、桜姫と契約した時、それまで操ってきた人形とは明らかに違う事が起こった。桜姫が幸士郎に心を開いた時、激しい突風のようなものを感じた。桜姫の気持ちがよくわかるようになったのだ。
幸士郎は、椿姫と契約した加奈子に質問した。契約時に風のようなものが胸を通り抜けなかったか、と。加奈子はそんなものは無かったと答えた。
幸士郎の幼い頃からの疑惑は確信に変わった。加奈子の能力は人形使いではない。別な能力なのだと。
それ以来幸士郎は、加奈子が人形使いでないとばれないように細心の注意をはらうようになった。
だが結果的には加奈子の苦しみを長引かせただけだったのかもしれないと、幸士郎は血を吐くように言った。
結はたまらない気持ちになって言った。
「幸士郎くんの気持ちは加奈子ちゃんに伝わっているよ?幸士郎くんと加奈子ちゃんは二人で力をあわせてきたんだね?」
幸士郎は顔をゆがめてだまった。結は何とか幸士郎の力になりたかった。
「幸士郎くん。私は貴方と結婚はできないけど、幸士郎くんの力になりたい。私は突然やって来た部外者でしかないけど、やっぱりお人形を戦いの道具にしたくないし、加奈子ちゃんが人形使いでないだけでないがしろにされるのは違うと思う」
「・・・。ありがとう、結」
悲しい表情だった幸士郎の顔に小さな笑みが浮かんだ。結もつられて笑う。幸士郎は厳しい顔に戻って言った。
「なぁ、結。俺との結婚は本当にダメか?俺はこれから結好みの男になるよう努力する。だから長期的に考えてくれないか?」
結の顔が途端に真っ赤になる。結は叫ぶように言った。
「もう!この話しはおしまい!」
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