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ココ対椿姫
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結に抱っこされたココは加奈子の暴言に腹が立ったようだ。
「ぼくはかわいい、てでぃべあだぞ!そのことばてっかいさせてやる!」
「ココは可愛いわよ?だから怒らないの」
怒って言い返すココを結はたしなめた。加奈子は椿姫に攻撃の指示をしたようだ。椿姫がものすごい速さで結たちに駆け寄って来る。ココは結の腕の中からピョンと飛び降りると、ムクムクと巨大化し、結を守るように立ちはだかった。
椿姫は走る事をやめ、右手に持った鉄扇を巨大なココに投げつけた。ココは大きな身体に似合わず素早い動きで鉄扇を掴んで言った。
「こんなひょろひょろのこうげきじゃあ、ぼくのふわふわのけなみのさきっちょだってきれないよ?ほら、きみのぶきをかえすよ?」
ココはコンクリートをも砕く剛腕で椿姫に鉄扇を投げ返そうとした。すかさず結が叫ぶ。
「待ってココ!扇を椿姫に投げないで!椿姫と話しがしたいの」
ココは結を振り返ってうなずくと、鉄扇を持ったまま結のとなりに立った。巨大化は解かない。もし何かあった時、結を守るためだろう。
結は立ち止まったまま動きを止めている椿姫に言った。
「椿姫、私は結。貴女と話しがしたいの」
椿姫はゆっくりと結に向かって歩き出した。それを見た加奈子は焦ったように叫んだ。
「椿姫!そっちに行かないで!戻ってらっしゃい!」
だが椿姫は加奈子の指示には従わず、結の側までやって来た。結はしゃがんで椿姫と視線を合わせた。
すると、ヒュッと冷たい風が結の心の中を通り抜けた。椿姫の悲しい気持ちだ。結は椿姫の美しい瞳をジッと見続けて言った。
「椿姫、それが貴女の望みなの?」
椿姫はコクリとうなずいた。結も深くうなずく。結はスクッと立ち上がり、加奈子を見すえて叫んだ。
「この勝負、私たちの勝ちです!」
「何ですって?!そのまぬけなクマは椿姫に傷一つつけていないじゃない!」
結の宣言に、加奈子はかなぎり声をあげた。結は加奈子をジッと見つめて答えた。
「言い方を変えましょうか?この試合じたいが無効だといっているのです。何故なら、加奈子ちゃんは人形使いではなく、念動力者だからです」
加奈子の表情がこわばった。兼光は信じられないとでもいうように加奈子を見た。幸士郎は下を向いている。
三者三様の反応を見れば結にもすぐに状況がわかった。兼光は加奈子が人形使いではない事を知らなかった。加奈子は人形使いではない事を必死で隠そうとしていた。幸士郎は加奈子が人形使いでない事を知りつつ黙っていた。
兼光は怒りの形相で叫んだ。
「加奈子!それは本当なのか?!よくも今まで我々を騙していたな!何て恥さらしな!」
加奈子は恨めしい目で叔父を見てから、無言で手を振った。すると椿姫がフワリと宙に浮き、加奈子の腕の中に収まった。ココの持っていた鉄扇も浮き上がり、加奈子の側に飛んで行った。加奈子はとても有能な念動力者なのだろう。
加奈子は無言で闘技場を後にした。
「ぼくはかわいい、てでぃべあだぞ!そのことばてっかいさせてやる!」
「ココは可愛いわよ?だから怒らないの」
怒って言い返すココを結はたしなめた。加奈子は椿姫に攻撃の指示をしたようだ。椿姫がものすごい速さで結たちに駆け寄って来る。ココは結の腕の中からピョンと飛び降りると、ムクムクと巨大化し、結を守るように立ちはだかった。
椿姫は走る事をやめ、右手に持った鉄扇を巨大なココに投げつけた。ココは大きな身体に似合わず素早い動きで鉄扇を掴んで言った。
「こんなひょろひょろのこうげきじゃあ、ぼくのふわふわのけなみのさきっちょだってきれないよ?ほら、きみのぶきをかえすよ?」
ココはコンクリートをも砕く剛腕で椿姫に鉄扇を投げ返そうとした。すかさず結が叫ぶ。
「待ってココ!扇を椿姫に投げないで!椿姫と話しがしたいの」
ココは結を振り返ってうなずくと、鉄扇を持ったまま結のとなりに立った。巨大化は解かない。もし何かあった時、結を守るためだろう。
結は立ち止まったまま動きを止めている椿姫に言った。
「椿姫、私は結。貴女と話しがしたいの」
椿姫はゆっくりと結に向かって歩き出した。それを見た加奈子は焦ったように叫んだ。
「椿姫!そっちに行かないで!戻ってらっしゃい!」
だが椿姫は加奈子の指示には従わず、結の側までやって来た。結はしゃがんで椿姫と視線を合わせた。
すると、ヒュッと冷たい風が結の心の中を通り抜けた。椿姫の悲しい気持ちだ。結は椿姫の美しい瞳をジッと見続けて言った。
「椿姫、それが貴女の望みなの?」
椿姫はコクリとうなずいた。結も深くうなずく。結はスクッと立ち上がり、加奈子を見すえて叫んだ。
「この勝負、私たちの勝ちです!」
「何ですって?!そのまぬけなクマは椿姫に傷一つつけていないじゃない!」
結の宣言に、加奈子はかなぎり声をあげた。結は加奈子をジッと見つめて答えた。
「言い方を変えましょうか?この試合じたいが無効だといっているのです。何故なら、加奈子ちゃんは人形使いではなく、念動力者だからです」
加奈子の表情がこわばった。兼光は信じられないとでもいうように加奈子を見た。幸士郎は下を向いている。
三者三様の反応を見れば結にもすぐに状況がわかった。兼光は加奈子が人形使いではない事を知らなかった。加奈子は人形使いではない事を必死で隠そうとしていた。幸士郎は加奈子が人形使いでない事を知りつつ黙っていた。
兼光は怒りの形相で叫んだ。
「加奈子!それは本当なのか?!よくも今まで我々を騙していたな!何て恥さらしな!」
加奈子は恨めしい目で叔父を見てから、無言で手を振った。すると椿姫がフワリと宙に浮き、加奈子の腕の中に収まった。ココの持っていた鉄扇も浮き上がり、加奈子の側に飛んで行った。加奈子はとても有能な念動力者なのだろう。
加奈子は無言で闘技場を後にした。
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