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結対加奈子
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幸士郎は加奈子の扱いに慣れているのかつっけんどんに言った。
「加奈子、おばさんが朝食を用意してくれているだろう?なんでいつも家に来るんだ」
「今朝は和食の気分なの!」
「まぁ、別にいいけど」
加奈子は結を完全に無視して手慣れた仕草で食器棚からお茶わんを取り出している。そこで幸士郎はふと思い出したように加奈子に言った。
「そうだ加奈子、お前との婚約を破棄する事になったからな」
それまでウキウキ楽しそうにしていた加奈子の動きがピタリと止まった。加奈子は震える声で言った。
「そんな、ウソ、だよね?幸」
「いいや、お父さんが決めた事だ。後日おじさんの所に話しに行くって言っていた」
加奈子は信じられないという顔で幸士郎を見ていたが、幸士郎は表情を変えずに食事を続けている。結は気が気ではなかった。
幸士郎と加奈子の会話から察するに、二人は許嫁同士のようだ。だが幸士郎は一方的に加奈子との婚約を解消してしまったようだ。
結がハラハラしながら二人を見ていると、幸士郎は結を見て言った。
「結。この後お父さんから話しがあると思うが、この後君に求婚を申し込む。考えておいてくれ」
その時結はみそ汁を飲んでいる時だった。結は幸士郎からの驚きの発言に、思いっきりむせてしまった。結は激しく咳こむ。横に座っていたココが背中をさすってくれる。幸士郎は心配そうに結に言った。
「結、大丈夫か?」
「ゴホッゴホッ」
「だいじょうぶなわけないだろ!ゆいがおまえなんかとけっこんするわけないだろ!」
むせて話せない結の代わりにココがしゃべる。幸士郎はうつむきながら言った。
「もちろん結の気持ちは尊重するつもりだ。俺は結にふさわしい男になる。だから、」
「ちょっと待ってよ!幸、本当にこのおばさんと結婚するつもり?!」
幸士郎の言葉に、お茶わんを掴んだままの加奈子が叫ぶ。幸士郎は加奈子をにらんで言った。
「おばさんじゃない。結だ」
「ふん!バカにしてるわ!私よりそのおばさんがいいだなんて!いいわよ、おじさまに確かめてくるから!」
加奈子はお茶わんをテーブルにドンと置くと、どこかに行ってしまった。ようやく咳が止まった結は恐る恐る幸士郎に聞く。
「こ、幸士郎くん。冗談だよね?私と結婚するだなんて」
「いいや、本気だ。結ほど素晴らしい人形使いはいないからな」
結はひゅっと息を飲んだ。幸士郎は結の人形使いの能力だけを見て結婚を申し込んでいるのだ。そして、加奈子という美少女と婚約していたのも、加奈子が人形使いだったからだろう。だが結と加奈子の人形使いの能力を比較して、加奈子より結の方が力が強かったから、幸士郎は加奈子を捨てて、結を選んだのだ。
結は薄ら寒い気持ちになった。幸士郎の言葉には返事をしないで、もくもく食事を済ませると、仕事に行くためココと桐生家を出た。
「加奈子、おばさんが朝食を用意してくれているだろう?なんでいつも家に来るんだ」
「今朝は和食の気分なの!」
「まぁ、別にいいけど」
加奈子は結を完全に無視して手慣れた仕草で食器棚からお茶わんを取り出している。そこで幸士郎はふと思い出したように加奈子に言った。
「そうだ加奈子、お前との婚約を破棄する事になったからな」
それまでウキウキ楽しそうにしていた加奈子の動きがピタリと止まった。加奈子は震える声で言った。
「そんな、ウソ、だよね?幸」
「いいや、お父さんが決めた事だ。後日おじさんの所に話しに行くって言っていた」
加奈子は信じられないという顔で幸士郎を見ていたが、幸士郎は表情を変えずに食事を続けている。結は気が気ではなかった。
幸士郎と加奈子の会話から察するに、二人は許嫁同士のようだ。だが幸士郎は一方的に加奈子との婚約を解消してしまったようだ。
結がハラハラしながら二人を見ていると、幸士郎は結を見て言った。
「結。この後お父さんから話しがあると思うが、この後君に求婚を申し込む。考えておいてくれ」
その時結はみそ汁を飲んでいる時だった。結は幸士郎からの驚きの発言に、思いっきりむせてしまった。結は激しく咳こむ。横に座っていたココが背中をさすってくれる。幸士郎は心配そうに結に言った。
「結、大丈夫か?」
「ゴホッゴホッ」
「だいじょうぶなわけないだろ!ゆいがおまえなんかとけっこんするわけないだろ!」
むせて話せない結の代わりにココがしゃべる。幸士郎はうつむきながら言った。
「もちろん結の気持ちは尊重するつもりだ。俺は結にふさわしい男になる。だから、」
「ちょっと待ってよ!幸、本当にこのおばさんと結婚するつもり?!」
幸士郎の言葉に、お茶わんを掴んだままの加奈子が叫ぶ。幸士郎は加奈子をにらんで言った。
「おばさんじゃない。結だ」
「ふん!バカにしてるわ!私よりそのおばさんがいいだなんて!いいわよ、おじさまに確かめてくるから!」
加奈子はお茶わんをテーブルにドンと置くと、どこかに行ってしまった。ようやく咳が止まった結は恐る恐る幸士郎に聞く。
「こ、幸士郎くん。冗談だよね?私と結婚するだなんて」
「いいや、本気だ。結ほど素晴らしい人形使いはいないからな」
結はひゅっと息を飲んだ。幸士郎は結の人形使いの能力だけを見て結婚を申し込んでいるのだ。そして、加奈子という美少女と婚約していたのも、加奈子が人形使いだったからだろう。だが結と加奈子の人形使いの能力を比較して、加奈子より結の方が力が強かったから、幸士郎は加奈子を捨てて、結を選んだのだ。
結は薄ら寒い気持ちになった。幸士郎の言葉には返事をしないで、もくもく食事を済ませると、仕事に行くためココと桐生家を出た。
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