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結とトト

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 結はお風呂から出て、自室に戻った。結が部屋に帰ると、トトが結のベッドの上にいた。トトは結に元気よく言った。

「ゆい、おふろからあがったらすぐにかみをかわかす!」
「はぁい」

 結はトトの言う通りにドライヤーで髪を乾かした。トトもココと一緒で、結に厳しい。だけどそれはココとトトが結の事を大切に思ってくれているからだ。

 結が実家に戻ると、夜寝る時はココが俊作のベッドで寝て、トトが結のベッドに寝る決まりだ。ココとトトは結の祖母が母に作ってあげた双子のテディベアだ。きっとココとトトはいつも一緒にいたいだろう。

 だが結は都会に、俊作は田舎の工房にいる。ココは大好きな俊作と離れ、トトは大好きな結と離れて暮らしている。ココとトトには申し訳ない気持ちもあった。

 結は実家に戻ると決まってする事がある。それは昔のアルバムを見る事だ。結の母紅子が亡くなったのは結が十歳の時だった。その時の結は、母を失った事が悲しくて悲しくて母の写真を見る事ができなかった。

 しかし二十歳を過ぎてみると、母との思い出は、お日様に当たったている縁側のようにポカポカと温かくなる気持ちいいものになった。

 結はベッドに寝っ転がってアルバムを開く、そのとなりにトトがもぐりこむ。最初は産まれたばかりの結を愛おしげに抱いている老人の写真。結の祖父だ。

 父の俊作にとっては厳しい父親だったようだが、おぼろげな結の記憶では優しいおじいちゃんだった。祖父は結が五歳の時に亡くなった。

 俊作は事あるごとに結の写真を撮っていたようで、特別ではない普通の写真が多かった。結が公園で遊んでいる写真。ココとトトと一緒におままごとをしている写真。

 父と母と結、ココとトトでピクニックに行った写真。トトは結と一緒に写真を見ながら、この時結はヘソをまげてずっと泣きべそをかいていたんだよと、何度も同じ話しをする。

 結は小さな頃だったので記憶があいまいなので、そうだったっけねぇ。と軽くあいずちをうつ。

 結は暖かな家族との思い出を目にし、だんだんと元気がわいてきた。父のカレーを食べ、父とココとトトたちとの賑やかな夕食の時間を過ごし、落ち込んでいた気持ちが前向きになってきた。

 明日からまたがんばろう。結はアルバムを閉じると、枕元の電気スタンドの明かりを消した。

 
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