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恭子
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恭子は小さな頃から夢見がちな少女だった。物語のお姫さまに憧れて、大きくなったら素敵なドレスを着たお姫さまになりたいと本気で思っていた。
そんな恭子も成人し、社会人として働いていた。幼い頃の淡い願望は心の中に押し殺して。
だがある時、恭子は出会ってしまったのだ。運命の人形に。その人形はネットの海の中で見つけた。球体関節人形。身体のポーズを変えられるのだ。ビスクドールよりも手足が長い。
まるで恭子が憧れたお姫さまのようだった。恭子は球体関節人形について詳しく調べ、人形製作の教室がある事もわかった。
恭子はすぐさま人形製作の教室に入会した。苦心の末、亜麻色の美しい人形が完成した。名前はエラと名づけた。次に少年の人形を作った。その人形にはアルベルトと名づけた。
二人の人形を製作して、恭子は教室を辞めてしまった。恭子は気づいたのだ。自分は美しい人形たちにドレスや洋服を作ってあげたかったのだと。
恭子は手先が器用だったので、人形たちのドレスや洋服を沢山作る事ができた。作った洋服を人形たちに着せて、ネットにあげると、作ってほしいというオーダーがまいこむようになった。
恭子は一念発起して、会社を辞めてドール専門の店を開く事を決意した。駅からだいぶ離れているが、一階は店舗、二階は居住スペースになっている理想的な物件を見つけた。以前は喫茶店だったらしい。
店内には恭子が厳選した美しい人形たちを並べ、アンティークの骨董品を飾った。店の名は『月の子供』とした。恭子の理想とするお姫さまの世界が広がっていた。
店の経営はネットの口コミにより、少しづつ客も増えていった。そんな時、不思議な女性に出会ったのだ。
恭子がその女性を見た時、最初高校生かと思った。何故なら彼女はとても美しい容姿をしているのに、化粧っけがまったくなかったからだ。きっと化粧をすればとても美しい女性になるだろうと思った。
女性は店内に入ると、一人の人形をジッと見てからためらいがちに、恭子に声をかけた。
「あの、」
「はい。どの子をご覧になりたいですか?」
店内の注意書きに、人形を手に取りたい時は一言断ってからとお願いしているのだ。人形はとても繊細にできている。手荒く扱われては壊れてしまうからだ。
恭子は自分の製作した人形を愛しているが、販売のために購入した人形たちもとても愛している。生涯大切にしてくれる者に購入してほしいと常に考えているのだ。
恭子が女性に近寄ると、彼女はおかしな事を言った。
「あの、この子、きょうだいがいますよね?」
そんな恭子も成人し、社会人として働いていた。幼い頃の淡い願望は心の中に押し殺して。
だがある時、恭子は出会ってしまったのだ。運命の人形に。その人形はネットの海の中で見つけた。球体関節人形。身体のポーズを変えられるのだ。ビスクドールよりも手足が長い。
まるで恭子が憧れたお姫さまのようだった。恭子は球体関節人形について詳しく調べ、人形製作の教室がある事もわかった。
恭子はすぐさま人形製作の教室に入会した。苦心の末、亜麻色の美しい人形が完成した。名前はエラと名づけた。次に少年の人形を作った。その人形にはアルベルトと名づけた。
二人の人形を製作して、恭子は教室を辞めてしまった。恭子は気づいたのだ。自分は美しい人形たちにドレスや洋服を作ってあげたかったのだと。
恭子は手先が器用だったので、人形たちのドレスや洋服を沢山作る事ができた。作った洋服を人形たちに着せて、ネットにあげると、作ってほしいというオーダーがまいこむようになった。
恭子は一念発起して、会社を辞めてドール専門の店を開く事を決意した。駅からだいぶ離れているが、一階は店舗、二階は居住スペースになっている理想的な物件を見つけた。以前は喫茶店だったらしい。
店内には恭子が厳選した美しい人形たちを並べ、アンティークの骨董品を飾った。店の名は『月の子供』とした。恭子の理想とするお姫さまの世界が広がっていた。
店の経営はネットの口コミにより、少しづつ客も増えていった。そんな時、不思議な女性に出会ったのだ。
恭子がその女性を見た時、最初高校生かと思った。何故なら彼女はとても美しい容姿をしているのに、化粧っけがまったくなかったからだ。きっと化粧をすればとても美しい女性になるだろうと思った。
女性は店内に入ると、一人の人形をジッと見てからためらいがちに、恭子に声をかけた。
「あの、」
「はい。どの子をご覧になりたいですか?」
店内の注意書きに、人形を手に取りたい時は一言断ってからとお願いしているのだ。人形はとても繊細にできている。手荒く扱われては壊れてしまうからだ。
恭子は自分の製作した人形を愛しているが、販売のために購入した人形たちもとても愛している。生涯大切にしてくれる者に購入してほしいと常に考えているのだ。
恭子が女性に近寄ると、彼女はおかしな事を言った。
「あの、この子、きょうだいがいますよね?」
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