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リュートの仲間たちです

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 私たちはトボトボと歩きながら、獣人の自治区を後にした。セネカ一人を置き去りにして。リュートはおちこんでいる私たちを元気付けるように声をかけた。

「大丈夫ですよ、もみじさま、アスカさま。セネカは戦争になっても危険は無いと思います。獣人の王は、セネカを自身の後継者として仲間の獣人たちに見せるために戦争に参加させるのです。きっと腹心の者をセネカの側につけるでしょう」

 もしかしたらリュートの言う通りなのかもしれない。だけど私たちの不安はぬぐわれる事はなかった。リュートは話題を変えて、バーベキューの礼を言ってくれた。ユーリも楽しかったと言ってくれた。そこでリュートはこそりと私に言った。

「あの、もみじさま。私はエールに酔って、何か口走らなかったでしょうか?どうもばべきゅの後の記憶があいまいでして」

 私は何も言ってなかったわよ、と言ってリュートを安心させた。ユーリとダグが大切だと言った事は、私の心の中だけにとどめてあげよう。武士の情けだ(?)。だけどリュート、ユーリとダグを大切に思っている事は二人にちゃんと伝わっているわよ。差し出がましいからそんな事言わないけどね。


 私たちは黙々と歩いて行く。私はどうしてもセネカとヒミカのお母さん、アスカに謝らなければいけないと思った。だけどアスカは、あからさまに私を避けていた。私が人間だからだろうか、子供たちを危険な所に連れてきた張本人だからだろうか。アスカのかたくなな態度に、子供であるユーリとヒミカもアスカの態度が気になったのか、私とアスカの顔を交互に見て困り顔だ。私は意を決して足を早め、アスカの目の前に立ちふさがった。アスカは私をギロッとにらむ。私はひるまずアスカに言った。

「アスカさん、すみませんでした。子供たちを危険な目にあわせてしまって」

 私は深々と頭を下げた。アスカは怒りがおさまらないのか、ブルブルと震えながら私にすごんだ。

「ふざけないでよ、人間が、私の子供たちを利用しようと連れてきたんでしょう?!セネカに何かあったらお前を絶対に許さない」

 アスカは牙をむきながら私をいかくする。私は言い返す事ができない。私がこの世界でここまでやってこられたのはセネカとヒミカがいてくれたからに他ならない。私はもう一度申し訳ありませんと頭を下げた。すると、私とアスカの間にヒミカが割り込んできた。ヒミカは私を守るように手を広げ、自分の母親をにらんで言った。

「違うよ、お母ちゃん。もみじは私とセネカを利用なんかしていない。もみじは私とセネカを命がけで守ってくれたんだよ。美味しいご飯をいっぱい作ってくれたんだよ。私たちがお母ちゃんに会いたいって言ったから、もみじは私たちをここまで連れてきてくれたんだよ。セネカだって私と同じ気持ちだよ」

 私は目がしらが熱くなった。ヒミカは私の事をそんな風に思ってくれていたのか。ユーリも妹のヒミカの隣に立ち、口をそえてくれた。

「そうですよお母さん。もみじさまは他の人間とは違います、獣人や半獣人だからと言って差別したりしません」

 二人の子供たちに言われてアスカは不満そうに黙り込む。ぎこちなくなったその場の雰囲気に、リュートが声をはさむ。

「もうすぐです。俺の仲間たちがいます」

 そういえば私たちはあてどなく歩いていたが、どうやらリュートには目的地があったようだ。しばらく歩くと、数人の男性が立っていた。その中に知ってる顔があった。

「リュートさま、よぉもみじ」

 ダグだ。ダグの側には五人の男性が立っていた。五人の男性は、皆背が高く見た目か整っていた。きっとリュートと同じ半獣人なのだろう。ダグも人間の中ではハンサムな方だけれど、半獣人に囲まれているとどうにも目立たない。ダグはリュートの側に駆け寄り、声をかける。

「リュートさま、獣人の王との話し合いどうでした?」
「ダメだった。話にならなかったよ」

 ダグの問いに、リュートはさして残念とは思っていないようで笑顔を浮かべながら答えた。ダグは、そうでしょうね。と、相づちを打つ。獣人の王との交渉が失敗に終わるのは予想していたようだ。リュートはダグ以外の五人の仲間を私に紹介してくれた。

「もみじさま、私の仲間を紹介します。私がマダムの館にいた時の者たちです。皆半獣人で、信頼できる者たちです」

 半獣人たちは私に自己紹介をしてくれた。四十代くらい、一番年上に見えるのはアラン。後の四人は皆三十代くらいの年齢に見える。トーマ、シン、デルタ、サリーと、あいさつをしてくれた。リュートは半獣人の仲間と一緒にいると、とてもくつろいでいるようだ。この世界の人々は皆同じだ。人間は、獣人と半獣人を格下と見て奴隷のように扱い、獣人は人間に怨みを持ち、人間と獣人の合いの子である半獣人を認めようとしない。そして半獣人は、人間の側にも獣人の側にも入る事ができないちゅうぶらりんの存在なのだ。リュートが大切に養っているダグも、半獣人と似たような境遇だ。敵国の捕りょとして、このトーランド国に連れてこられ、どこにも居場所が無い。リュートはそんなダグを己の境遇と重ねているのだろう。
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