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獣人の自治区です
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朝目を覚ますと子供たちも起きていた。いつもはお腹すいたと大騒ぎするのに、今日はおとなしい。きっとノヴァがいなくなって寂しいのだろう。私は子供たちに元気になってもらいたくて朝食を作る事にした。今日はティアナに好評だっただし巻きたまごに、サバの塩焼き、ご飯、野菜サラダ、そして中華風たまごスープ。たまごスープはお湯に鶏がらスープの素、しめじ、を入れて、塩コショウをして、といたたまごを流しいれ、片くり粉でとろみをつけたものだ。ティアナはみそ汁は苦手なようだけど、中華風スープは気に入ってくれたようだ。朝ごはんを食べたら子供たちは少し元気になったみたいだ。いつものようにお昼のおにぎりを皆でにぎって、タッパーに詰める。そのタッパーをリュックサックに入れてセネカに背負ってもらう。出発の準備ができたら、私のマンションやかまども消す。いざ獣人の自治区に出発だ。
セネカが私を抱き上げて、ヒミカがティアナを抱き上げて走る。セネカとヒミカはものすごい速さで山々を駆け抜ける。しばらくすると視界に、ティアナのいた街が見えてきた。街の横を通り抜け、さらに先に進む。次第に開けた平地から、山深い森に景色が変わってきた。ここはもう人間の住む世界ではない、獣人たちの世界だ。森の中でセネカは立ち止まり、私を下ろす。ヒミカもそれに従い、ティアナを下ろす。私はセネカに疲れたの?と聞くが、セネカは首を振り厳しい表情をして言う。
「ここはもう獣人たちの国だ」
私は驚いて辺りを見回す。だけど私には他の森との違いがわからなかった。セネカは言葉を続ける。
「辺り一面に警戒の匂いがする。これは警告だ、よそ者は近寄るなと言っている」
セネカは険しい表情だ。後ろを振り向くと、ヒミカとティアナが身を寄せ合っている。何かに怯えているようだ。どうやら獣人のセネカとヒミカ、半獣人のティアナは、辺りの匂いを嗅いで、危険を感じているようだ。だけど人間の私にはそんな匂いちっともしない。すると、セネカが私たちをかばうように前に立ちふさがった。セネカはグルルッと、警戒の唸り声を上げる。突然、私たちの周りを囲むように四人の男性が現れた。四人は背が高く、皆たくましかった。一番身体の大きな男が言った。
「怪しい奴ら、お前たち何者だ!」
ここが獣人の自治区だというならば、この人たちは皆獣人なのだろう。私はセネカの肩に手を置いて、後ろに下がらせて答えた。
「あなたたちのテリトリーに無断で入ってごめんなさい。私たちは人を探しているんです」
一番たくましい男は、私をジロジロ見て言った。
「お前は人間だな、この土地に人間はいない。即刻立ち去れ」
「違う!探しているのは人間じゃない、俺たちの母ちゃんだ!」
私の後ろからセネカが叫ぶ。男はセネカをぶしつけにジロジロみて、そしてハッとした顔をした。男がセネカに問う。
「母親の名前は?」
「アスカ」
たくましい男の顔には、明らかに驚きの表情が浮かんだ。そして再度セネカに話しかける。
「お前、セネカか?」
「!、おっちゃん、何で俺の名前知ってるんだ?」
たくましい男は急に表情を和らげ、ガハハと豪快に笑って言った。
「お前がトールとアスカの息子か、大きくなったな。後ろにいるのはヒミカだな、アスカにそっくりだ」
私はつめていた息をハッと吐き出した。どうやらこの獣人の自治区にセネカとヒミカのお母さんはいるらしい。やっとセネカとヒミカはお母さんに会えるのだ、と安心していたら、たくましい男にひどい事を言われた。
「すぐにアスカに会わせよう。だがセネカ、その人間と、半獣人は連れて行けない」
「もみじとティアナは大切な仲間だ!一緒に連れて行く!」
セネカは自分よりも大きなたくましい男に対して一歩も引かず、私とティアナを守ろうとしてくれた。たくましい男はしぶしぶといった感じで承諾した。たくましい男を先頭に、私たちは森の奥深くに進んだ。やがて開かれた平野に出た。そこには木で作られた粗末な家が点々と建っている。これが獣人たちの家なのだろう。たくましい男の仲間が先に行って知らせていたのか、一人の女性が立っていた。美しい人だった。ブロンドの髪、青い瞳、この人がセネカとヒミカのお母さんだとすぐにわかった。女性は悲鳴のように叫んだ。
「セネカ、ヒミカ!何でこんな所にいるの?!」
「母ちゃん!」
「お母ちゃん!」
セネカとヒミカはお母さんに抱きつく。お母さんは二人をギュッときつく抱きしめた。そこで私はある事に思いいたった。ユーリはヒミカに似ているのだ。男の子と女の子の違いがあって今まで気づかなかったが、ユーリとヒミカは綺麗で優しげな面差しがそっくりだった。セネカとヒミカも兄妹だから勿論よく似ている。だけど、セネカはキリッとした顔立ちだ。ユーリとヒミカが並んだ方が兄妹に見える。そしてセネカたちのお母さんもユーリとよく似ている。大人な分、ヒミカよりもユーリの方が似ているように思えた。だけどユーリのお母さんは人間に殺されたはずだ。セネカとヒミカのお母さんは、ユーリのお母さんと何か関係があるのだろうか。セネカのお母さんは二人の子供たちの顔を見ると、怒ったような顔で言った。
「何でここに来たの!お母ちゃんの言いつけを破ったわね!」
「だって母ちゃんが人間に捕まったって聞いたから、助けようとしたんだ」
セネカはふて腐れたように言う。セネカたちのお母さん、アスカはハァッと大きなため息をついた。そしてセネカとヒミカの肩をギュッとつかんで言った。
「訳を話している暇はないわ!早くここから逃げて!お母ちゃんは用が済んだら必ず迎えに行くから!」
セネカとヒミカは訳がわからず目を白黒させていた。そんな親子の後ろから、大きな声がした。
「セネカか!よく顔を見せろ!」
アスカの後ろには、二メートル近い大男がいた。顔はセネカによく似ていた。このひとがセネカとヒミカのお父さんなのだろう。セネカたちのお父さんは、おかしな事に、アスカとヒミカをまるで無視しているかのようにセネカだけに話しをしていた。
「父ちゃん?あんた俺たちの父ちゃんなのか?」
「ああそうだ、アスカが小さなお前を連れて逃げて以来だ。もうすぐ戦いが始まる。セネカ、お前は俺の息子として戦い出るのだ」
アスカはセネカとヒミカを抱きしめながら、夫を睨みながら叫ぶ。
「トール!やめて!セネカはまだ子供なのよ。馬鹿げた戦いなんかに行かせないわ!」
セネカたちのお父さん、トールはハァッと深いため息をついて言った。
「これだから女は、何も分かっちゃいない。アスカ、ヒミカを連れてどこかに隠れていろ。戦いが終わればお前たちは王妃と姫になるのだからな。そして憎い人間たちを奴隷にしてやるのだ!」
「人間を奴隷にするですって?!」
セネカたちのお父さん、トールの言葉に私は思わず大声を上げていた。そこでトールは初めて私とティアナに気づいたようだ。ティアナはトールに怯えているのか、私の後ろに隠れている。私はティアナを背中にかばいながらトールをにらんだ。トールはにらんでいる私を、鼻で笑いながら言った。
「なんだ人間と半獣人がいるじゃないか。セネカ、奴隷にするために連れてきたのか?」
「もみじとティアナは奴隷なんかじゃない!大切な仲間だ!」
セネカは大声でトールに怒鳴る。トールはセネカの剣幕に驚いた顔をしたが、破顔して大笑いした。
「ガハハ!何だセネカ、この娘たちが気に入ったのか?ならばお前付きの奴隷にすればいい」
「あんたは馬鹿だ!人間を倒して人間がやっていた事を真似ようとしているだけだ!」
セネカは私とティアナを守ろうとして必死に言いつのる。だけどトールはそんなセネカをあざけるように笑うのだ。私は目の前で起きている事の事態が飲み込めなかった。だけど落ち着いて考えると、どうやらアスカはセネカとヒミカを獣人と人間の争いに巻き込まないように、二人を隠し守っていたのだ。トールは自身の息子、セネカと共に人間と戦って、この国の王になろうとしているようだ。そして人間側が負ければ、今まで人間が獣人にしてきたように、今度は獣人が人間を奴隷にすると言っているのだ。事態は動き出してしまったのだ、新たな王を決めるために。
セネカが私を抱き上げて、ヒミカがティアナを抱き上げて走る。セネカとヒミカはものすごい速さで山々を駆け抜ける。しばらくすると視界に、ティアナのいた街が見えてきた。街の横を通り抜け、さらに先に進む。次第に開けた平地から、山深い森に景色が変わってきた。ここはもう人間の住む世界ではない、獣人たちの世界だ。森の中でセネカは立ち止まり、私を下ろす。ヒミカもそれに従い、ティアナを下ろす。私はセネカに疲れたの?と聞くが、セネカは首を振り厳しい表情をして言う。
「ここはもう獣人たちの国だ」
私は驚いて辺りを見回す。だけど私には他の森との違いがわからなかった。セネカは言葉を続ける。
「辺り一面に警戒の匂いがする。これは警告だ、よそ者は近寄るなと言っている」
セネカは険しい表情だ。後ろを振り向くと、ヒミカとティアナが身を寄せ合っている。何かに怯えているようだ。どうやら獣人のセネカとヒミカ、半獣人のティアナは、辺りの匂いを嗅いで、危険を感じているようだ。だけど人間の私にはそんな匂いちっともしない。すると、セネカが私たちをかばうように前に立ちふさがった。セネカはグルルッと、警戒の唸り声を上げる。突然、私たちの周りを囲むように四人の男性が現れた。四人は背が高く、皆たくましかった。一番身体の大きな男が言った。
「怪しい奴ら、お前たち何者だ!」
ここが獣人の自治区だというならば、この人たちは皆獣人なのだろう。私はセネカの肩に手を置いて、後ろに下がらせて答えた。
「あなたたちのテリトリーに無断で入ってごめんなさい。私たちは人を探しているんです」
一番たくましい男は、私をジロジロ見て言った。
「お前は人間だな、この土地に人間はいない。即刻立ち去れ」
「違う!探しているのは人間じゃない、俺たちの母ちゃんだ!」
私の後ろからセネカが叫ぶ。男はセネカをぶしつけにジロジロみて、そしてハッとした顔をした。男がセネカに問う。
「母親の名前は?」
「アスカ」
たくましい男の顔には、明らかに驚きの表情が浮かんだ。そして再度セネカに話しかける。
「お前、セネカか?」
「!、おっちゃん、何で俺の名前知ってるんだ?」
たくましい男は急に表情を和らげ、ガハハと豪快に笑って言った。
「お前がトールとアスカの息子か、大きくなったな。後ろにいるのはヒミカだな、アスカにそっくりだ」
私はつめていた息をハッと吐き出した。どうやらこの獣人の自治区にセネカとヒミカのお母さんはいるらしい。やっとセネカとヒミカはお母さんに会えるのだ、と安心していたら、たくましい男にひどい事を言われた。
「すぐにアスカに会わせよう。だがセネカ、その人間と、半獣人は連れて行けない」
「もみじとティアナは大切な仲間だ!一緒に連れて行く!」
セネカは自分よりも大きなたくましい男に対して一歩も引かず、私とティアナを守ろうとしてくれた。たくましい男はしぶしぶといった感じで承諾した。たくましい男を先頭に、私たちは森の奥深くに進んだ。やがて開かれた平野に出た。そこには木で作られた粗末な家が点々と建っている。これが獣人たちの家なのだろう。たくましい男の仲間が先に行って知らせていたのか、一人の女性が立っていた。美しい人だった。ブロンドの髪、青い瞳、この人がセネカとヒミカのお母さんだとすぐにわかった。女性は悲鳴のように叫んだ。
「セネカ、ヒミカ!何でこんな所にいるの?!」
「母ちゃん!」
「お母ちゃん!」
セネカとヒミカはお母さんに抱きつく。お母さんは二人をギュッときつく抱きしめた。そこで私はある事に思いいたった。ユーリはヒミカに似ているのだ。男の子と女の子の違いがあって今まで気づかなかったが、ユーリとヒミカは綺麗で優しげな面差しがそっくりだった。セネカとヒミカも兄妹だから勿論よく似ている。だけど、セネカはキリッとした顔立ちだ。ユーリとヒミカが並んだ方が兄妹に見える。そしてセネカたちのお母さんもユーリとよく似ている。大人な分、ヒミカよりもユーリの方が似ているように思えた。だけどユーリのお母さんは人間に殺されたはずだ。セネカとヒミカのお母さんは、ユーリのお母さんと何か関係があるのだろうか。セネカのお母さんは二人の子供たちの顔を見ると、怒ったような顔で言った。
「何でここに来たの!お母ちゃんの言いつけを破ったわね!」
「だって母ちゃんが人間に捕まったって聞いたから、助けようとしたんだ」
セネカはふて腐れたように言う。セネカたちのお母さん、アスカはハァッと大きなため息をついた。そしてセネカとヒミカの肩をギュッとつかんで言った。
「訳を話している暇はないわ!早くここから逃げて!お母ちゃんは用が済んだら必ず迎えに行くから!」
セネカとヒミカは訳がわからず目を白黒させていた。そんな親子の後ろから、大きな声がした。
「セネカか!よく顔を見せろ!」
アスカの後ろには、二メートル近い大男がいた。顔はセネカによく似ていた。このひとがセネカとヒミカのお父さんなのだろう。セネカたちのお父さんは、おかしな事に、アスカとヒミカをまるで無視しているかのようにセネカだけに話しをしていた。
「父ちゃん?あんた俺たちの父ちゃんなのか?」
「ああそうだ、アスカが小さなお前を連れて逃げて以来だ。もうすぐ戦いが始まる。セネカ、お前は俺の息子として戦い出るのだ」
アスカはセネカとヒミカを抱きしめながら、夫を睨みながら叫ぶ。
「トール!やめて!セネカはまだ子供なのよ。馬鹿げた戦いなんかに行かせないわ!」
セネカたちのお父さん、トールはハァッと深いため息をついて言った。
「これだから女は、何も分かっちゃいない。アスカ、ヒミカを連れてどこかに隠れていろ。戦いが終わればお前たちは王妃と姫になるのだからな。そして憎い人間たちを奴隷にしてやるのだ!」
「人間を奴隷にするですって?!」
セネカたちのお父さん、トールの言葉に私は思わず大声を上げていた。そこでトールは初めて私とティアナに気づいたようだ。ティアナはトールに怯えているのか、私の後ろに隠れている。私はティアナを背中にかばいながらトールをにらんだ。トールはにらんでいる私を、鼻で笑いながら言った。
「なんだ人間と半獣人がいるじゃないか。セネカ、奴隷にするために連れてきたのか?」
「もみじとティアナは奴隷なんかじゃない!大切な仲間だ!」
セネカは大声でトールに怒鳴る。トールはセネカの剣幕に驚いた顔をしたが、破顔して大笑いした。
「ガハハ!何だセネカ、この娘たちが気に入ったのか?ならばお前付きの奴隷にすればいい」
「あんたは馬鹿だ!人間を倒して人間がやっていた事を真似ようとしているだけだ!」
セネカは私とティアナを守ろうとして必死に言いつのる。だけどトールはそんなセネカをあざけるように笑うのだ。私は目の前で起きている事の事態が飲み込めなかった。だけど落ち着いて考えると、どうやらアスカはセネカとヒミカを獣人と人間の争いに巻き込まないように、二人を隠し守っていたのだ。トールは自身の息子、セネカと共に人間と戦って、この国の王になろうとしているようだ。そして人間側が負ければ、今まで人間が獣人にしてきたように、今度は獣人が人間を奴隷にすると言っているのだ。事態は動き出してしまったのだ、新たな王を決めるために。
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