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ドリスの思い

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 ドリスは姿見の中の自分を惚れ惚れしながら見つめていた。

「ドリス王女さま。とてもお似合いでございます」

 メイド頭がドリスの胸元のフリルをなおしながら言った。

 ドリスはこれから出席する社交界に出るためのドレスを着ていたのだ。今回のドレスは銀の糸をふんだんに使ったドレスで、華美なドレスを好まないドリスの気にいるものだった。

 当然の事ながら、このドレスにはたくさんの金がかかっている。ドリスはウィード国の王女として、贅沢はつつしむべきと考えている。だが時には見栄をはらなければいけない時があるのだ。

 それが社交界だ。出席する貴族たちは、王女のドリスがどんなドレスを着るのか興味津々なのだ。

 ウィード国の女王であるドリスは、社交界のファッションリーダーでもあるのだ。

 ドリスは頭の片隅で、友人のプリシラの事を考えた。プリシラは今夜はどんなドレスでやって来るのだろうか。

 プリシラとは、ドリスが最近知り合った娘で、友人でもあり、最近では大伯父の養女になり、親戚にもなった。

 プリシラは、ドリスがこれまで会ったどの人物よりも心が綺麗な娘だった。常に人の幸せを考え、自分を殺そうとした者にも寛大だ。

 容姿も美しく非の打ち所がない娘なのだが、一つ困った事がある。それはとてつもない倹約家なのだ。

 プリシラが養女になったパルヴィス公爵家は、国王の伯父だけあり、多くの財産を有していた。だがパルヴィス公爵は病気がちで、医者や高額な薬代で、財産を使い果たしてしまったと聞く。

 ドリスの父であるウィード国王は、若い頃よりパルヴィス公爵に世話になっていて、恩返しのために金品を受け取ってほしいと懇願した。だがパルヴィス公爵はとてもガンコで、決して受け取る事はなかった。

 ガンコなところは、パルヴィス公爵もプリシラもよく似ている。

 心優しいプリシラは、パルヴィス公爵家の内情を知り、豪華なドレスや宝石を買わないようだ。

 社交界デビューの時は、さすがに素晴らしい装いで出席したが、その後の装いが酷かった。

 プリシラは社交界に真っ赤なドレスでやって来た。そのドレスはプリシラにとてもよく似合ってるいる。だがそのドレスは、どう見ても普段着のドレスなのだ。プリシラを見た周りの貴族たちは、口々に悪口を言い合った。

 まぁ、公爵令嬢というお方が、何とみそぼらしいドレスなんでしょう。

 プリシラさまは元平民なんですって。だから貴族の暮らしがよくわかっていらっしゃらないのよ。

 この陰口に、ドリスは気分を害した。プリシラはドリスの大切な友人だ。ドリスはプリシラを呼び寄せて耳打ちした。

「プリシラ、何だそのドレスは?大伯母さまがそのドレスで行けと言ったのか?」
「いいえ、お母さまはドレスをオーダーメードしてほしいと言っていましたが、私が断りました」
「何故?!プリシラ、お前は公爵令嬢なのだぞ?プリシラがおとしめられたら、大伯父さまと大伯母さまがおとしめられるのと同じなのだぞ?」
「お父さまとお母さまが立派な方である事を私は充分知っています」

 プリシラはそう言い切って、からかい混じりの会話をする貴族たちと笑顔で話しをしていた。

 

 
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