上 下
165 / 175

乗り込む

しおりを挟む
 プリシラははやる気持ちを押さえられず、すぐさまドウマ国に入ろうとするのをリベリオが止めた。

「プリシラ、待つんだ。ドウマ国には魔力感知の魔法がかけられている。魔力のある者が入ればすぐに侵入者だとばれる」
 
 プリシラはうなずいてから父親の側で不安そうにしているエレナに言った。

「エレナ、この国の人たちに気づかれずに中に入りたいの。お願い」

 エレナは不安そうにうなずいてから歌を歌った。

 ドアを開けて、三回ノックの音、あなたの笑顔に会いたいの。

 後ろにいたリベリオが声をあげた。

「魔力感知の魔法が解除された?!」
「エレナの魔法は特別なの。歌った歌が本当になるの」

 驚きを隠せないリベリオにプリシラが説明する。プリシラたちはドウマ国内に入った。

 簡素な木造の家が目立った。プリシラたちは静かに行動したが、大所帯のためすぐドウマ国の国民に見つかってしまった。

 ドウマ国の国民たちは皆優秀な魔法使いだ。すぐさまプリシラたちに向けて攻撃魔法を放とうとした。ガイオとトビーに守られているエレナはすかさず歌い出した。

 武器を捨てて、悲しみの涙はもう見たくないの。

 ドウマ国の国民たちが放とうとしていた攻撃魔法が消失してしまった。エレナの歌がドウマ国の国民たちの魔力を奪ってしまったのだ。

「魔法が使えないんじゃ俺たちの敵じゃないぜ」

 ガイオはエレナの側から離れ、目にも止まらぬ速さで国民たちを殴り倒していった。エレナの魔法が間に合わない国民にはトビーが風魔法で吹っ飛ばしていた。

 チコとプッチは土植物魔法でドウマ国の国民たちをしばりあげ、サラとティアは火攻撃魔法で国民たちを黒コゲにならない程度に燃やしていた。

 小さくなったタップを抱き上げたプリシラは、姉の行方を探して走り回った。

「プリシラ!奥の方に石造りの建物がある!お姉さんはあそこにいるかもしれない!」
  
 空を飛んで上空から様子を見ていたリベリオが叫んだ。プリシラも浮遊魔法を使って空に飛び上がり、リベリオの指差す方向を見た。確かに周りの家とは規模が違う。プリシラはタップに大きくなってもらおうとしたが、リベリオが止めた。

「プリシラ、あの建物に乗り込むなら、タップがすぐに攻撃体制を取れた方がいい。俺の魔法で行こう」

 リベリオが呪文を唱えると、巨大な水のドラゴンが姿を現した。プリシラが驚いてドラゴンを見上げていると、リベリオはプリシラの手を取ってドラゴンの背中に飛び乗った。

 水のドラゴンは石造りの建物に向かってものすごい速さで飛んで行く。リベリオが舌打ちしながら言った。

「あの建物には、この国をおおっている以上に強い魔法制御の魔法がかかっている。もしあの建物の中にお姉さんがいたら、おそらくほとんど魔法は使えないだろう」

 プリシラはヒッと声にならない悲鳴をあげた。



 

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

最初から私を殺す気だったんですね...

真理亜
恋愛
ルージュ・バレンタイン公爵令嬢は婚約者である王太子ロベルト・シュタイナーから婚約破棄を告げられる。その傍らにはここ最近、ロベルトのお気に入りの男爵令嬢マリアンヌの姿があった。理由は嫉妬に駆られてマリアンヌを虐めたからだと言う。ルージュに身に覚えはなく冤罪なのだが、ロベルトはそんなことはどうでも良く、それは単なるきっかけに過ぎず、ロベルトに最初から婚約破棄した後に殺す気だったと言われた。あまりにも勝手過ぎるロベルトの言い分に抗議しようとするルージュだったが、それより先にルージュの援護に回ったのは..

スキル「緊急回避」で無敵スローライフ

あるまん
ファンタジー
 「わりかしスローライフ、わりかしハーレム、わりかしどうなるかわからない」  異世界転生した主人公・アヤカート。スローライフを目指そうと選んだ危険を回避する能力「緊急回避」……実は攻撃も移動も出来る万能スキルだった?  黒髪ショートの活発娘、合法のじゃロリ白狼人族、公爵令嬢で魔法使いなお嬢様、皆でラブラブエッチに大冒険♪  ※大体週2回更新です。  第一部完結いたしました♪皆様応援ありがとうございます♪  第二部開始いたしました!!

えぇ、死ねばいいのにと思ってやりました。それが何か?

真理亜
恋愛
「アリン! 貴様! サーシャを階段から突き落としたと言うのは本当か!?」王太子である婚約者のカインからそう詰問された公爵令嬢のアリンは「えぇ、死ねばいいのにと思ってやりました。それが何か?」とサラッと答えた。その答えにカインは呆然とするが、やがてカインの取り巻き連中の婚約者達も揃ってサーシャを糾弾し始めたことにより、サーシャの本性が暴かれるのだった。

究極妹属性のぼっち少女が神さまから授かった胸キュンアニマルズが最強だった

盛平
ファンタジー
 パティは教会に捨てられた少女。パティは村では珍しい黒い髪と黒い瞳だったため、村人からは忌子といわれ、孤独な生活をおくっていた。この世界では十歳になると、神さまから一つだけ魔法を授かる事ができる。パティは神さまに願った。ずっと側にいてくれる友達をくださいと。  神さまが与えてくれた友達は、犬、猫、インコ、カメだった。友達は魔法でパティのお願いを何でも叶えてくれた。  パティは友達と一緒に冒険の旅に出た。パティの生活環境は激変した。パティは究極の妹属性だったのだ。冒険者協会の美人受付嬢と美女の女剣士が、どっちがパティの姉にふさわしいかケンカするし、永遠の美少女にも気に入られてしまう。  ぼっち少女の愛されまくりな旅が始まる。    

殿下、人違いです。殿下の婚約者はその人ではありません

真理亜
ファンタジー
第二王子のマリウスが学園の卒業パーティーで婚約破棄を突き付けた相手は人違いだった。では一体自分の婚約者は誰なのか? 困惑するマリウスに「殿下の婚約者は私です」と名乗り出たのは、目も眩まんばかりの美少女ミランダだった。いっぺんに一目惚れしたマリウスは、慌てて婚約破棄を無かったことにしようとするが...

クラス転移で追放された俺はスキル『ぎじんか』を使って楽園を造りあげる!!え?魔王討伐?そんなの知るか!!

蒼色ノ狐
ファンタジー
※この作品は「カクヨム」にて投稿されているモノと同じです。 突如クラス全員が異世界『ルーンベル』に転移される。 そして召喚した『ルーンベル』の王国の一つ、『グリムガル』の王は皆に魔王討伐を命じる。 代わりに一人に一つ『スキル』をランダムに与えると言う。 拒否権などある訳もなく皆が『スキル』を与えられる中ぼっちの男子高校生『葉山 与人』は謎の『スキル』である『ぎじんか』を与えられる。 使い道の分からない『スキル』をもった与人をクラスメイトは『スキル』を使い何処かへと追放する。 その先で『ぎじんか』の使い方を覚えた与人は決心をする。 「どうせ追放されたんならこの『スキル』を使って思う存分楽しく生きてやる!!」 果たして彼は本当に楽園を造り上げる事は出来るのか? 迫り来る困難に男子高校生がドラゴンなどを始めとしたモンスターや聖剣などの非生物な擬人化ヒロインと共に乗り越えていく話です。 こんな感じのタイトルですが話はシリアス方面に寄るかも知れません。 出てくる擬人化ヒロインは十を軽く越える予定です。 皆さん是非見にいらしてください。 21話までは5,000文字ほどですが、それ以降は2,500文字ほどです。

100倍スキルでスローライフは無理でした

ふれっく
ファンタジー
ある日、SNSで話題に上がっていた [ Liberty hope online ] 通称リバホプと呼ばれているMMORPGのオンラインゲームが正式にサービスを開始した。 そのプレイヤーの一人である月島裕斗は、誰も倒す事が出来なかった期間限定のボスモンスターに挑み続け、長期にわたる激戦の末に勝利する。しかしその直後、過度な疲労によって深い眠りへと落ちてしまった。 次に目を覚ますと、そこは見知らぬ世界。さらにはゲームで使っていたアバターの身体になっていたり、桁違いなステータスやらおかしなスキルまで……。 これは、 美少女として異世界に転生した彼(?)のほのぼのとした日常……ではなく、規格外な力によって様々な出来事に巻き込まれる物語である。 ※表紙イラストはテナ様より。使用、転載の許可は事前に得ています。

激レア種族に転生してみた(笑)

小桃
ファンタジー
平凡な女子高生【下御陵 美里】が異世界へ転生する事になった。  せっかく転生するなら勇者?聖女?大賢者?いやいや職種よりも激レア種族を選んでみたいよね!楽しい異世界転生ライフを楽しむぞ〜 【異世界転生 幼女編】  異世界転生を果たしたアリス.フェリシア 。 「えっと…転生先は森!?」  女神のうっかりミスで、家とか家族的な者に囲まれて裕福な生活を送るなんていうテンプレート的な物なんか全く無かった……  生まれたばかり身一つで森に放置……アリスはそんな過酷な状況で転生生活を開始する事になったのだった……アリスは無事に生き残れるのか?

処理中です...