最恐魔女の姉に溺愛されている追放令嬢はどん底から成り上がる

姉妹2

　プリシラは仕方なく話題を変える事にした。

「そういえばお姉ちゃん。リベリオに会ったの？リベリオがお姉さんによろしくって言ってたけど」
「リベリオ？プリシラ、あの青二才を呼び捨てにしているの？」
「うん。私リベリオと友達になったの」
「やめなさいよ。あの男はとんだ女ったらしなのよ？」
「うん、知ってる。でもこの間、これまで付き合った女の人たち全員と、話し合ってしっかり別れたんだって」
「・・・。プリシラは、青二才の事が好きなの？」
「いやだ、お姉ちゃん。リベリオは大切なお友達よ？リベリオの好みの女の人は、もっと派手な美人よ？私みたいな地味な女じゃないわ。だけど、リベリオに愛された人は、きっと幸せなんでしょうね」

　プリシラはひとり言のようにつぶやいてから姉を見ると、エスメラルダの顔が真っ青だった。

「どうしたの？お姉ちゃん。顔が真っ青よ？」
「い、いいえ。なんでもないわ」

　それきりエスメラルダは考え込んだ表情で押し黙ってしまった。

　プリシラとタップは、エスメラルダに連れられて、ホテルのスゥイートルームに案内された。泊まるのはプリシラとタップだけなのに、何に使うのか、部屋は何個もあった。ベッドもとても大きくて、プリシラが四人いても余裕の広さだ。

　エスメラルダはこのとなりに部屋を取っている。おやすみのあいさつをして出て行こうとするエスメラルダを、プリシラは慌て止めた。

「ねぇ、お姉ちゃん。今夜は一緒に寝て？」

　エスメラルダは驚いた顔をしてから、苦笑して答えた。

「なあに？プリシラ。パルヴィス公爵さまご夫妻の娘になってから、甘えん坊になったわね？」
「いいじゃない。小さい頃は一緒に寝てくれたでしょ？」
「それは、」

　エスメラルダはちゅうちょするそぶりをしたが、プリシラは強引に姉の手を引っ張った。エスメラルダはため息をつきながら、しょうがないわねと言った。

　プリシラとエスメラルダは代わり番こに風呂に入ると、ベッドに潜り込んだ。タップはいつものようにプリシラの枕元で丸くなっている。

「もう、公爵夫人はプリシラの事をよほど甘やかしているのね？今度お手紙で、ほどほどにしてくださいとご忠告しなければ」
「そんな事言ってぇ。お姉ちゃんだって、私の事べったべたに甘やかしているじゃない」

　プリシラの言葉に、エスメラルダは驚いたような表情になってから、顔を真っ赤にして怒った。

「ちっ、違うわ！私は常にプリシラに厳しいの！プリシラが強いエレメント使いになるように、プリシラが立派な人間になるように、私はいっつも厳しくしているんだから！」
「はいはい、お姉ちゃんがそう言うならそれでいいわ。でも、私の中でのお姉ちゃんは、いつも優しいの」

　プリシラは姉の照れて怒る顔が大好きだ。いつもはクールな美人なのに、少し子供っぽくなるのが可愛いのだ。

　エスメラルダはため息をつきながら、プリシラの首まで肌触りのよい毛布をかけてくれながら言った。

「はい、おしゃべりはもうお終い。早く寝なさい？」
「お姉ちゃん、まだ十時よ？眠くないわ」
「目をつむっていたら眠くなるわよ」

　エスメラルダは右手でほおずえをつきながら、プリシラの胸の辺りをポンポンと叩いてくれた。プリシラは甘えた声で姉に言った。

「お姉ちゃん、いい夢を見るおまじないして？」
「はいはい、私の可愛いお姫様」

　エスメラルダはプリシラのおでこに優しいキスをくれた。プリシラは眠りの世界に落ちていった。